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水際対策の大幅緩和で外国人観光客拡大へ

2022/09/13

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政府は入国者数の上限撤廃などの大幅な緩和措置を検討

政府は9月7日に入国者数の上限を1日2万人から5万人に引き上げ、添乗員なしのパッケージツアーの受け入れを始めた。この緩和措置によるインバウンド需要の増加分は、年率換算で1,140億円と試算される(コラム「上限5万人への水際対策緩和によるインバウンド需要増加分は年率1,140億円」、2022年8月23日)。

11日に木原官房副長官は、入国者数の上限撤廃、個人旅行解禁、ビザ免除などの大幅な水際緩和措置を政府が検討していることを明らかにした。岸田首相は早ければ今週中にも、大幅な水際緩和措置について判断すると報じられている。10月にも入国者数の上限撤廃などが実施されるとの観測も出ている。緩和の方向は正しいとしても、国内での感染者数が依然として高水準にあることを踏まえると、もう少し慎重な検討が必要ではないか。

ところで、今年1月から9月までの訪日外国人観光客によるインバウンド需要は、総額1,500億円程度と推測される。これは、新型コロナウイルス問題が生じる前の2019年のインバウンド需要総額の4.8兆円と比べるとわずか3%程度に過ぎない。しかし政府が、入国者数の上限撤廃、個人旅行解禁、ビザ免除などの大幅な緩和措置を講じれば、訪日外国人観光客は急増することになるだろう。

3年でコロナ前に戻るなら向こう1年のインバウンド需要は1.6兆円

ただし、訪日外国人観光客数及びインバウンド需要が、2019年の水準まで一気に戻ることは考えられない。その理由として第1に、強いゼロコロナ対策の下で中国人の訪日観光客が戻るには一定の時間を要する、第2に、現在、日本の新規感染者数は他国よりも大きいことから、感染リスクを警戒して訪日を控える外国人は依然多い、第3に、コロナ禍で日本人が海外旅行から国内旅行にシフトしたことで、外国人観光客用の国内宿泊のキャパシティが減っている、第4に、物価高騰や金融引き締めの影響で今後海外景気が減速すれば、多くの国で海外旅行が控えられる、などが考えられる。

この先の訪日外国人観光客数及びインバウンド需要の回復ペースは、政府による規制緩和のスピードに加えて、こうした多くの要因にも左右されるのである。そのため、予測はかなり難しいが、仮に3年間でコロナ前の水準に戻るとすれば、向こう1年間のインバウンド需要は1.6兆円程度、名目GDPの0.3%程度となる。

円安是正効果は限定的

訪日外国人観光客によるインバウンド需要は、日本のGDPを押し上げるとともに、経常収支を改善させ、円買い需要を生むことになる。そのため、水際対策の緩和が円安修正につながるとの期待も出ている。しかし実際には、その効果はかなり限定的だろう。そもそも、今春以降の対ドルでの円安進行は、日米(長期)金利差の拡大によるところが大きく、インバウンド需要の減少など経常収支の悪化の影響は小さい。

国際決済銀行(BIS)が3年毎に調査している為替取引額の調査によると、2019年4月の1日当たりの取引額は6.6兆ドルだった。このうち円の取引額から推定した日本の為替市場での取引額は5,544億ドルである。これを年間に換算すると、1年あたりの為替取引額は202兆ドルとなる。

他方、2019年から22年にかけて日本の経常黒字の縮小幅は600億ドル程度と推定される。また、インバウンド需要の2019年から22年にかけての減少額は4.7兆円、足元のドル円レートで換算すると330億ドル程度と推定される。こうしたインバウンド需要の減少幅、あるいはエネルギー価格の上昇の影響も受けた経常黒字の縮小幅は、1年あたりの為替取引額と比べると微々たるものである。

このため、水際対策が大幅に緩和されれば、足元での円安が訪日外国人観光客数及びインバウンド需要の回復を後押しすることは確かであるとしても、それが円安を修正する効果はほとんど期待できないだろう。

図表 水際対策緩和による訪日外客数増加の経済効果

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