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経済・金融市場の安定の観点から、より柔軟な金融政策姿勢が望まれる(日銀金融政策決定会合)

2022/09/22

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日銀の政策変更見送りで円は一時145円台に

22日まで開かれた金融政策決定会合で日本銀行は、大方の予想通りに、金融政策の維持を決めた。円安が進行する中、金融政策の修正・変更を通じて円安に歯止めをかけることを望む声が、国内では高まっている。それを受けて、イールドカーブ・コントロールの枠組みを修正して長期金利の上昇を容認する政策修正を予想する向きも、海外を中心に市場の一部にはあった。そのため、政策変更見送りの発表後には為替市場で失望感から円安傾向が一段と強まり、円は一時24年ぶりとなる1ドル145円台に突入した。

日本銀行は、為替を意識した金融政策運営は望ましくない、としたうえで、8月に前年比+2.8%まで達した消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率は、コストプッシュ型で持続性がなく、日本銀行が掲げる2%の物価目標の達成にはまだ時間がかかるとして、異例の金融緩和を維持する姿勢を見せている。少なくとも、来年4月の黒田総裁の退任までは、日本銀行が金融政策の正常化はおろか、柔軟化措置さえも実施しない可能性は比較的高いだろう。

急速な円安進行のもとでも日本銀行が頑として金融政策姿勢を変えないことを受けて、政府は真剣に為替介入の実施を検討しているのではないか。為替介入実施に向けたハードルはなお相応に高いとみられるが、1ドル145円に続き、1990年以来32年ぶりの円安水準となる147円台、150円などは、当局にとって強く警戒される節目となる。日本銀行が頑として政策調整・変更を実施しない場合には、そうした節目で政府が為替介入を実施する可能性が出てきた。

ただし仮に実施しても、単独での円買い介入は効果が限られるだろう(コラム「円安阻止の単独為替介入の効果は限定的」、2022年9月14日)。

コロナオペは段階的に終了へ

事前には、日本銀行が今回の決定会合で9月末に期限を迎えるコロナオペ(新型コロナ対応金融支援特別オペ)の終了を決める、との見方もあった。実際には、制度融資分を3か月延長、プロパー融資分を半年延長することが決まった。

しかし声明文では、中小企業などの資金繰りも改善方向にあることから、コロナオペは段階的に終了する方針を会合で決定した、としている。このため、再度の延長はされない見通しとなり、来年3月でコロナオペは完全に終了となるだろう。

今回の会合で9月末でのコロナオペの終了が決定される場合に、コロナ問題と紐づいて表現されていると解釈できる政策金利のフォワードガイダンスが、物価目標と紐づけられる以前の表現などに修正され、それが先行きの金融政策に何らかの憶測を生む可能性も考えられた(コラム「コロナ危機対応を終える日銀の次の一手」、2022年9月15日)。

しかし実際には、9月末でのコロナオペ終了とならなかったため、フォワードガイダンスの表現も修正されなかったのである。

日本銀行は硬直的な政策姿勢を見直すべき

為替市場の動きに合わせて金融政策を運営することは正しくない。法的に為替政策を担っているのが日本銀行ではなく政府であることもその理由であるが、それに加えて、変動が激しい為替に金融政策が振り回されるのは望ましくない。

しかし、足元で進む円安は、国債市場の混乱などと同様に、硬直的な金融政策運営が生み出している金融市場の不安定化の一端である。日本銀行が2%の物価目標政策の柔軟化、あるいはイールドカーブ・コントロールの柔軟化に踏み切れば、それは金融市場の安定に貢献し、経済の安定に資するものとなる。

ちなみに、2%が物価目標の水準として適切であることの根拠はない。実際には、日本の潜在力などと整合的な物価目標の水準は+0.5%未満だろう。

さらに政策の柔軟化と合わせて、日本銀行が2%の物価目標の水準に拘らずに、中長期の物価安定に対する強いコミットメントを改めて示せば、それも経済に安定に貢献する。

3月以降の円安進行による消費者物価押し上げ効果は+0.4%程度に達すると推定される。物価上昇の主因はエネルギー、食料品価格高騰であるが、円安の影響も決して小さくはない。日本銀行の硬直的な金融政策が助長する円安は、個人の物価高懸念を高めている。

賃金上昇期待が限られる中、物価高が長期化してしまうとの懸念を個人が強めると、消費が大きく抑制されるリスクが高まる。現在の日本の物価上昇率は他国と比べて低いとは言え、低い賃金上昇率との比較では、既に個人に大きな痛みを与える水準である。

日本銀行が政策の柔軟化を行うとともに、中長期の物価安定の確保により積極的な姿勢を見せれば、「硬直的な金融政策のもとで悪い円安、悪い物価高がどこまでも続いてしまう」といった個人の懸念を緩和することができ、日本経済の安定に貢献するのではないか。

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