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政府が円買いの為替介入を実施:効果は限られ時間稼ぎの政策に

2022/09/22

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22日の午後5時頃、政府は円買いの為替介入を実施した。介入は2011年11月以来、円買いの為替介入は1998年6月以来、24年ぶりのこととなる。

同日に日本銀行は金融政策決定会合で金融政策の維持を決め、これをきっかけに為替は1ドル145円台と23年ぶりの水準に乗せた(コラム「経済・金融市場の安定の観点から、より柔軟な金融政策姿勢が望まれる(日銀金融政策決定会合)」、2022年9月22日)。さらに、記者会見で黒田総裁が、想定以上の強い円安けん制の姿勢を見せない一方、金利引き上げなどの政策修正の可能性を改めて強く否定したことから、146円近くまでさらに円安が進んでいた。その後、142円台まで一気に円安の修正が生じたが、その時点では為替介入の影響かどうかは明らかでなかった。しかし、その後、神田財務官が為替介入を実施したと発言した。本コラム執筆時点では、円は140円台まで円安修正が進んでいる。為替介入は、現時点では相応の効果を見せている。

22日の決定会合では、日本銀行は金融政策の変更を見送った。日本銀行が頑として政策を修正しない中では、政府としては為替介入しか円安を食い止める手段は残されていなかった。その点を日本銀行にアピールするかのようなタイミングでの為替介入となったのである。

為替介入の実施には、通常は他の主要国、特に米国の承認が必要とされる。今回の介入は、日本側からの要請を受けて米国がしぶしぶ介入を黙認したものか、あるいは米国との外交上の関係悪化のリスクを覚悟のうえで、介入を決めたのかは明らかではない。

一度為替介入に踏み切った限りは、当面、為替介入は断続的に行われるだろう。しかし、協調ではない単独介入、そして外貨準備の残高に制約される円買い介入の効果は限られるだろう(コラム「円安阻止の単独為替介入の効果は限定的」、2022年9月14日)。

国際決済銀行(BIS)が3年に一度行っている調査によると、2019年4月時点で世界の外国為替市場における1日の取引額は6.6兆ドルであった。そのうち、日本の外国為替市場の1営業日あたりの平均取引高は3,755億ドルであった。現時点のドル円レートで換算すると54.0兆円である。介入規模が1兆円であれば、それは一日の取引額の2%未満である。さらに、ドル売り円買い介入の上限となる外貨準備の残高195.2兆円は、外国為替市場の1日の取引額の3.4日分に過ぎない。

円安の流れが変わるためには、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ姿勢に変化が生じる必要がある。大幅利上げを続ける中、景気減速の兆候から早ければ年内にもFRBは利上げペースを明確に縮小させる可能性がある。そうなれば、米国の長期金利の上昇は止まり、円安傾向は一巡することが予想される。政府の為替介入は、いわばそこまでの時間稼ぎとなるだろう。

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