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クレディ・スイスが市場で厳しい評価に晒される

2022/10/04

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過去最高水準に達したCDSスプレッドと再建計画

スイスの金融大手、クレディ・スイスが、金融市場で厳しい評価に晒されている。同社の株価は9月月間で21%下落した。またクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で、同社の5年間の保証コストを反映するCDSスプレッドは年初の約55bpから大きく上昇しており、10月3日には293bpと過去最高水準にまで達した。これは、にわかに同社の経営が行き詰まるとの市場の評価を示している水準ではないものの、同社の信用力に関する市場の認識が厳しくなってきていることを裏付けている。

同社では昨年前半に、グリーンシル・キャピタルとアルケゴス・キャピタル・マネジメントに絡む不祥事が立て続けに表面化した。アルケゴス・キャピタル・マネジメントの破綻では51億ドルの損失を被った。それ以来、業績不振の観測から株価は約3分の2まで下落している。

財務状況が悪化したことを受け、同社は今年7月下旬に、一部事業からの撤退によって組織をスリム化し、また、ウェルス・マネジメント事業を強化する一方投資銀行事業を縮小して、コストベースを155億スイスフラン(157.5億ドル)以下にまで抑える方針を示したのである。

さらに、その具体的な再建計画を、10月27日に2022年7~9月期決算と合わせて発表する予定であることを発表している。その発表内容に関する様々な憶測が渦巻いていることが、足元での同社の株価下落やCDSスプレッドの上昇をもたらしている面がある。

再建計画では、投資銀行部門の大幅な改革、名称変更やグループからの切り離しなどが取り沙汰されている。また、向こう数年で数千人規模の人員削減が盛り込まれる可能性がある、とブルームバーグは報じている。さらに、同社はブラジルを除く中南米でのウェルス・マネジメント事業の売却を検討しており、スペインのサンタンデール銀行やイタリアのインテーザ・サンパオロといった買い手候補の企業に接触している、とブルームバーグは報じている。同社は否定したが、一時は米国市場からの撤退を検討といったロイター通信の報道まであった。

資本増強への思惑が

同社がリストラや成長戦略を柱とする再建計画を実行する中では、そのための資金も必要となる。それは一部の資産売却では賄えず、資本増強が必要になるとの見方が出ている。資本増強のために新株発行がなされれば、1株当たりの価値が希薄化することになるため、その懸念から株価が下落している面もあるだろう。

他方で、同社の信用力低下、株価低迷から資本増強が実現できないまま再建計画を進めれば、資本不足が表面化するとの懸念も市場にはあるのではないか。ブルームバーグ社によると、同行幹部らは自己資本比率のうち普通株式等ティア1(CET1)が6月末時点で13.5%と、2022年の目標レンジ13-14%の中間にあると説明している。これは国際的な規制で定められた最低要件8%、スイス当局が要求する10%程度よりもかなり高く、問題のない水準だ。それでも、資本増強が実現せずに先行き資本不足の問題が生じ得る、との懸念が金融市場に燻っているのではないか。

10月2日の英紙フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、クレディ・スイスの経営幹部は週末に、大口の顧客や取引相手先の金融機関、投資家などに接触し、同社の流動性や資本状況に問題がないことを説明したとされる。他方で同社の幹部は、同社が資本増強の可能性について投資家に正式に接触したとの報道を否定している。またロイターが9月30日に入手した社内メモによると、ウルリッヒ・ケルナーCEO(最高経営責任者)は従業員に対して資本と流動性は健全だと説明したという。

米国やその他主要国が大幅な利上げを進める中、株価下落など金融市場はにわかに不安定化してきている。さらに、金融・経済環境の変化によって金融機関の経営不振が生じ、それをきっかけに金融システム不安が生じることを金融市場は警戒し始めている。そうしたなか、クレディ・スイスの経営状況についても、従来以上に様々な憶測が高まりやすい環境になっていると言えるのではないか。

市場の混乱の原因となっている再建計画の中身、資本増強の是非などについて、同社が10月27日の発表を前倒しするなどの措置を今後迫られる可能性があるかもしれない。

(参考資料)
"Credit Suisse Turmoil Deepens With Record Stock, CDS Level", Bloomberg, October 3, 2202
「クレディ・スイス、経営幹部が財務不安説を否定 FT報道」、2022年10月3日、日経速報ニュース
「DJ-クレディ・スイス、財務懸念の鎮静化に尽力」、2022年10月3日、ダウ・ジョーンズ米国企業ニュース
「クレディ・スイス、戦略見直しの詳細 10月27日の決算発表で公表」、2022年9月26日、ロイター通信ニュース

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