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「全国旅行支援」の消費押し上げ効果は4,464億円

2022/10/11

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「全国旅行支援」が10月11日にスタート

新たな観光需要喚起策「全国旅行支援」が10月11日から始まる。期間は12月下旬までとされる。東京都については、クーポンを使える店舗の募集などの実務的な準備に時間がかかるため、10月20日からの開始となる。

補助金による割引率は、旅行代金の40%となる。上限は、鉄道、バス、タクシー・ハイヤー、航空、フェリーなど交通手段とセットになった交通付旅行商品では一人一泊当たり8,000円、それ以外は日帰り旅行を含め5,000円となる。あわせて、行き先の都道府県内の土産物店などで使えるクーポン券が、1人1泊あたり平日は3,000円、休日は1,000円与えられる。

1回の旅行に対して7泊分までが補助の対象となるが、期間中は何回でも活用できる。利用には、新型コロナワクチンの原則3回接種か陰性証明が必要となる。

国が主体となって実施された2020年の「Go Toトラベル」とは異なり、この「全国旅行支援」は都道府県が事業の主体となる。そのため、その運用の詳細については都道府県の判断による部分が多いのが特徴だ。

短期間の制度としたことは妥当

国民の間で新型コロナウイルスの感染に対する警戒感が徐々に薄れる中、国内旅行も回復傾向にある。他方、感染再拡大のリスクはある。そうした中で、財政資金を用いて国内旅行を敢えて支援する必要が本当にあるかについては、疑問も残るところだ。

ただし短期間での実施とした点は妥当なのではないか。2020年の「Go Toトラベル」は感染拡大を助長しているとの批判を浴びて、事実上頓挫してしまった。「全国旅行支援」を短期間の事業としたのは、こうした経緯を踏まえたためでもあるだろう。過去2年間は、年末年始に人の移動が活発になる時期に、感染急拡大が起きている。「全国旅行支援」はそうした感染再拡大のリスクが高まる時期より前に終了するように設定されている。

またこの短期の事業を、民間需要を喚起する一時的な呼び水とすることで、民間需要によって関連事業者が持続的に支援されていくことにつなげていく狙いもあるのだろう。また短期間の事業とすることで、国民が駆け込み的に同制度を利用することを促し、旅行支出を短期間で拡大させる効果もあるだろう。

実質的な割引率は30.8%と推定

そこで、以下では、「全国旅行支援」の経済効果を試算してみたい。事業期間は、10月11日から12月23日までの74日とする。ただし、東京都での事業は10月20日から始まるため、全国に占める東京都の経済規模で調整して、実質的には72日分と計算される。

観光省「旅行・観光消費動向調査(2021年)」によると、日帰り旅行の一人一回当たりの平均旅行支出額は17,328円だ。「全国旅行支援」では日帰り旅行では5,000円までが割引適用の上限となる。さらに、これに2,429円(平日3,000円、休日1,000円を一週間の曜日日数で案分)分のクーポンが付与されることを考慮すると、実質的な割引率は25.6%となる。

他方、宿泊旅行については、一人一回当たりの平均旅行支出額は49,323円である。一日当たりの平均支出額を仮に日帰り旅行と同じとすれば、平均宿泊数は2.8日となる。さらに支援の上限が8,000円、また2,429円(平日3,000円、休日1,000円を一週間の曜日日数で案分)分のクーポンが付与されることを考慮すると、実質的な割引率は32.5%となる。旅行全体での平均割引率は、30.8%である(図表)。

「全国旅行支援」制度の下、消費者は3割程度安く、旅行を楽しむことができる計算となる。

図表 2021年旅行支出と全国旅行支援による割引率の推計

「全国旅行支援」の旅行支出増加効果は4,464億円

ところで、内閣府の分析によると 、サービス消費の価格弾性値は-0.8である。これは、価格が1%低下すると実質サービス消費が0.8%増加する傾向があることを意味する。「全国旅行支援」制度のもとでは、上記の計算のように、旅行費用が30.8%引き下げられる。これは、旅行支出を24.64%(30.8%×0.8)増加させる。

観光省「旅行・観光消費動向調査によれば、2021年の年間旅行支出増額は9兆1,835億円である。「全国旅行支援」制度によってこの支出が24.64%増加するとすれば、その金額は年間2兆2,628億円となる。他方、「全国旅行支援」制度が実質的72日間続くとすれば、その間に増加する旅行支出額は4,464億円(年間名目GDPの0.1%程度)となる(制度の実施が12月20日までの場合には、増加する旅行支出額は4,278億円)。

このように、「全国旅行支援」制度によって、一定程度の消費刺激効果が生じることは明らかである。開始後は、感染の動向、不正利用の動向、あるいは県ごとに運用が異なることで混乱などが生じないかどうかなどを慎重に見極め、必要に応じて柔軟に制度を修正していくことが重要だろう。

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