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FRBは12月に利上げ幅を縮小へ:円安傾向も終盤戦に

2022/11/04

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金融引き締めの累積的効果、時間差を考慮

11月2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備制度理事会(FRB)は、市場の事前予想通りに0.75%の利上げ(政策金利引き上げ)を決定した。0.75%の大幅利上げの実施は4会合連続となり、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準は3.75~4.0%となった。これは2008年1月以来、約14年半ぶりの水準である。

今回のFOMCの決定で最も重要なのは、先行きの利上げペースの縮小の可能性を示唆した、以下の一文が声明文に加えられたことだ。

「将来の利上げのペースを決める際には、委員会は金融政策が経済活動、物価、経済・金融環境に与える影響について、金融引き締めの累積的効果、時間差を考慮する(In determining the pace of future increases in the target range, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.)」

これは、利上げが行き過ぎて、遅れて景気を著しく悪化させてしまう「オーバーキル」のリスクをFRBが意識し始めたからだろう。次回12月のFOMCでは、利上げ幅は0.5%へ縮小する可能性が高まってきた。

ウォールストリート・ジャーナル紙は、今回のFOMCで、12月の次回FOMCで利上げ幅を縮小することが議論されること、それをどのように金融市場に伝えるかについても議論されることを、事前に伝えていた(コラム「為替介入の実施で一時円安の修正が進む」、2022年10月24日)。利上げ幅の縮小が金融市場の過度の反応を引き起こす、特に株価上昇を生じさせることを、FOMCの参加者は警戒したのである。株価の大幅上昇は、金融引き締めの効果を損ね、あるいは将来の株価大幅下落につながるなど、金融市場の安定を損ねることが懸念されるためだ。

FRBは金融市場の期待のコントロールに成功か

先行きの利上げペースの縮小を示唆した声明文に反応して、金融市場ではFOMC声明文の発表直後に長期金利の低下、株高、146円近くまでドル安円高が進んだ。

しかし、その後、パウエル議長が記者会見で、「物価上昇率を2%目標に下げるために十分に引き締まった金利水準に近づけば、利上げペースを減速させることが適切になるだろうが、その金利水準は極めて不透明だ。まだ道半ばであり、前回の会合以降に入ってきたデータを見れば、最終的な金利水準は以前の予想より高いことを示唆している」と金融市場が利上げ幅の縮小から先行きの利上げ停止、あるいは利下げの可能性まで前倒しで織り込まないように強くけん制した。その結果、株価は再び下落に転じ、為替市場ではドル高円安の流れが生じた。

FOMCが、先行きの利上げ幅を縮小する可能性を示したことが、金融市場の過度の反応、特に株式市場の楽観論を強めることは、パウエル議長の発言によって回避され、FRBは金融市場の期待のコントロールに成功したようにも見える。

マジックナンバーは0.25%、ドル円レートは160円に到達せず

今回のFOMCの声明文を踏まえると、FRBの利上げ局面も、利上げ期間で見れば後半戦、利上げ幅で見れば終盤戦に入ったと言えるのではないか。このことから、FRBの利上げ姿勢と米国長期金利の水準に大きく左右される対ドルでの円安も、終盤戦に入ったと考えられるのではないか。

金融市場は12月のFOMCで0.5%の利上げをほぼ織り込んだ状況だ。しかし、12月のFOMCでは利上げ幅が0.75%から0.5%に縮小することは、今回のFOMC以前から金融市場ではコンセンサスとなっていた。FOMCが先行きの利上げ幅の縮小を示唆しても、金融市場の反応がそれほど大きくなかったのは、そのためでもある。

金融市場の流れを大きく変える、いわばマジックナンバーは0.5%ではなく、0.25%である。金融市場が0.25%の利上げ幅を強く意識した時点で、米国長期金利の上昇は一巡、ドル高円安も一巡するだろう。ただしそのタイミングは、今後の経済・物価指標に大きく左右されるため、不確実性が高い。

そのうえで、そのタイミングを予想すれば、早ければ12月のFOMC後、遅くとも来年1-3月期とみておきたい。その場合、ドル円レートは160円には到達せずに、円安から円高の流れに転じることになるだろう。

(参考資料)
「FRB、0.75%利上げ 今後は「引き締め効果の時間差考慮」」、2022年11月3日、日本経済新聞電子版
「FRB議長、利上げ到達の水準「まだ道半ば」 会見要旨」、2022年11月3日、日本経済新聞電子版

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