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NISA倍増だけで終わらせるな(資産所得倍増計画)

2022/11/25

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NISA投資額を2倍にしても個人金融資産のわずか2.8%

政府は年末までに、少額投資非課税制度(NISA)の抜本的拡充策を決定し、2023年度税制改正大綱に反映させる。拡充策は、3つのNISAの統合、投資上限の引き上げ、投資期間の恒久化、制度の恒久化などが柱になると考えられる(NRI JOURNAL「木内登英の経済の潮流――「資産所得倍増計画」推進の3本柱」、2022年9月9日)。

そのうえで政府は、5年間でNISAの総口座数と投資額をそれぞれ現状の2倍となる3,400万口座、56兆円にする方向で検討している。制度拡充によってNISA活用のメリットが高まれば、その目標は達成可能ではないか。ちなみに、口座を開設しても実際にNISAを利用した投資をしない投資家が既に一定程度存在することを踏まえれば、目標は口座数ではなく投資額を中心に据えるべきだろう。

ただし、NISAを倍増させることができても、それは政府が掲げる「資産所得倍増計画」、あるいは「貯蓄から投資へ」の達成にはなお遠いことも理解しておく必要がある。拡充策の奏功でNISAの投資額が大幅に増えても、それはNISA以外の投資をNISA口座に移し替える部分を多く含むためである。

また、資産所得を倍増するには、個人金融資産のうち、現金、預金以外の収益性が高い株式、投資信託などの金額を大幅に増やすことが求められる。ただし、NISAの投資額を現状の2倍の56兆円まで増加させることができても、それは依然として個人金融資産約2,000兆円のわずか2.8%に過ぎないのである。

NISAの投資額倍増だけで満足していては、「資産所得倍増計画」、あるいは「貯蓄から投資へ」の達成には到底近づかない。

成長戦略と一体で推進することが重要

「資産所得倍増計画」、「貯蓄から投資へ」の達成に向けて、政府はNISAの抜本的拡充に加えて、金融教育の拡充や顧客本位の業務運営の強化に向けた、事業者教育の拡充も検討している。

ただし、それらだけで、「資産所得倍増計画」、「貯蓄から投資へ」が達成できるわけではない。この低金利環境下でもなお個人が金融資産の過半を極めて低い利息の銀行預金に置き続けていることは、金融リテラシーの欠如を反映している、と簡単に結論づけるべきではないだろう。これは、むしろ個人が合理的に判断した結果とも言えるのではないか。日本経済の低迷が長く続き、企業の成長力が低い中、株式投資から得られる収益への期待も決して高くないはずだ。その下で、相対的にリスクが高い株式投資に個人が慎重になるのも自然なことと言えるだろう。個人が株式投資を拡大させるには、日本経済と企業の成長力が高まり、株式投資の期待収益率が高まることが必要になるのではないか。

この点から、「貯蓄から投資へ」、「資産所得倍増計画」は、人への投資、デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略、気候変動リスク対応のグリーントランスフォーメーション(GX)など、政府が掲げる幅広い成長戦略と一体で推進していくことが強く求められる。

そうした政策の下、企業と個人の成長期待がともに高まれば、投資と投資収益が相乗的に増加していく好循環が、企業と個人の間で始まることになると期待される。

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