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見通しが大きく外れた2022年米国株式市場

2022/12/28

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2022年の米国株式市場、企業収益は年初の予想通りも株価は大幅に下振れ

2022年の米国株式市場は、年初の見通しが外れて株価が予想外に大きく下落した1年となった。株価下落の最大の理由は、米連邦準備制度理事会(FRB)が1年間で4%ポイントを超える大幅な利上げを実施したことの影響である。長短金利の大幅上昇によって、バリュエーションが変化したことが株価の調整に繋がった。ナスダック指数の大幅下落にも表れているように、グロース株への打撃が特に大きくなった。

年初には予想もしなかった幅でFRBが利上げを行った背景は、物価高騰が予想以上に長期化したことだ。これはFRB、金融市場共に年初には予想できなかったのである。

他方で、2022年の米国経済の動向については、年初の予想から大きくずれたわけではない。金利に敏感なセクターを中心に、製造業の活動には弱さが見られているが、比較的安定した非製造業の活動、雇用情勢の安定によって、米国経済は失速することなく2022年を終えようとしている。

こうして経済の動きが概ね想定通りであったことから、企業収益も概ね想定通りとなっている。S&P500指数構成企業の2022年10-12月期の利益は、現時点での推計で1株当たり221ドルと、ファクトセットがまとめた年初のアナリスト予想とぴったり一致している。誤差は1ドル未満であり、年末予想としては1995年以来で最も小さかったのである。

企業収益の見通しが予想通りであったのとは対照的に、株価の見通しは大きく下に外れた。JPモルガン、ゴールドマン・サックス、シティグループの年初の予想はいずれも強気の予想で、S&P500はそれぞれ5,100、5,050、4,900と見込んでいた。バンク・オブ・アメリカは弱気相場を見込んでいたが、目標株価は4,600と、予想を公表した時点の水準からわずか3%の低下にとどまると見込んでいた。実際にはS&P500の現時点(12月27日)での水準は、3,830ドル程度と、いずれの予測よりも大幅に低い。

2023年も株価予想は再び外れるか

2023年の米国株式についても、ウォール街は上昇を予想している。シティグループ、バンカメ、ゴールドマン・サックスのストラテジストはそろって、S&P500の来年の終値を4,000と予想している。JPモルガンは4,200に上昇すると見込んでいる。

株価の上昇幅が大きくないのは、景気減速によって企業収益が冴えない1年になると、みな予想しているからである。それでも2022年の下落には歯止めがかかり、多少とも上昇すると見込んでいるのは、FRBの利上げ姿勢が変化し、金利上昇によるバリュエーションの悪化に歯止めがかかる、と予想しているためだろう。

しかし、2022年は予想以上の金利上昇で株価の見通しを外し、2023年は予想以上の経済・企業収益の悪化で、再び株価の見通しを下に外してしまう可能性はないだろうか。

2022年の株価下落は主に金利上昇によるもので、2023年の景気悪化のリスクを株式市場がまだ十分に織り込んでいない可能性があるのではないか。景気は悪化しても、物価上昇率の高まりが続き、FRBが利下げに慎重な姿勢を続ければ、長期金利の低下も緩やかなペースにとどまり、金利低下の好影響が、景気悪化の悪影響を打ち消すには至らない可能性もあるだろう。

2023年は答え合わせの1年に

2022年は予想以上の物価高騰に対して、FRBが大幅に利上げを実施した1年であったが、2023年はその政策効果が経済、物価に与える影響についての金融市場の見通しが正しいかどうかを確認する、いわば「答え合わせ」の1年となるのではないか。

他方で2022年の日本株は、米国や海外の株式市場に連動して株価が調整したが、他国とは異なり日本銀行が金融緩和を維持したことで顕著な金利上昇が起きなかった。また、経済も比較的安定を維持したことから、株価の調整幅は、米国、欧州、中国などと比べて小さめにとどまったのである。

しかし、2023年については、日本株は引き続き米国株の調整の影響を受ける一方、海外景気の悪化、日本銀行の政策修正の観測、それらに影響された円高進行という強い逆風が重なる可能性が考えられる。その場合、日本株の調整幅は、2023年前半を中心に、米国株の調整幅を大きく上回ることになるのではないか。

(参考資料)
Wall Street Nailed Earnings but Missed the Bear Market(アナリスト予想、利益は的中も株価は的外れ),Wall Street Journal, December 27, 2022

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