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DX・IT戦略を実現に導くITファイナンス管理:役割・価値編 (1)

2022/11/07

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企業がデジタル技術やデータの活用を通じて価値を生み出し続けるためには、限られたITリソースを最大限に有効活用しなくてはなりません。そのため、昨今、ITのファイナンス面での管理はますます重要になってきており、これまでIT部門任せであったITファイナンス管理の基本を改めて学びたいという事業部門や管理部門の方が増えています。
そこで本記事では、野村総合研究所(NRI)で企業のITファイナンス管理の高度化支援を担当する2名のコンサルタント(秋谷、宮田)により、ITファイナンス管理が果たす役割や価値について座談会形式でお届けします。

執筆者プロフィール

システムコンサルタント:宮田悠也
2006年、国内ITサービス企業へ入社し、システム開発/エンハンスのプロジェクト経験を経て、2015年に野村総合研究所(NRI)へ入社。専門はデジタル・IT投資管理、サービスマネジメント、デジタル・ITガバナンス、セキュリティ、システム化構想・計画の策定及び実行支援。

システムコンサルタント:秋谷兼充
2009 年、野村総合研究所入社。多様な業態の企業に対して、ITマネジメント全般に渡る方針・戦略検討から実行支援に至るまで、幅広いコンサルティング業務に従事。専門はIT投資・コスト最適化、ベンダーマネジメント、デジタル・IT戦略、デジタル・IT人材変革。

ITファイナンス管理の重要性がなぜ増しているのか?

秋谷
NRIでは、ITを利用する立場にある企業に対して「ユーザー企業のIT活用実態調査」を毎年実施しています。2021年9月に実施した調査では、2021年のIT投資額は45.2%の企業で前年度より増加しています。また、2022年度のIT投資額は「増加する」という予想が50.5%に達しています。これらの結果から、ITに対する投資意欲の高さが伺えます。

宮田
各社、DX・IT投資を積極的に行おうとしていますが、コロナ禍やウクライナ情勢を背景に経営環境の不透明感が増す中で、予算全体(投資と経費の合計)を増やしていくことに対しては慎重な姿勢も見受けられます。

秋谷
そうですね。先日、ある大手製造業のIT予算担当者に話を伺ったのですが、経営とIT部門が議論をした末、今後3年間は、予算を昨年度と同程度の金額に抑えることになったそうです。

宮田
予算の上限が決められた中で、DX・IT投資を増やしていこうとすると、IT経費の継続的な削減が必要になりますね。

秋谷
その通りです。DX・IT投資により、経年でシステムが増えていくと、システムの保守・運用等にかかるIT経費も増えていきますので、徐々にIT投資余力が削がれていきます。そのため、IT経費の継続的な削減が必要なわけです。また、DX・IT投資についても、やみくも実施すればよいわけではなく、DX・IT投資を最適化させていく必要があります。

出所)2021年ユーザー企業のIT活用実態調査(NRI)

DX・IT投資の最適化とは?

秋谷
DX・IT投資の最適化を考えるにあたり、まずは、DX・IT投資の目的に立ち返ることが重要です。

宮田
同感です。DX・IT投資を通して、経営や事業に対して顧客拡大や業務効率化など、どんな価値を提供していくか、これがベースですね。

秋谷
はい。予算には限りがあり、全てのDX・IT投資を行うことは出来ないので、優先度をしっかり定めて管理していかなければなりません。DX・IT投資の目的は自社の戦略に適合するものなのか、投資対効果は高いのかといった観点で優先度を判断し、DX・IT投資の最適化を行っていく必要があるわけです。

宮田
ここまでの話を纏めると、予算枠を増やすことが難しい企業がDX・IT投資を増やしていこうとすると、IT経費の継続的な削減とDX・IT投資の最適化が重要ということですね。

秋谷
その通りです。継続的な経費削減と投資最適化、この2つの実現に向けて、IT部門としてはITファイナンス管理を行っていく必要があります。

ITファイナンス管理が果たす役割や価値とは?

秋谷
ITファイナンス管理の主な管理対象は、計画・予算管理、投資管理、及びコスト管理です。これはそれぞれの主な管理事項を記述した全体図です。

秋谷
まず、計画・予算管理では、適切なDX・IT投資の計画を立案し、必要な予算を策定します。ここでのポイントは、自社の戦略に整合した計画とすることです。企業として何を目指してDX・IT投資をしていくかの方向性が重要となります。
また、一度策定した予算についても、その後の予算執行状況をモニタリング(予実管理)し、必要に応じて予算の再配分を行うことで、予算を機動的に活用していくことができます。

宮田
特にDX投資においては、ビジネスや顧客のニーズに即したスピーディな計画変更ができるかが重要視されますね。

秋谷
投資管理では、策定された予算に基づき執行される個々の投資案件の管理を行います。さらに投資目的等による投資配分(ポートフォリオ)の情報を可視化し、次の予算策定のインプットとします。
投資管理における重要な活動が投資評価であり、事前評価では投資案件の有効性を様々な観点で評価します。

宮田
この評価観点は、従来のIT投資とDX投資では異なります。例えば、DX投資は、より不確実性が高い中での投資判断が必要になります。

秋谷
そうですね。また、投資案件の事後評価も非常に重要な活動であり、投資効果が現れているかを適切なタイミングで評価することで、DX・IT投資の価値向上につながります。

宮田
コスト管理では、発生したITコスト(IT投資とIT経費の合計)を集約・可視化した上で、様々な分析軸を基に、適正なコストになっているかの検証を行います。その結果、コストを適正化していくための施策を検討・実行していきます。

また、可視化したコスト情報を経営層などのステークホルダーに報告し、説明責任を果たすこともIT部門の重要な役割です。

秋谷
コスト情報は、利用部門に対するコスト配賦を行うためにも使われますね。コストの内訳や算定方法を利用部門にもわかりやすく伝えることで、利用部門との信頼関係も構築されます。

宮田
計画・予算管理、投資管理、そしてコスト管理を通じてITファイナンス管理が果たす役割や価値の概要を話してきました。一方で、実行する上では様々な課題が生じることが多く、ITファイナンス管理が十分に機能していない企業も多いと感じています。

秋谷
次回は、計画・予算管理、投資管理、コスト管理の管理機能別に、主にどのような課題が存在し、またどのような対策が考えられるのかについて見ていきましょう。

執筆者情報

  • 宮田 悠也

    ITマネジメントコンサルティング部

    システムコンサルタント

  • 秋谷 兼充

    ITマネジメントコンサルティング部

    システムコンサルタント

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