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東京の子供はどの程度新型コロナウイルスに感染しているか

2022/08/09

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7月末時点で、新型コロナウイルス感染拡大のいわゆる第7波が急速に拡大している。7月27日には感染確認の発表が全国で20万9694人と20万人を超え、今までの累計感染確認者数は1192万人と人口の約1割を占める(再感染を考慮せず)。第7波の大きな特徴として、子供(10歳代以下)の感染者が多い事である。厚生労働省のデータによれば、7月1日から7月25日までの新規陽性者の30.2%が10歳代以下の子供となっている。
それでは新型コロナウイルスにどの程度の子供が感染したのだろうか。分析のため、ここでは感染確認された検査陽性者の匿名化された個人データ(年代、性別、居住地など)が公開されている東京都を対象とし、各年代別の感染率を2022年1月時点の人口を元に計算してみる。
図表1は新型コロナウイルスの国内での感染拡大開始以降の東京都における年代別累積感染率である(再感染を考慮せず)。東京では、10歳未満及び10歳代の既に2割以上が感染している事が分かる。また、2022年1月に始まったいわゆる感染拡大の第6波のタイミングで、10歳未満並びに10歳代の感染率が急上昇している。

図表1 東京都における年代別累積感染率

出所:東京都公表データより野村総合研究所作成

6か月ごとの感染率の増分を見ると、第6波が始まった2022年1月~6月までの6か月間に、10歳未満で17.6%、10歳代で13.7%それぞれ増加している(図表2)。

図表2 東京における年代別累積感染率の増分(6か月ごと)

出所:東京都公表データより野村総合研究所作成

このように、第6波以降子供の感染率が増加した理由としては以下が考えられる。

1)10歳未満のワクチン接種率が低い

他の年代に比べて、10歳未満の接種率は低い。そもそも、2020年7月時点で新型コロナワクチン接種対象となる小児の年齢は5歳~11歳となっており、4歳以下はワクチン接種の対象となっていない。また、5歳~11歳の接種も開始されたのは2月末からであり、予防接種法上の努力義務もない。このため、東京都で7月26日時点までに接種を行った小児(5歳から11歳)は1回接種で143,313人、2回接種で129,349人に留まる。5歳から11歳の人口が755,413人なので、接種率も1回目19%、2回目17%と他の年代に比べて大幅に低くなっている。また、4歳以下の489,009人はそもそも接種していない。この様に10歳未満のワクチン接種率が低いことが感染率上昇の大きな要因になっていると考えられる。

2)オミクロン株では2回接種では感染予防効果が低い可能性がある

図表3、図表4は東京都における年代別の接種率(2回接種及び3回接種)の推移を表したグラフである。

図表3 東京都における年代別新型コロナワクチン接種率(2回接種)

出所:東京都公表データより野村総合研究所作成

図表4 東京都における年代別新型コロナワクチン接種率(3回接種)

出所:東京都公表データより野村総合研究所作成

図表3を見ると第6波の感染拡大が始まった2022年1月時点では、10歳代含むいずれの年代でも2回接種率は7割以上となっている。しかしながら、図表2であったように年代で感染率の増加には大きな開きがある。そこで、図表4を見ると特に若い世代の3回接種率が依然として低いままであることが分かる。この事から見てオミクロン株が感染拡大の中心となった第6波以降では、2回接種では感染抑制効果が低く、3回接種以上の接種を行う必要がある可能性がある。無論、ワクチン接種以外に年代による日常行動などの差が影響している可能性も否定できないが、今後の追加接種の必要性を考える際に参考になるのではないか。

以上のように、既に2割以上が感染している子供の感染は第7波によりさらに増加する恐れがある。これ以上の感染拡大を防ぐためには、

  • ① 

    ワクチン接種の更なる促進

  • ② 

    マスク・換気などの基本的な感染対策の徹底

を今まで以上に行う事が大切である。
子供の健康を守る事は、社会の重要な責務である。出来る限りの対策を行うべきである。

執筆者情報

  • 梅屋 真一郎

    未来創発センター

    制度戦略研究室長

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