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FRBの2月FOMCのMinutes-Risk management

2023/02/23

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はじめに

25bpの利上げを決定した2月のFOMCでは、既往の利上げによる金融環境のタイト化が総需要を抑制している効果を確認しつつ、十分に引締め的なスタンスの実現が必要との理解を共有した。

経済情勢の判断

FOMCメンバーは、累次の利上げによって金利感応度の高い領域を中心に需要が減退した点を確認したほか、昨年第4四半期の民間国内最終支出が殆どゼロ成長であった点を指摘した。

このうち、消費支出は2か月連続で減速したほか、2023年の成長は低位に止まるとの見方を示した。数名(several)のメンバーは、余剰貯蓄が既に使用されたか、高インフレで浸食されたとの見方を示したほか、一部(a couple of / a few)のメンバーは、消費者がより安価な財・サービスに支出を転換している点や、金利上昇による利払い負担の増加に直面している点を挙げた。

設備投資も金利上昇によって停滞しているほか、数名(several)のメンバーは、供給制約の緩和を受けて、企業は昨年第4四半期にみられた高水準の在庫を維持しないとの見方を示した。もっとも、数名(some)のメンバーは、中国のゼロコロナ政策の転換やユーロ圏の予想以上の景気拡大に伴う需要の下支えに期待を示した。

この間、労働需給のタイトさは維持されており、数名(several)のメンバーは、大手IT企業の人員削減も既往の大幅な人員増の反動であるとして、労働市場全体には波及しないとの見方を示した。

その上でFOMCメンバーは、コロナ後の構造要因(高齢者の早期退職や子弟の養育コストの上昇等)が労働供給を抑制しているとの見方を共有した一方、未充足求人や平均労働時間の減少、賃金や雇用コストの増加ペースの減速など、需給の不均衡の改善を示唆する動きも確認した。

これらの点を踏まえて、景気の先行きに関する不透明性は依然として高く、リスクは下方に傾いていると評価した。リスク要因としては、低成長下での予想外のショックによる景気後退、海外中央銀行による同時的な金融引締めの影響、連邦政府の債務上限の引上げの遅延に伴う金融経済の混乱を挙げた。

物価情勢の判断

FOMCメンバーは、依然としてインフレ率が過度に高い点を確認するとともに、足元の減速を歓迎しつつも、持続的な減速について確信を持つにはより広範な価格の動きに関する証拠が必要との理解を共有した。

このうち、コアの財価格の上昇は顕著に減速している点を確認したが、供給制約の緩和によって減速傾向も減衰していくとの見方を示した。また、住宅サービスの価格は、家賃の上昇の減速によって年後半に下落に転ずるとしたが、コアのサービス価格は、賃金上昇と生産性の停滞のため、減速の兆しがみられないとした。

なお、2名(a couple of)のメンバーは、賃金上昇が物価上昇よりも遅延するため、インフレ圧力の評価を困難にしていると指摘した。また、別の2名(a couple of)のメンバーは、生産性の低迷による総供給の減速もインフレ圧力に寄与したとの見方を示した。

この間、短期のインフレ期待は、家計や企業に対するサーベイの結果や金融市場の指標のいずれをとっても低下したほか、中長期のインフレ期待は安定を維持したとの見方を共有した。

その上で、FOMCメンバーは物価の先行きに対する不透明性も依然として高いとの評価を維持し、上方リスクの要因としては、労働市場のタイトさが想定以上に継続するといった国内要因に加えて、中国のゼロコロナ政策の転換やロシアのウクライナ侵攻による影響といった海外要因を挙げた。

金融安定の評価

今回のFOMCは、SEPの見直しがない一方、執行部による説明をもとに金融安定の議論を行う回に当たる。

実際、数名(several)のメンバーが市場金利の上昇に伴う影響を取り上げ、商業不動産に代表される一部の資産価格の高いvaluation、投資家の償還請求に対する一部のノンバンク金融機関の対応力、一部の銀行における保有証券の大規模な未実現損失などをリスク要因として指摘した。

また、数名(a few)のメンバーが国際金融市場のストレスによる米国の金融安定への影響のリスクを取り上げた。一方、多く(a number of)のメンバーが米国債市場の機能維持の重要性を確認し、関係当局による対応の重要性を指摘した。さらに、数名(several)のメンバーは、FRBによるレポファシリティの提供は短期金融市場での資金調達圧力に対応する上で有用であるが、金融システムのコアとなる市場の機能には問題が残るとの見方を示した。

政策判断

FOMCメンバーは、累次の利上げによって十分に引締め的なスタンスに向けて顕著に前進してきたことや、政策効果によってインフレに減速の兆しがみられる点を確認した。

もっとも、インフレ率は依然として目標を大きく上回っているほか、労働市場のタイトさが賃金や物価に上昇圧力を与え続けているとの理解に基づき、大多数(almost all)のメンバーが25bpの利上げに合意した。そのうち多く(many)のメンバーは、利上げペースの更なる減速によって、米国経済が政策目標にそって前進する状況をより良く評価しうるとの考えを示した。

これに対し、数名(a few)のメンバーが当初は50bpの利上げを主張し、物価目標をタイムリーに達成することのリスクを考慮すると、より迅速に引締め的スタンスに到達しうる点にメリットがあるとの議論を展開した。ただし、これらのメンバーも最終的には25bpの利上げに合意した。

その上で、政策目標の達成には利上げの継続が適切との見方で全てのメンバーが合意し、政策目標の達成に対する強いコミットメントを確認した。また、今後の利上げを判断する上では、累次の利上げの効果、物価や景気に対する政策効果のラグ、金融経済の状況を考慮する方針を確認した。

また、FOMCメンバーはリスクマネジメントの観点からも政策運営を議論し、インフレに対する上方リスクが政策運営の上でカギとなるとの理解を概ね(generally)共有したほか、多く(a number of)のメンバーは、不十分に引締め的なスタンスではインフレ圧力の緩和を阻害するとの見方を示した。

執筆者情報

  • 井上 哲也

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    シニア研究員

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