フリーワード検索


タグ検索

  • 注目キーワード
    業種
    目的・課題
    専門家
    国・地域

NRI トップ ナレッジ・インサイト コラム コラム一覧 最近の地方政府の隠れ債務解消に向けた動きについて

最近の地方政府の隠れ債務解消に向けた動きについて

2023/10/16

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

2023年10月に入り、地方政府の隠れ債務解消の動きが顕著になった。

遼寧省、重慶市、雲南省、広西省は9日、特別再融資債(詳しくは後述。中国語の融資は資金調達の意)をそれぞれ870.42億元、421.9億元、533億元、498億元発行すると発表した。また、10日には内モンゴル自治区と吉林省が、特別再融資債をそれぞれ403.8億元、250億元発行すると発表した。調達資金は、既存の隠れ債務の返済に使われる。

これらの動きは、22年12月の中央経済工作会議の「地方政府の債務リスクを予防・解消し、増加を断固として抑制し、既存債務を解消する」、23年7月の中央政治局会議の「地方債務リスクを効果的に予防・解消し、包括的債務解消案を制定・実施する」との方針を受けたものである。上述の発表分を含めて最近の特別再融資債の発行額は約3,800億元に上る。今後も発行が続き、23年通年の発行額が1兆元程度になるとの予想もある。漸く隠れ債務解消の動きが顕著になった。

以下、地方政府の債務の借り換え債について定義や経緯を簡単に紹介しておく。

(置換債)14年の予算法改正で地方政府は地方債(財政赤字を補填するもの)の発行を正式に認められた。一方、14年時点で、それまで違法であったものの実際には存在していた地方政府の債務(隠れ債務)が精査され、地方政府は置換債の発行により隠れ債務を借り換えることになった。借り換えの対象は、「非債券の形式で存在する地方政府の既存債務」である。15年から18年に、15年3.2兆元、16年4.88兆元、17年2.77兆元、18年1.35兆元と計12.2兆元が発行された(報道による)。

(再融資債・特別再融資債)18年には、「一部の満期を迎えた地方政府債の元本の返済」に使われる再融資債が登場した。そして、20年12月に、一部の再融資債の用途が「既存債務の返済」に変更された。この「既存債務の返済」に使われる再融資債が特殊再融資債であり、主に隠れ債務の解消に利用されている。これまでの特殊再融資債発行のケースは以下の二つであった。

一つは、19年12月から6省・自治区(貴州省、雲南省、湖南省、甘粛省、遼寧省、内モンゴル自治区)で実施されている県区レベルの隠れ債務解消試行での利用である(20年12月に6省において試行拡大)。これら6省が発行した特殊再融資債は21年9月までに6,128億元となり当初予定の上限に達したものと見られる(なお、この試行地域以外の省でも、特殊再融資債は発行されている)。

もう一つが、21年10月から広東省、上海市、北京市で試行されている「全域隠れ債務ゼロ」での利用である。22年6月までで5,042億元が発行された。既に、広東省と北京市が目標達成(つまり隠れ債務ゼロ)を発表したと報道されている。

執筆者情報

  • 神宮 健

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    シニアチーフ研究員

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

新着コンテンツ