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日銀主な意見:決定会合では多様な意見が見られず

2023/01/26

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変動幅の再拡大を見送った決定会合での主な意見

日本銀行は1月26日に、1月17・18日に開かれた金融政策決定会合での「主な意見」を公表した。決定会合の参加者の発言については、10年後に「議事録」が公開されてすべてが明らかにされるが、会合の1か月程度後には、議論の流れを記述する「議事要旨」が公表される。さらにその前、決定会合の1週間程度後には、政策委員が決定会合での自身の発言内容を自ら選んで紹介する、主な意見が公表される。議事要旨は、決定会合での議論を事務方が再構成して示すものだが、主な意見は、各委員が最も主張したかったことが、直接的に示される。

日本銀行は、昨年12月19・20日の決定会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC)の長期国債利回りの変動幅を拡大し、利回りの上昇を容認する措置を突如打ち出した。1月17・18日の決定会合でも変動幅の再拡大を実施するのではないかとの観測が高まり、金融市場の関心を大いに集めていた。実際には、日本銀行は変動幅の再拡大の実施を見送る一方、共通担保オペの制度見直しを通じて、長期国債利回りの上昇を抑え込む姿勢を強く示した(コラム「4月の金融政策決定会合が最大の焦点に」、2023年1月18日、「4月以降追加修正の可能性が高いイールドカーブ・コントロール(YCC)と時間稼ぎの共通担保オペの拡充」、2023年1月24日)。

決定会合では多様な意見が出されなくなっている

今回の主な意見は、この際の決定会合での議論の内容を示すものだ。金融政策運営に関する意見のパートでは、発言内容がほぼ均一であることが、その最大の特徴である。この会合で変動幅の再拡大を見送ったのは、昨年12月に市場機能の改善を狙って変動幅の拡大を実施した措置の効果をなお見極める必要がある、との説明がなされた。さらに、YCCの継続、金融緩和の継続については、異口同音に支持されている。

過去10年間のうちで、政策委員の意見の違いが最も小さいのが現状、と思われる。政策委員の顔ぶれが変わる中で、大幅な金融緩和に否定的な意見も、逆に、追加的な金融緩和を支持する意見も、ともに弱まっているのだ。このことは、決定会合で多様な意見が出されなくなっていることも意味しよう。

3月の次回会合での追加修正の有無は金融市場の環境次第

次回3月の決定会合で、変動幅の再拡大などの追加措置が実施されるかどうかは、政策委員の考え方のコンセンサスで決まるというよりも、その時点での金融市場環境によって決まる面が強いだろう。

長期国債利回りが比較的安定した足元の状況が続けば、黒田総裁最後の決定会合となる3月でも、追加の政策修正は見送られるだろう。他方、日本銀行の政策修正期待などから長期国債利回りの上昇圧力が強く、日本銀行が再び大量の国債買い入れを強いられる状況となれば、変動幅の再拡大などの追加措置が実施されるだろう。

4月以降の決定会合では金融政策の大転換が円滑に進むか

ただし、3月の決定会合で追加の政策修正が見送られても、新総裁のもとで、早ければ4月の決定会合でも、柔軟化、正常化に向けて大きな政策修正の方向性が示されることだろう。 現時点では、異例の金融緩和の継続に揃って賛成している政策委員が、果たしてこうした大きな方針転換を支持するのかについて疑問を持つ向きも少なくないかもしれない。しかしそれは杞憂に終わるのではないか。

現在の政策委員については、総裁及び執行部の方針を受け入れる傾向が強いのであれば、新体制の下、新たな総裁、執行部が主導して進める金融政策の大転換についても、同様に受け入れる可能性が高いように思われる。

4月以降の決定会合では、議論が大きく紛糾してしまうことなく、金融政策の大きな転換が比較的円滑に進められていくのではないか。

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