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1月分東京都CPIは予想外に上振れも今後は緩やかに低下へ

2023/01/27

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予想外の物価上振れは全国旅行支援の影響も

総務省が発表した1月分東京都区部消費者物価(除く生鮮食品)(中旬速報値)は、前年同月比+4.3%と、前月の同+3.9%を上回り、1981年5月以来、41年8か月振りの水準に達した。前月と比べて前年同月比上昇幅が0.4%ポイント拡大したうち、約半分の0.18%は、前月比で+19.1%上昇した宿泊費の影響だ。宿泊代を引き下げる全国旅行支援が年末年始に実施されなかった影響と考えられる。これは一時的要因であり、2月の消費者物価では宿泊費は前月比で下落するだろう。それ以外には、都市ガス代などエネルギー関連、ペットトイレ用品など教養娯楽用品が物価上昇率の押し上げに寄与した。

生鮮食品除く消費者物価は季節調整値で前月比+0.5%と前月の同+0.4%から加速し、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価は同+0.5%と、前月の同+0.3%から加速した。しかしこれは既に述べた全国旅行支援の一時停止の影響によるところが大きく、これを除けば、物価上昇のペースは緩やかに鈍化していると考えられる。

政府の対策による物価押し下げ効果は2月分から

ところで、1月には補助金による政府の電気代・ガス代の抑制策が始められた。ただし、その影響は、1月分の電気・ガスの使用量が確定し、家計が実際に支払いを行う2月の消費者物価に反映されるとみられる。

それは、消費者物価を前月比で0.5%程度押し下げると考えられる。その結果、2月の消費者物価は前年同月比で大幅に下落し、1月の上昇率がピークとなった可能性が高い。

全国消費者物価は1月分の前年同月比+4.4%程度がピークに

1月分の東京都区部消費者物価から、1月分の全国消費者物価を推定すると、生鮮食品を除き前年同月比+4.4%と予想される。これは昨年12月の同+4.0%を上回るものだ。しかし、2月には政府の電気代・ガス代の抑制策の影響で物価は前月比0.5%程度、全国旅行支援の再開で前月比0.1%程度、それぞれ押し下げられることが見込まれる。その結果、前年同月比は+3.8%になると予想する。昨年12月が物価上昇率のピークとなった可能性が高い。

物価上昇率の低下は年後半に顕著に

ただし、今年前半は食料品価格の値上げの動きが続くことなどにより、物価上昇率はなお高止まりしよう。他方で、年後半には、海外景気減速の影響からエネルギー・食料品の海外市況の低下と円高進行による輸入物価下落の影響がより本格的に表れ、消費者物価の上昇率の低下傾向はより顕著になるだろう。年末時点で物価上昇率は1%台半ばまで低下し、2024年には1%を下回ると予想する(図表)。

今年の春闘では、歴史的な物価高を賃金に転嫁する動きから、ベアは1%台を超えるなど上振れが顕著となるだろう。しかし、エネルギー・食料品価格上昇、円安など一時的な要因に支えられた物価上昇率が今年後半から顕著に低下していくなか、来年、再来年にかけて賃金上昇率は再び低下していき、「賃金と物価の好循環」は生じないと考えられる(コラム「春闘と金融政策の正常化:賃金と物価の好循環は期待薄」、2023年1月17日、「CPI上昇率は4%でピーク:賃金と物価の好循環は起きず、日銀の2%の物価目標達成は今後も見通せない(12月消費者物価)」、2023年1月20日)。

図表 全国消費者物価(除く生鮮食品)の予測

新体制のもとでも日本銀行は2%の物価目標達成は困難と判断

4月に総裁が交代し新体制が始まっても、足元の物価上昇率の上振れは一時的であり、2%の物価目標達成は見えていないとの日本銀行の認識は変わらないのではないか。 新体制下のもとでの金融政策の柔軟化、正常化は2%の物価目標達成を前提とするものとはならず、2%の物価目標を中長期の目標に位置付け直すなどの修正を行ったうえで実施されていくものと考える。

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