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SVB破綻と米2月CPI:FRB利上げ観測が再浮上

2023/03/15

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やや落ち着きを取り戻す金融市場

14日の米国市場で、ダウ平均株価は6営業日ぶりに上昇した。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ見通しの修正やリスク回避傾向を受けて進んでいたドル安円高の流れに歯止めがかかり、世界的な株安・債券高傾向も一巡した。

米金融当局によるシリコンバレーバンク(SVB)及びシグネチャーバンクの預金全額保護の措置、FRBによる銀行への資金供給措置、国民に落ち着いた対応を呼びかけたバイデン大統領の演説などは、金融市場が即座に安定を取り戻すきっかけとはならなかった。

そうした中、14日に市場の雰囲気が変わったのは、金融市場で価格の調整が相応に進んだ結果だろう。金融市場の大きな動揺は、とりあえず一巡の方向とみるが、本格的に安定を取り戻すまでにはなお時間がかかるとみられる。

2月CPIは概ね予想通りの結果

そうした中、米労働省が14日に2月分消費者物価指数(CPI)を公表した。前年同月比上昇率は+6.0%と、1月の同+6.4%から低下し、2021年9月以来の水準となった。また、変動の激しい食料・エネルギーを除くコアCPIは、前年同月比+5.5%と、やはり1月の同+5.6%から低下した。低下は5か月連続である。ただし、前月比上昇率は+0.5%と、1月の+0.4%を上回った(事前の市場予想の平均値とは一致)。

3か月連続で前月比下落した後に1月に前月比+0.1%上昇した財コア指数は、2月には前月比横ばいに鈍化し、財の価格の落ち着きを裏付けた。前年同月比も+1.0%まで低下している。特に、中古車・トラックの価格は前月比-2.8%と大幅に下落している。

他方、2月のサービスコア指数は前月比+0.6%と、1月の+0.5%から加速した。家賃の前月比上昇率が1月を上回ったことなどが背景である。

米国の物価上昇率は、低下傾向を辿っていることは確かであろうが、サービス価格の上昇率が高いことから、引き続き高めの水準が続いている。

「CPIショック」は起きず

FRBの金融政策決定に与える影響という観点から、米国CPI統計は昨年来、特に注目を集めており、「CPIショック」とも呼ばれるように、金融市場にしばしば大きな影響を与えてきた。

ただし、SVB破綻後の金融市場の動揺を受けて、FRBの金融政策には、経済、物価に加えて、金融システムや金融市場の動向が当面は大きく影響する情勢となっている。そのため、CPI統計に対する金融市場の注目度は、やや低下していた感がある。さらに、実際の数字が概ね事前予想に一致していたことから、金融市場の反応は大きくなかったのである。

0.5%への利上げ幅再拡大は幻に

金融政策の先行きの見通しを反映するFF金先市場では、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%の利上げが高い確率で織り込まれている。実際のところ、現時点ではその可能性が高いだろう。パウエル議長が7日の議会証言で示唆した0.5%への利上げ幅再拡大は幻に終わる可能性が高まっている。

昨日時点では、利上げ見送りの観測も金融市場に出ていたが、その見方は後退した。これは、CPI統計を受けてというよりも、金融市場が落ち着きを見せ始めたことを受けたものだろう。

このように、SVB破綻後の信用不安、金融市場の動揺の行方については、当面のところはFRBの金融政策が大きな影響を与えるだろう。さらに先行きについては、米国経済が悪化するかどうかが、重要な鍵を握ることになる(コラム「景気が悪化すれば米国信用不安は次のステージに」、2023年3月15日)。

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