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植田日銀はいつYCCの修正に踏み切るか

2023/04/05

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YCCの修正は比較的早期に実施される見込み

足元では、欧米で銀行不安が生じ、また米国の景気後退懸念が浮上している。4月9日に就任する植田新総裁は、金融緩和状態は維持しつつも、現在の異例の金融緩和の枠組みについて、副作用を軽減する方向で順次見直しをしていくことが見込まれる。

他方で、政策の変更が金融機関や金融市場を不安定にさせるリスクに配慮するという伝統的な日本銀行の姿勢を踏襲すると見られ、この点から、足元の経済、金融情勢の不安定化は、金融緩和の枠組み見直しのスケジュールを全体的に先送りさせることになるのではないか。例えば、マイナス金利の解除は、最短でも来年後半以降と見ておきたい。

そうした中でも、比較的早く実施する可能性が考えられるのが、イールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化措置である。マイナス金利の解除などは金融緩和の枠組みの見直し、あるいは正常化策に当たるが、YCCについては、廃止を決めない限り、また10年0%の金利目標を修正しない限り、枠組みの見直しには当たらない。

実施が予想される変動幅の再拡大や撤廃などは、昨年12月にも実施されたYCCの柔軟化措置の延長である。マイナス金利の解除などの本格的な金融緩和の枠組みの見直しは、2%の物価目標の柔軟化措置の後に行われる可能性が高いとみられるが、それらと比べるとYCCの変動幅の再拡大や撤廃などは実施のハードルが低い。

大量の国債買い入れを強いられたことが最大の問題

日本銀行は昨年12月、YCCの変動幅の拡大を実施した。その際に理由として挙げたのは、イールドカーブの歪みへの対応であった。しかし、本当に問題だったのは、10年金利が変動幅の上限を超えないように、大量の国債買い入れを強いられていることだった。それは、国債市場の流動性を低下させ、ボラティリティを高めるリスクを高める。また日本銀行のバランスシートをいたずらに肥大化させてしまう。2016年9月にYCCの導入を決めた狙いの一つが、国債買い入れの抑制にあったと考えられることを踏まえると、これは由々しき事態である。

そこで、日本銀行は、早期にYCCの変動幅の再拡大や変動幅の撤廃などを通じて、国債の買い入れ額を抑える意向を持っているとみられる。

欧米の銀行不安がYCC修正時期の不確実性を高めたか

ただし、それを実施する時期については、欧米の銀行不安の影響で不確実性が高まっている。早期に変動幅の再拡大や変動幅の撤廃を決めることにプラスの材料とマイナスの材料が拮抗している状態である。

銀行不安を受けて、日本の長期金利は低下した。3月中旬には一時0.1%台まで低下したのである。そのため、日本銀行が警戒する、変動幅の再拡大や変動幅の撤廃によって長期金利が大幅に上昇するリスクは低くなった。これは、早期にYCCの柔軟化を実施することを後押しする材料である。

他方で、長期金利が低下して変動幅の上限を明確に下回ったことで、日本銀行が買い入れる長期国債の規模は縮小した。そのため、YCCの柔軟化をすぐに実施する必要性は薄れている。

このように、銀行不安を受けて、YCCの早期の柔軟化については、プラス材料とマイナス材料が双方浮上した形である。

ただし、10年国債金利は再び足もとで0.5%の上限近くまで浮上しており、植田新総裁にとって初回となる4月27・28日の決定会合の際には、再び10年金利がYCCの変動幅の上限を超えないように、日本銀行が国債の買い入れを強いられている可能性もあるだろう。

YCCの柔軟化は先行きの経済・金融ショックへの備えという側面も

YCCの変動幅の再拡大や変動幅の撤廃を行えば、長期金利の上昇余地だけでなく、低下余地も生まれる点が重要だ。内外経済が悪化し、また金融市場が混乱した際でも、長期金利が低下すれば、それは事実上の金融緩和となり、経済、金融面でのショックを一定程度吸収できる。

日本銀行が金融機関の収益を悪化させるなど副作用が大きいマイナス金利の深堀りを実施できる可能性は低い点を考えれば、先行きの経済、金融市場の環境悪化が見込まれる中で、YCCの柔軟化を決める可能性は考えられるところだ。

YCCの修正は6月以降か

このように、YCCの柔軟化は比較的早期に実施されると見ておきたいが、4月の決定会合で実施される可能性は高くないのではないか、と現状では思われる。仮に植田新総裁の初回となる4月の会合でそうした政策の修正を行えば、植田新総裁はその先、立て続けに政策修正を打ち出すとの観測を市場で高め、金融市場の混乱を引き起こす可能性があるからだ。

植田新総裁は、市場との対話を重視する考えを強調しているが、初回の会合で政策を修正するのであれば、その可能性を事前に市場に織り込ませる余裕はない。この点から、YCCの柔軟化は、最短で6月の会合で実施されると見ておきたい。4月の決定会合では、先行きYCCを柔軟化する可能性を示唆するに留めるのではないか。

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