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SVB破綻でFRBが自己の責任を認める調査報告書を発表:動き出した銀行監督、規制の強化

2023/05/01

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SVB破綻の4つの原因

4月28日に米連邦準備制度理事会(FRB)は、3月に破綻したシリコンバレーバンク(SVB)に対する監督、規制に関する調査結果を発表した。SVBの経営の問題、トランプ政権時代の規制緩和の弊害に加えて、規制当局の対応が不十分であることを真摯に認める異例の内容となった。この報告書は、SVBの破綻を個別の問題として整理するのではなく、新たな監督強化、規制強化を進める起点となるだろう。

同報告書は、FRBのSVBに対する監督に関わる内部情報、監督結果、問題点の指摘などを含む2ダース以上のドキュメントからなる。SVBの破綻時には、FRBが指摘した監督上の勧告について、対応がなされていないものが31残されていたという。これは、通常の銀行の3倍にあたる。

同報告書は、SVBの破綻の原因を以下の4つに整理している。第1に、SVBの経営陣はリスク管理に失敗した。第2に、FRBは、SVBが規模と複雑さを拡大させる中、その脆弱性が強まっていることを十分に認識しなかった。第3に、FRBがSVBの脆弱性を認識した際に、SVBが問題を迅速に解決するように促す十分な対応を講じなかった。第4に、経済成長法、規制緩和法、消費者保護法へのFRBの対応が規制基準を低下させ、複雑さを増し、消極的な監督アプローチを促進することによって、効果的な監督を妨げることになった。

このうち第1が、SVBの責任、第2と第3がFRB自身の責任、第4が前トランプ共和党政権の責任を問うものとなっている。

銀行規制、監督強化が本格化

同調査を指揮したFRBのバール副議長は、SVBの破綻を教訓にして、FRBは監督と規制を強化させる第1歩としなければならない、と強い決意を示している。また、パウエル議長は、バール副議長によるこの自己批判的(self-critical)な報告書を歓迎するとともに、FRBのルール、監督慣行を見直すとする、バール副議長の提案に賛成する考えを示している。

同日には会計検査院(GAO)も報告書を出している。そこでは、金融当局は過去数年、破綻した2つの銀行について問題点を指摘していたが、監督を強化しなかったとその対応の問題を指摘している。

バール副議長は、総資産1,000億ドル以上の中堅行への規制を幅広く見直す方針を示すとともに、2つの銀行破綻で注目された預金保険の対象外となる2万5000ドル以上の預金の扱いを再検討する考えを示している。

先月の銀行破綻を受けて、銀行システムの安定性確保に向けた新たな規制、監督強化への動きが本格的に動き出した感がある。またそれは、金融システムの脆弱性のもう一つの注目点であるノンバンクの規制、監督強化の動きと並行して進められるだろう(コラム「ファンド危機に備え始めた米金融当局:トランプ時代のノンバンク規制緩和を修正へ」、2023年4月28日)。

(参考資料)
"Federal Reserve Board announces the results from the review of the supervision and regulation of Silicon Valley Bank, led by Vice Chair for Supervision Barr", FRB, April 28, 2023
"Fed Says It Failed to Act on Problems That Led to Silicon Valley Bank Collapse", Wall Street Journal, April 28, 2023

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