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ウクライナ問題でG7広島サミット首脳声明:ロシアへの6つの制裁強化

2023/05/22

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注目を集めたG7広島サミット

G7広島サミットが5月19日から21日まで開かれた。ロシアによる核使用の脅威が高まるなか、被爆地・広島で開かれるG7サミットの意義は大きかった。さらに、ウクライナのゼレンスキー大統領が広島を訪れ、サミットに参加したことで、世界の注目は高まった。

初日19日午後のセッションでは、デジタル、貿易を含む世界経済とウクライナ問題が議論された。ウクライナ問題については、討議直後に首脳声明が出されている。

そこでは、「ロシアの違法、不当、いわれなき侵略戦争に対して団結して立ち向かう」、「ロシアによる国連憲章の明白な違反を最も強い言葉で非難する」とロシアを強く非難するとともに、ロシアに対する制裁措置の強化も謳われた。今後の世界経済や金融市場にも影響を与えるテーマであるため、特に注目しておきたい。

対ロシア経済制裁措置の6つの強化策

制裁強化については、6つの分野が打ち出された。第1に、ロシアが先進国の製品を入手することを一層制限する。従来、ロシアの軍事産業基盤の鍵となる部門を直接支える製品は輸出規制の対象としてきたが、さらにウクライナ侵略にとって重要なすべての先進国の製品が、ロシアに手に渡らないように自ら管理する。

第2に、それらの先進国の製品が第3国などを通じて迂回輸出されることを防ぐため、第3国に働きかける。

第3に、第3国などに対してロシアのウクライナ侵略を直接助ける物的支援を直ちに停止するよう求め、そうしなければ深刻なコストに直面することとなることを、改めて表明する。

第4に、ロシアに対する金融制裁を強化する。第3国を通じて、ロシアの銀行が制裁を逃れて国際決済を行うことを阻止する。

第5に、ロシアからのエネルギー輸入禁止、ロシア産原油及び石油精製品の上限価格措置などの今まで取られてきたエネルギー分野での制裁を強化し、ロシアのエネルギー収入や将来の採掘能力を制限する措置を講じる。

第6に、ロシアがダイヤモンドの輸出から得ている収入を減らすために、ロシアで採掘、加工、生産されたダイヤモンドの取引及び使用を制限するために引き続き緊密に協力する。

制裁効果を高めるには「グローバルサウスの取り込み」が必要だが。。。

米国財務省は18日に、G7広島サミットに合わせて、先進国が導入した対ロシア制裁措置である「ロシア産原油輸出価格上限設定」に関する報告書(The Price Cap on Russian Oil: A Progress Report)を発表した。同措置は、ちょうど1年前のG7サミットで議論が始まり、半年前の昨年12月に導入されたものだ。

このロシア産原油輸出価格上限設定については、ロシア産原油価格の下落を通じて、ロシアの財政収入を大きく減らすなど、期待された効果が発揮されていると言えるだろう。

しかしそれ以外について、今まで講じてきた対ロシア経済制裁措置が、ロシアの戦争継続能力を低下させることに十分な効果を発揮していないことに先進国は強い不満を抱いている。第3国経由の迂回貿易などを通じて、制裁の効果が減じられてしまっているからだ。

制裁効果を高めるには、第3国の協力が欠かせない。そこでこの声明でも、第3国に協力を求めるとともに、迂回輸出に手を貸さぬよう脅している側面もある。

しかし、先進国が対ロシア経済制裁措置で第3国の協力を得てその効果を高めるには、決め手を欠いているのが現状だ。そこで、そうした第3国、いわゆる中立的な途上国である「グローバルサウス」を先進国側に取り込んでいくことが重要な戦略となる。今回のサミットを特徴づける最も重要なテーマは、この「グローバルサウスの取り込み」といえるのではないか(コラム「G7サミット改革私案」、2023年5月18日)。

しかし、ロシアあるいは中国も「グローバルサウス」を自らの陣営に取り込もうと躍起であり、そのために金融支援も提供している。こうした中、先進国の「グローバルサウスの取り込み」も難航しているのが現状だろう。

そのもとでは、対ロシア経済制裁の有効性も思うように高まらない状況が今後も続くのではないか。

(参考資料)
ウクライナに関するG7首脳声明」、2023年5月19日、外務省

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