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サプライズなしのFRB利上げ再開(7月FOMC):注目は9月FOMCでのFF金利見通しに

2023/07/27

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FRBは利上げ再開もサプライズはなし

米連邦準備制度理事会(FRB)は、7月25・26日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.25%の利上げ(政策金利引き上げ)を全会一致で決めた。政策金利(FF金利誘導目標)は5.25%~5.5%と22年ぶりの高水準となった。

FRBは前回6月のFOMCでは、昨年3月から毎会合実施してきた利上げを見送る決定をしたが、労働市場の逼迫が続く中、物価上昇率は低下しているとはいえFRBの目標値である2%まではなお遠いことから、今回利上げの再開を決めた。前回6月のFOMCでは、参加者は年内に0.25%の利上げを2回実施する見通しを示していた。これに従えば、年内の残り3回のFOMCの中で、1回の追加利上げが実施される可能性が見込まれる。

今後の金融政策運営についてパウエル議長は、「引き続きデータ重視のアプローチで臨む」とした。そのうえで、FOMCが1回おきの会合で利上げを実施するのかどうかも含め、先行きの政策については何も決定しておらず、次回9月のFOMCで利上げを実施する可能性も実施しない可能性もともにある、と語った。

また議長は、米国経済が景気後退を回避してソフトランディング(軟着陸)する確率が高まっていると先行きの経済に対する自信を深めるとともに、年内に利下げに転じる可能性が低いことを改めて強調した。

政策決定、声明文、パウエル議長の発言を含め、今回のFOMCでは異例なほどサプライズはなかった。金融市場の関心は、次回9月のFOMCで追加利上げがあるかどうか、さらに、FF金利の年内残り1回の引き上げというFOMC参加者の見通しが維持されるかどうかに移っている。

来年には本格的な利下げの可能性も

FF金先市場は次回9月を中心に、年内1回の追加利上げを予想している。さらに、年内の利下げはなく、来年に合計1.5%の利下げを予想している。

筆者は、9月の追加利上げの実施についてはなお不確実ながらも、年内にあと一回の利上げが実施された後、政策金利は据え置かれ、来年には利下げが実施されると予想する。

ただし、金融市場は来年以降の利下げも比較的小幅にとどまり、FF金利は4%台程度までしか下がらないと予想しているが、筆者はより大幅な利下げに発展すると見る。その場合、10年国債利回りが現状の4%程度で留まることはなく、来年にも3%程度まで低下する可能性を見ておきたい。

インフレ期待の低下が生む実質的な利上げ強化の効果

米国では物価上昇率の低下傾向が明確になってきた。これが、金融市場で、FRBの利上げ打ち止めに近いとの期待を高めるとともに、米国経済がソフトランディングに向かう、との楽観論を強めている。26日ダウ平均株価が、1987年以来約36年ぶりとなる13営業日続伸となった背景もここにある。

しかし、米国経済については、物価上昇率の落ち着きが見られ始めてから、むしろリスクが高まるという面があるのではないか。物価上昇率が低下してきていること自体が、金融引き締めによる景気減速の表れとも言える。また、FRBが物価高に対する警戒を容易に解かない中で、景気の減速が明確になれば、金融市場、企業、家計の中長期のインフレ期待はさらに低下していく。その結果、実質金利(名目金利―インフレ期待)は上昇し、それが経済活動を抑制する。

つまり、FRBの利上げが最終局面に近づく中、物価上昇率の落ち着きが見られるようになり、中長期のインフレ期待が低下する局面で、実質金利は上昇し、事実上の金融引き締め効果が強化されるのである。

FRBの利上げも米国経済の状況も微妙な局面に入ってきた。年内かどうかはなお不明であるが、少なくとも来年には米国経済が景気後退に陥り、金融市場が現在想定しているよりも本格的な金融緩和が実施されると見ておきたい。それは米国の長期金利を大きく押し下げるとともに、急速な円高ドル安の巻き戻しを生じさせるだろう。

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