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深まる中国シャドーバンキング(影の銀行)の問題

2023/08/18

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信託会社・中融の問題は当初考えられていたよりも深刻

中国の不動産不況が、金融セクターに波及し始めている。現在、その中心にあるのが、銀行ではない金融機関・商品、「シャドーバンキング(影の銀行)」である。その中でも、現在特に注目を集めているのが信託業界だ。中国最大級の資産運用会社の一つである中植企業集団の傘下にある、信託会社・中融が組成した高利回りの信託商品でデフォルト(債務不履行)が生じたと、顧客3社が11日に明らかにした。中融は中国で9番目に大きな信託会社である。

その後、中融が明らかにしたところでは、同社は8月8日に信託商品の支払いができなかっただけでなく、7月下旬から少なくとも他に10件の支払い遅延が生じている。少なくとも30商品の支払いが滞っているという。

またデータプロバイダーのユーストラストによると、中融には今年満期を迎える総額395億元(約7,900億円)の高利回り商品がまだ270本あることから、今後支払いが滞る商品は急速に増えていく可能性が高い。当初考えられていたよりも、事態が深刻であることが次第に明らかになってきた。

不動産セクターは銀行借り入れから信託商品からの資金調達にシフト

中国信託業協会によると、国内信託会社の資産は今年3月時点で約2兆9,000億ドル(約422兆円)に上り、このうち約72%は、富裕層や企業に投資商品を販売する融資信託が保有している。

2019年半ばには、この融資信託の資産の約15%が不動産に投資されていた(コラム「高まる中国信託商品のリスク」、2019年7月16日)。その比率は、2019年以降62%減少し、今年3月時点でわずか7.4%まで低下したとされる。

しかし実際には、融資信託の投資先は明確には分からないようだ。迂回されて不動産セクターに投資される部分もかなり多い可能性がある。ちなみに、大きな問題を抱える地方融資平台(中国の地方政府傘下にある投資会社)への投資の数字も明らかにされておらず、数字の透明性は低い。

政府が不動産デベロッパーへの銀行融資を規制し始めてからは、不動産デベロッパーは規制の緩い信託からの資金調達を増やした可能性がある。一種の規制逃れである。そこで、中融信託など「中植系」信託会社は、資金供給で大きな役割を果たしたとみられる。そのため、不動産市場が調整し、不動産デベロッパーの経営が揺らぐと、信託商品の投資のパフォーマンスが悪化し、支払いが滞ることになる。

信託商品も政府の「暗黙の保証」で価格が歪められている可能性

信託商品に富裕者や金融機関のお金が集まった背景には、庶民が保有する傾向が強い投資信託の一種である理財商品と同様に、「暗黙の保証」という問題がある。多くの信託会社は地方政府や国有企業が株主になっており、一部の融資は地域のインフラ計画を支えている。そのため、信託商品には政府による暗黙の保証が付いている、とみなされることが多い。

そのため、信託商品の投資家は、高い運用利回りを享受する一方、投資リスクを十分に把握していないことが考えられる。このことが、信託商品の価格を歪めている面があるだろう。また信託商品の価格が元本割れをし、またデフォルトを起こした際には、それが社会問題化しやすい背景にある。

景気減速、不動産市場の調整をきっかけに信託商品の価格が大幅に低下すれば、それに投資する金融機関では損失が発生し、金融システムを不安定化させる可能性がある。また、信託商品の解約が急増し、それに応じきれない信託会社の破綻が相次げば、信託会社からの資金調達に依存する企業の経営が一気に行き詰まり、実体経済に大きな打撃となる事態も生じ得よう。

(参考資料)
「不動産危機、影の銀行に波及 信託商品の投資家が異例の抗議(2) (金融・保険・証券)」、2023年8月18日、ChinaWave経済・産業ニュース
「中植企業集団が債務再編計画、「流動性危機」と投資家に説明」、2023年8月17日、ロイター通信ニュース
「中国版「リーマン・ショック」懸念 中融信託、3500億元支給中断(2) (金融・保険・証券)」、2023年8月18日、ChinaWave経済・産業ニュース

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