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政府はガソリン補助金延長と経済対策の2段階実施へ:ガソリン補助金延長で物価は0.27%低下、実質個人消費は0.13%上昇

2023/08/23

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ガソリン補助金制度延長へ

岸田首相は22日に、ガソリン価格の上昇を抑制する補助金制度を、8月中にまとめるよう自民党の萩生田政調会長に指示した。さらに首相は、「様々な物価の状況も見ながら、経済対策を9月に考えたい」とも述べている。ガソリン補助金の延長と新たな経済対策が、2段階で実施される可能性が高まっている。

2022年年初に始まったガソリン補助金制度については、昨年に原油価格がピークを付けたことなどから、政府は今年の9月に終了する予定とし、6月から補助金を段階的に縮小してきた。

しかしそれによるガソリン価格の上昇を受けて、国民の間で先行きのガソリン価格上昇に対する警戒感が予想以上に強まり、世論に突き動かされる形で、政府はガソリン補助金制度廃止の見直しを強いられる方向だ。実際、補助金制度が10月以降も延長される可能性は高まったと言える。

ガソリン補助金延長の財源には、予備費が用いられる可能性が高い。2023年度予算で予備費は5.5兆円計上された。そのうち4兆円が、新型コロナウイルス対策や原油・物価高対策を目的にしたものだ。しかし、国会の承認を必要としない予備費の活用には、国会及び国民の監視が及ばない予算執行、という問題点がある。

さらに自民党内では、ガソリン価格が3か月連続で1リットル160円を超えた際にガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結を解除する案も出ている。ただし、それは臨時国会での法改正が必要になるため、当面のガソリン価格上昇への対応とはならない。また、東日本大震災の復興財源の確保が困難になるとの理由で過去にトリガー条項を凍結した経緯があるが、現状でトリガー条項の凍結を解除すれば、財政環境が厳しい中でさらに税収を減らしてしまうという問題点もある。

ガソリン補助金延長で物価は0.27%低下、実質個人消費は0.13%上昇

ガソリン補助金が延長される場合に、どのようなスキームとなるかはまだ分からないが、従来のように、補助金を通じて全国の平均価格を一定程度の水準に抑える施策となる可能性が高いのではないか。

補助金が予定通りに廃止される場合には、10月時点でガソリン価格は199円程度になると推定される(WTI価格81ドル/バレル、1ドル145円の前提)。これを再び170円程度に下げる場合、消費者物価は0.27%低下する計算だ。また延長された補助金制度が1年続く場合には、実質個人消費を1年間で+0.13%押し上げる計算だ(内閣府短期日本経済マクロ計量モデル・2022年版)。

他方、1月に導入した電気代、ガス代の補助金制度も延長される場合、現在の予定通り9月に終了する場合と比べ、消費者物価は0.99%低下する。これは実質個人消費を1年間で+0.47%押し上げる計算だ。

両者を合計すれば、消費者物価への影響は-1.26%、実質個人消費への影響は1年間で+0.59%となる。物価押し下げ効果や消費押し上げ効果は相応に期待できるが、以下に見る様々な副作用、問題点との比較でその妥当性を判断せねばならない。

ガソリン補助金制度を弱者支援の制度に転換することも検討すべき

ガソリン補助金の延長は、ほぼ決まった感があるが、実際にはなお慎重な検討を期待したい(コラム「ガソリン価格は8月末に196円、9月末に199円と推定:それでもガソリン補助金延長の議論は慎重に」、2023年8月16日)。

ガソリン補助金制度には3つの大きな問題点があり、長期化するほどその問題は大きくなる。第1は、市場価格を歪めてしまうこと、第2に、脱炭素社会実現の政策方針と矛盾してしまうこと、第3に、財政負担が膨らむことだ。

ガソリン補助金制度で既に4兆円規模の財政資金が投入されたとみられる。延長されれば財政負担はさらに膨らむ。補助金によって国民が助かると感じていることは確かであるが、その財源は税金や国債発行によって賄われており、結局は国民の負担である。本当の意味では、国民は助かっていないことになる。広く国民から資金を徴収して広く国民にばらまくような施策に、あまり付加価値はないのではないか。

また、海外での原油先物価格が昨年の1バレル120ドル程度から足元で80ドル程度まで大きく下がる中でガソリン補助金の延長を決めれば、この先は、何を基準に補助金を廃止するのかが分からなくなってしまう。出口が見えなくなるのである。

さらに、一時的な外需の改善によるところが大きいとはいえ、4-6月期の実質GDPが年率+6.0%の高成長となる中で、ガソリン補助金の延長や新たな経済対策を実施しなければならない根拠は乏しいのではないか。

それよりも、現在の物価高対策を、電気・ガス料金の補助金制度も含めて、価格上昇によって特に打撃を受ける低所得層や零細企業に絞った、セーフティネットの施策へと転換していくことが望ましいのではないか。例えば、所得制限を付けた給付金制度などが考えられるだろう。それであれば、価値のある政策と言える。

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