フリーワード検索


タグ検索

  • 注目キーワード
    業種
    目的・課題
    専門家
    国・地域

NRI トップ ナレッジ・インサイト コラム コラム一覧 デフォルトの瀬戸際に追い込まれる中国不動産大手の碧桂園:恒大は理財商品がデフォルト

デフォルトの瀬戸際に追い込まれる中国不動産大手の碧桂園:恒大は理財商品がデフォルト

2023/09/01

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

碧桂園は債務再編交渉を再度延期

経営危機に陥っている中国の大手不動産デベロッパーの碧桂園(カントリー・ガーデン)は、社債の返済時期を遅らせるなどの債務再編(債務リストラ)交渉の延期を繰り返している。同社初となる債務不履行(デフォルト)の回避に向け、瀬戸際の対応を続けているのである。

同社は39億元(5億3,730万ドル)の人民元建て社債の返済を巡る幾つかの提案について、8月31日を社債の保有者による投票期限としていたが、その期限を9月1日の現地時間夜10時に延期した。延期はこれで2回目となる。

この39億元の人民元建て社債は、9月4日に事実上の償還期限を迎える。償還のための資金確保に苦慮する碧桂園は、支払期限を3年延長する提案をしている。また、40日間の支払い猶予も提案している。

一部の社債保有者からは、満期での全額返済を求める提案も出されており、多くの提案が採決にかけられる。また、その人民元建て債の10.5%を保有している投資家グループは、碧桂園が正式にデフォルトを宣言する提案をしている。デフォルトを宣言することで、債権者に対する部分的な返済に向けた交渉を前に進める狙いがあるのだろう。

碧桂園はデフォルト格付けまであとワンノッチ

デフォルト宣言提案が出されるきっかけとなったのは、碧桂園の大幅赤字決算の発表と、大手格付会社による格下げである。

碧桂園が8月30日に公表した2023年1~6月期の決算で、純損益は489億元(約9,800億円)の赤字だった。前年同期である2022年上期の6億1,200万元の黒字、2022年下期の67億元の損失と比べ、損失額は急速に拡大している。保有する不動産価格の下落による評価損拡大の影響が大きい。

碧桂園はこの決算資料で、「重要な不確実性」によって、企業の存続に疑義が生じるとデフォルトのリスクを指摘している。さらにこの決算を受けて、米格付大手ムーディーズは8月31日に、碧桂園の信用格付けを、投機的とされる「Caa1」から、さらに3段階引き下げて、デフォルトに近い「Ca」とした。また、先行きについても、引き下げの可能性のある「ネガティブ」とし、さらに1段階下で、デフォルトに陥っているとされる最低評価の「C」にまで格下げする可能性を示唆した。碧桂園は、まさにデフォルトの瀬戸際まで追い込まれている。

また、碧桂園は、8月上旬に2つのドル建て債の利払いをできなかった。現在は30日の猶予期間中であるが、猶予期間の終了日である9月5日あるいは9月6日には、ドル建て社債のデフォルトが確定する可能性もある。

恒大の理財商品がデフォルト

他方、恒大集団は8月31日に、手元資金不足のため8月の理財商品(投資信託の一種である資産運用商品)の支払いができなかった、と投資家に通告した。不動産価格下落の影響もあり、資産処分が進捗していないことが深刻な資金不足を生んでいる。2021年にも恒大は、400億元(約8,020億円)相当の理財商品の償還ができず、全国規模の抗議行動が巻き起こった。

同社は8月末に予定していたドル建て、香港ドル建て債の再編を巡る債権者との会合を延期している。長引く経営再建プロセスの先行きは、さらに不透明となってきた。

深まる中国シャドーバンキング(影の銀行)の問題

中国の不動産不況は、金融セクターに波及し始めている。現在、その中心にあるのが、銀行ではない金融機関・商品、「シャドーバンキング(影の銀行)」である(コラム「深まる中国シャドーバンキング(影の銀行)の問題」、2023年8月18日)。

中国最大級の資産運用会社の一つである中植企業集団の傘下にある、信託会社・中融が組成した高利回りの信託商品でデフォルトが生じたと、顧客3社が8月11日に明らかにした。中融は中国で9番目に大きな信託会社である。

そして、今回恒大は再び理財商品のデフォルトを起こした。より一般国民に浸透している、いわば本丸の理財商品にも不動産不況の影響が再び及んできているのである。こうしたシャドーバンキングの問題は、資金ひっ迫傾向を助長し、それが経済や不動産市場のさらなる悪化をもたらすという悪循環を生みやすい。

2021年の恒大問題の表面化から2年以上が経過し、不動産市場は再び悪化の度を強めている。中国経済は2年前と比べても脆弱性を高めており、不動産分野の問題は、中国経済と金融分野により大きな影響を与える可能性が高まっている。

(参考資料)
「碧桂園、元建て社債保有者の投票期限また延長-現地9月1日午後10時」、2023年8月31日、ブルームバーグ
「中国恒大、理財商品の支払いできず-資産処分進まず手元資金不足」、2023年8月31日、ブルームバーグ

執筆者情報

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

新着コンテンツ