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追加利上げの有無から利下げ時期とペースに焦点が移る(9月FOMC)

2023/09/21

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年内1回の追加利上げの見通しが示される

米連邦準備制度理事会(FRB)は19、20日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、大方の予想通りに政策金利の据え置きを決めた。他方、来年の政策金利の見通しについては、大きく上方修正された。来年に予想される利下げの幅が大きく縮小されたのである。これは、物価安定回復、物価目標達成に向けたFRBの強い姿勢を表す、タカ派的なメッセージとなった。

「適切となり得る追加的な金融引き締めの程度を決定する」との前回の文言が繰り返されるなど、声明文からは政策姿勢の変化は感じられない。また、パウエル議長は記者会見で、「インフレ率を2%へと押し下げるうえで十分に景気抑制的な金融政策スタンスを達成し、それを維持することにコミットしている」と述べ、政策の柔軟性とともに物価安定回復に向けた強い姿勢を改めて示した。

利上げは前回7月が最後であった可能性を見込む向きも一部にあるが、今回示された政策金利(FF金利)の見通しは、そうした期待に修正を迫るものとなった。FOMC参加者19人のうち12人と大半は、年内に0.25%の政策金利引き上げを予想したのである。

年内のFOMCで追加利上げが実施されるとすれば、そのタイミングは11月1日、12月13日の2回である。次回FOMCまでにコアCPI、コアPCEなどで基調的な物価上昇率が再加速するようであれば、11月1日に0.25%の追加利上げが実施されるだろう。一方、基調的な物価上昇率の緩やかな低下傾向に変化が見られないようであれば、12月13日に追加利上げが実施されることになるだろう。

会合ごとの連続利上げから、現状は1会合おきでの利上げのペースに既に転じている。最後は2会合空けた利上げで打ち止めとするのが、自然な形での利上げ局面のフェードアウトとなるのではないか。

来年の利下げ幅見通しを1.0%から0.5%に大幅修正

今回のFOMCで最も注目されたのは、2024年の政策金利の見通しだ。前回6月時点では、来年末の政策金利の予測の中央値は4.6%であったが、それが今回5.1%に引き上げられた。来年1年間での利下げ幅の見通しが、1.0%から0.5%に縮小されたことを意味する。恐らく金融市場は、0.75%までの利下げ幅の修正は予想していたと思われるが、0.5%は予想外だっただろう。そのため、この見通しは、FRBの強いタカ派的なメッセージとなったのである。

FOMCの見通しの中で注目されるのは、2023年、2024年の物価見通しについては、今回は大きく修正されなかった一方、成長率見通しが大幅に上方修正されたことだ。来年の利下げ幅見通しの大幅縮小は、この景気判断の上方修正を受けたものである。FRBは、先行きの景気に自信を深めている。

政策金利引き上げが最終局面にあるという認識は、FRBと金融市場で共有されている。そうした中、長期金利に大きな影響を与え、それを通じて株式、為替を動かしうるのは、来年の利下げの時期とペースである。FRBによる金融市場の政策期待のコントロールも、追加利上げの有無から来年の利下げ開始の時期その先の利下げのペースへと移ってきた。

FRBの余裕のある政策姿勢はいつまで続くか

利上げは最終局面にある可能性は高いとはいえ、この先のFRBの金融政策については、なお不確実性が高い状況だ。基調的な物価上昇率の再加速が続けば、次の利上げが最終とはならない可能性も残されている。一方、景気情勢が来年に入ってから予想外に下振れれば、想定以上に大幅な利下げが実施され、長期金利、ドルともに大きく低下する可能性がある。

他方で、基調的な物価上昇率の再加速する一方、景気情勢が悪化して、スタグフレーション的様相が強まる場合には、FRBの金融政策のかじ取りはにわかに難しくなり、またその場合、金融市場は混乱しやすくなる。

米国経済が今のように予想外に堅調なうちは、FRBは安心して、政策金利を高水準に維持し、物価安定回復に向けた強い姿勢を示すことができる。現在のFRBの政策姿勢には、かなり余裕がある状況だ。現状では、FRBの思い切った金融引き締め策は、うまくいっているように見える。

しかし今後の経済動向次第では、金融政策運営の難易度は一気に高まる。最終的に景気の悪化、金融システムの不安定化などが生じれば、FRBの政策手腕についても、一転して厳しい評価がなされていくことになるだろう。

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