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コアCPIは低下傾向を辿り年明けには2%に接近:賃上げの逆風に(11月全国CPI)

2023/12/22

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11月コアCPI上昇率は下振れ;輸入インフレの影響は薄れる

12月22日に総務省は、2023年11月分の全国CPI(消費者物価)を発表した。コアCPIの前年同月比は+2.5%と10月の同+2.9%を大きく下回り、2022年中頃の水準まで低下した。これは、概ね事前予想通りの結果だ。

前月比でエネルギー価格が下落したことが、コアCPIの前年同月比が11月に大きく低下したことの主因だ。この要因によって、11月の総合指数の前年同月比は、前月と比べて0.13%押し下げられた。

エネルギー価格は、海外でのエネルギー価格、為替動向、政府の補助金政策の変更などによって、毎月大きく振れる傾向がある。

他方、この先の物価のトレンドを見るうえで注目したいのは、生鮮食品を除く食料品価格の上昇ペースが着実に鈍ってきていることだ。11月分についても、それは総合指数の前年同月比を、前月と比べて0.18%押し下げている。生鮮食品を除く食料品価格の前年同月比は、8月の+9.2%から、11月は+6.7%まで低下してきた。食料品関連の輸入品の価格上昇を製品価格に転嫁する動きが一巡する中、海外での食料品市況が下落し、為替市場でも円安傾向に歯止めが掛かっていることから、この先も生鮮食品を除く食料品価格の上昇率は低下傾向を辿るだろう。

食料品に限らず、財の価格の上昇率は先行き着実に低下していくことが予想される。足もとの物価上昇率の上振れは、輸入物価の大幅上昇、いわゆる輸入インフレを起点にしたものだが、その輸入物価上昇率は、前年比で2桁ペースの下落が続いている状況だ。

物価上昇率が低下するなかで賃金の大幅加速は起こりにくい

財の価格上昇率の低下傾向が鮮明になる一方、宿泊費の上昇が11月の総合指数の前年同月比を前月と比べて+0.10%押し上げるなど、サービス価格の上昇率は引き続き上振れている。物価上昇率が高まる局面で、サービス価格の上昇率が財価格の上昇率に遅れて高まるのはよく見られる現象だ。しかし、この先、サービス価格の上昇率の高まりが、財の価格上昇率の低下を凌駕して、物価上昇率全体を再び高める可能性は高くないだろう。

2024年1月のコアCPIは前年同月比+2.2%~+2.3%まで低下し、2024年10月には+1%台にまで低下すると予想される(図表1)。

この先のサービス価格の動向に大きな影響を与えるのは、賃金の動向である。2024年の春闘でも賃金上昇率は高水準となることが予想されるが、2023年の水準から大幅に加速し、それがサービス価格及び物価上昇率全体に大きな上昇圧力をかけることは考えにくい。賃金上昇率を決める大きな要因である物価上昇率が低下することが、賃上げの逆風となろう。

2024年の春闘で主要企業の賃上げ率は、定昇込みの全体で+3.9%、ベアで+2.5%と2023年のそれぞれ+3.6%、+2%強をやや上回ると予想するが、大幅な加速は見込めない。さらに、物価上昇率が先行き一段と低下していく中で、2025年の賃金上昇率は、全体で+2%台後半、ベアで+1%台前半にとどまると現時点では見ておきたい。

輸入インフレを起点とする物価上昇が、賃金上昇を伴う持続的な物価上昇へと転化していき、日本銀行が指摘する、いわゆる「第1の力」から「第2の力」へと橋渡しされていく中で、2%の物価目標達成が見通せるようになる可能性は低いだろう。また、一般に言われる賃金上昇率と物価上昇率が相乗的に高まる、「物価と賃金の好循環」が実現する可能性は低いものと考える。

 

(図表1)コアCPIの見通し

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