11月FOMCのMinutes- Move gradually
はじめに
25bpの利下げを決定した11月のFOMCでは、インフレ目標への収斂に対する自信を共有したほか、景気の下方リスクも幾分後退したとして、金融引締めの解除を緩やかとする考えが共有された。
物価情勢の評価
FOMCメンバーは、インフレ率がピーク比でかなり減速したことを確認したほか、殆ど全員(almost all)が足元の指標はインフレ目標への収斂と整合的と評価した。
内容面では、コア財と住宅を除くサービスのインフレ率が以前の物価安定期並みになった点を確認したほか、多く(many)のメンバーが、消費者はより価格感応的になったため、企業が価格引上げにより消極的になったとの報告と整合的と指摘した。
今後については、2%インフレに向けた持続的な動きに自信を維持した。ただし、2名(a couple of)のメンバーは達成に想定以上の時間を要するとした一方、2名(a couple of)のメンバーは供給要因の改善に起因する実質成長率の強さはインフレ圧力にならないとした。その上でFOMCメンバーは、インフレ減速要因として、価格設定力の低下、金融引締め、インフレ期待の安定を挙げた。
また、数名(several)のメンバーが賃金上昇の減速を指摘し、転職に伴う賃金プレミアムの縮小を指摘したほか、数名(some)のメンバーは、労働需給は概ね均衡し、生産性の上昇の下で近い将来に賃金上昇がインフレ圧力となる可能性は低いとした。
経済情勢の評価
FOMCメンバーは、ストライキやハリケーンによって足元の指標が不安定化しているが、労働市場が依然として強いとの見方に概ね合意した。
内容面では、未充足求人の減少、離職率や転職率の低下が労働需要の緩やかな減少と整合的としたほか、数名(some)のメンバーは、良質な求職者の存在や求職者の要求する労働条件の緩和の下で、企業が雇用に選択的になっていると指摘した。もっとも、幅広い(generally)メンバーは、lay offが低い点を挙げ、労働市場が急速に悪化する兆しはないとした。
その上で、数名(some)のメンバーは、移民の影響や統計の改定、自然災害やストライキ等のため、労働市場の基調を評価するのが困難になっているとした。それでも、幅広い(generally)メンバーは、現在の労働市場が最大雇用の実現という政策目標と概ね一致すると評価した。
今後についても、幅広い(generally)メンバーは、金融政策の適切な調整の下で、労働市場の強さが維持されるとの見方を示した。数名(some)のメンバーは労働市場の悪化のリスクが大きいと指摘したが、多く(many)のメンバーは、労働市場の過度な減速のリスクは9月FOMC以降に幾分低下したとの見方を示した。
経済活動については、FOMCメンバーは概ね(largely)想定以上に強いと評価した。
なかでも消費の強さを確認し、労働市場の強さや実質賃金の増加、高水準の家計資産を背景として指摘した。また、多く(many)のメンバーは、家計所得と貯蓄の統計の上方改定によって、これらの指標が消費の強さと整合的になったと説明した。もっとも、数名(several)のメンバーが中・低所得者における金融面でのストレスを取り上げたほか、2名(a couple of)のメンバーは消費者信用の延滞増加に言及した。
この間、企業については、数名(a few)のメンバーが、労働供給や設備投資、生産性といった供給要因の改善が企業活動のt殻強い拡大を支えていると指摘した。このうち生産性の上昇については、数名(a few)のメンバーが既往の雇用増加の調整ないし労働投入の過小評価といった一時的要因によるとの見方を示したのに対し、数名(some)のメンバーは起業や設備投資、ITの導入といった持続的な要因を挙げた。
その上で、数名(several)のメンバーは、管轄地区の大企業や金融サービスや建設、専門的サービス、IT等の企業の間では、中小企業や製造業の企業に比べて、概して(generally)より楽観的な見通しにあると報告した。
先行きのリスク
FOMCメンバーは、インフレの上方リスクには変化がないが、雇用や景気の下方リスクは幾分(somewhat)減少したと評価し、ほとんど全員(almost all)がdual mandateの達成に向けたリスクは上下に概ねバランスしていると評価した。
インフレについては、地政学的リスクによるサプライチェーンの分断、金融環境の緩和、消費の拡大、住宅価格の高止まり、各種保険料といった上方要因を挙げた。景気については、数名(some)のメンバーが、世界経済の減速、地政学的緊張や資産価格の調整による金融環境のタイト化、労働市場の悪化といった下方リスク要因を挙げた。
金融政策の運営
これらの議論を踏まえて、FOMCメンバーは25bpの利下げを全会一致で決定した。その上で、今後のデータがインフレ率の2%目標への持続的収斂と最大雇用の維持と整合的である限り、金融政策をより中立的なスタンスに向けて時間をかけて緩やかに調整していくことが適当との理解を示した。
その上で、今後の政策判断には予定されたパスはなく、景気動向やそれらの経済見通しへの意味合い、リスクバランスに基づいて政策を決定する方針を確認したほか、足元の経済指標の不安定化を踏まえ、景気の基調に焦点を置くことの重要性も確認した。
リスクマネジメントの観点では、殆ど全員(almost all)が、 デュアルマンデートの達成に向けたリスクは上下に概ねバランスしているとし、数名(some)のメンバーは、景気や労働市場の悪化のリスクは減退したとの見方を示した。
また、金融引締めの解除が早すぎる場合と遅すぎる場合の双方のリスクを確認した上で、数名(some)のメンバーはインフレが高止まりした場合は利下げを停止すべきと主張した一方、数名(some)のメンバーは労働市場や景気が悪化した場合には利下げを加速すべきと主張した。
最後に、多く(many)のメンバーは、中立金利の水準に関する不透明性のため金融引締め度合いの評価が難しくなっているとし、従って、金融引締めの解除は緩やかにすべきとの考えを示した。
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