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グーグルがクッキー廃止に向け一部制限を開始

2024/01/19

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クッキーのメリットとデメリット

米アルファベット傘下のグーグルは1月4日に、自社ブラウザー「クローム」のユーザの1%に対して、クッキー(Cookie)を制限するテストを開始した。今年の年末までには、全ユーザについてクッキーを廃止する予定だ。

クッキーは、ユーザがWebサイトにアクセスした際に付与されるテキストファイルのことで、そこにはユーザのログインIDやサイトへのアクセス履歴、訪問回数などの情報が一時的に保存される。

クッキーは、Webへのアクセスや操作を便利にしている。たとえばSNSなどでは、IDとパスワードを入力して一度ログインしたサイトについては、しばらくしてから再度アクセスする場合でも、IDとパスワードを再入力しなくても入ることができる。またショッピングサイトでは、再度アクセスした場合にもカートに入れた商品が消えずに残っている。

他方で、このようにユーザの利便性を高める役割を持つクッキーには、問題点も多く指摘されてきた。

クッキーでは、Web上の行動履歴から個人の趣味嗜好や購買動向の捕捉が可能となる。それらの情報が流出したり、売買されたりする危険性がある。消費者団体は、治療歴など重要な情報を含む個人のデータの収集に使用される可能性があり、プライバシーを侵害するものだと主張している。

また、そうした情報をもとに、一度検索した商品やキーワードに紐づいた過剰なパーソナライズ広告に追跡され、不快に感じるユーザもいる。

グーグルのクッキー廃止は広告仲介業者に大きな打撃

そうしたなか、過去数年間にクッキーを制限する動きが広がってきた。モジラやアップルは、それぞれのブラウザー「ファイアーフォックス」と「サファリ」でクッキーを制限するようになった。グーグルも2020年にクロームでクッキーを廃止する計画を打ち出したが、その後、たびたび計画を先送りしてきた。グーグルの動きが他社よりも遅れたのは、広告仲介業者からの強い反発に直面したためだ。

広告仲介業者は、マーケターの顧客絞り込みや広告の費用対効果の測定を支援する上で、クッキーに大きく依存している。分析企業スタットカウンターによると、クロームは世界のインターネットトラフィックの65%を占める最大のブラウザーだ。これは、サファリの3倍に上る。そのため、グーグルがクッキーを制限あるいは廃止する場合、年間6,000億ドル(約86.5兆円)のオンライン広告業界にとって、非常に大きな打撃となる。

デジタルマーケティング導入支援の米アップシティの調査によると、従業員が100人~数百人規模の中小規模の企業で87%が、サード・パーティ・クッキーが利用できなくなることに懸念を感じていると回答している。

サード・パーティ・クッキーとは、訪問したWebサイトのドメインが発行するクッキー、つまりファースト・パーティ・クッキーではなく、第三者ドメインから発行されるクッキーのことだ。Webサイトに掲載されている広告などから発行されることが多く、サイトを横断してユーザの追跡を行うことを可能とする。グーグルが廃止を計画しているのは、このサード・パーティ・クッキーである。

ネットビジネスの成長の壁に

グーグルはサード・パーティ・クッキーの代替手段として、閲覧者の興味がある分野のデータをグループ化してブラウザー内に保存し、個人を特定できない形で関心に応じた広告を配信する仕組みの開発を進めている。しかしこれが、グーグルのサード・パーティ・クッキー廃止によるネット広告事業への打撃をどの程度緩和するものであるかは明確ではない。

クッキーを利用して捕捉したユーザのWeb上での行動履歴に基づくターゲット広告などからの収入に強く依存してきたネットビジネスは、個人情報の管理、プライバシー保護の動きが強まる中、大きな成長の壁に直面している。

(参考資料)
"Google Is Finally Killing Cookies. Advertisers Still Aren’t Ready(グーグルのクッキー廃止、業界は対応追い付かず)", Wall Street Journal, January 5, 2024
「米グーグル、Chromeユーザの1%を対象にクッキー遮断を開始」、2023年12月25日、日経クロストレンド
「クリテオCTO クッキー廃止でも「広告の妥当性維持」」、2023年12月12日、日経産業新聞

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