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テイラー・スウィフトは米大統領選挙の行方を左右するか

2024/02/22

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バイデン大統領はテイラー・スウィフトの支持表明を期待するか

米人気歌手テイラー・スウィフトが米大統領選挙の行方に与える影響について、注目が高まっている。あるいは、テイラー・スウィフトが米大統領選挙を巡る民主党と共和党の争いに巻き込まれている、と言った方が正しいのかもしれない。

文化面で絶大な影響力を持つテイラー・スウィフトは、過去に民主党候補の支持を公言したことがある。2018年に米南部テネシー州の上院選で民主党候補を支持したほか、2020年の大統領選では、投票日の前日にインスタグラムに投稿した動画でバイデン氏支持を表明した。

彼女は女性の権利を擁護し、白人至上主義に反対し、またLGBT(性的少数者)コミュニティの権利擁護を掲げている。これらは、民主党のリベラル(左派)な考え方に近い。

ただし、彼女のファンはリベラル色が強い人々に限らない点が重要だ。昨年米調査会社モーニング・コンサルトが実施した調査によると、彼女の支持層は40歳未満と若年者に偏っているものの、そこには民主党支持者も共和党支持者もいる。また、高所得者と低所得者の双方に広がり、さらにあらゆる人種をカバーしている。そして、米大統領選の結果を左右する、郊外の住民の強い支持も得ている。

テイラー・スウィフトは、インスタグラムのフォロワー2億8,000万人を誇るなど、社会的な影響力がかなり大きい。昨年9月に自身のSNSで有権者登録を呼びかけた際には、3万5,000人もの新規登録があったという。このことから、彼女が前回同様に大統領選挙でバイデン大統領の支持を表明すれば、若年層を中心に相当数の票がバイデン大統領に流れる可能性がある。

イスラエルとガザの紛争で、イスラエル寄りの姿勢が若年層離れを引き起こす中、バイデン大統領は若年層の支持を高める戦略をとっている。2月11日に動画投稿アプリTikTokの公式アカウントを開設したのも、そうした戦略の一環だ。この点から、テイラー・スウィフトがバイデン大統領の支持を表明することを、バイデン大統領は望んでいる可能性がある。

広まるテイラー・スウィフトの陰謀論

一方で、共和党はテイラー・スウィフトがバイデン大統領の支持を表明することを強く警戒している。トランプ前大統領は11日に、テイラー・スウィフトがバイデン大統領を支持する選択肢は「あり得ない」とし、彼女を強くけん制した。トランプ大統領は自身の大統領時代に、著作権の規定を改めた音楽近代化法を「テイラー・スウィフトやほかすべての音楽アーティストのために」2018年に署名した実績を強調した。「大金を稼がせた男に対し、不誠実であるはずがない」としたうえで、「バイデンはテイラーのために何もしなかった。ひねくれたバイデンを支持するなどあり得ない」とした。

さらにトランプの支持者は、テイラー・スウィフトがバイデン大統領を再選させるための「陰謀」の一翼を担っている、という見方を世間で広めている。そうした戦略はかなり影響力を持ち、米モンマス大学が今月実施した世論調査では、テイラー・スウィフトがバイデン大統領を11月の大統領選で再選させる「政府の陰謀」に関わっているとの回答が、18%にも上った。

バイデン大統領は「バドライト現象」を警戒か

実際にテイラー・スウィフトがバイデン大統領の支持を正式に表明すれば、トランプ支持者らは、この陰謀論を一層喧伝し、彼女への攻撃を強めることになるだろう。共和党は今までも、著名人や人気商品に対して、人々の怒りをあおるキャンペーンを何度も繰り返してきた。

こうした点を踏まえ、テイラー・スウィフトがバイデン大統領の支持を正式に表明することを控える可能性があるだろう。またバイデン陣営も、彼女がバイデン大統領の支持を表明することが、むしろ再選の逆風となってしまうことを警戒している可能性がある。その背景にあるのが、昨年の「バドライト現象」である。

昨年、米国のビール「バドライト」の販売会社が、著名なトランスジェンダーのSNSインフルエンサーを広告に起用したところ、共和党の選挙陣営がこれに批判的な不買運動を起こした。その結果、バドライトの売り上げに大きな打撃となってしまった。同様のことが再び起こる場合、テイラー・スウィフトによるバイデン大統領の支持は、むしろバイデン大統領にとって逆風となってしまう可能性がある。

大統領選挙の行方を左右する可能性があるテイラー・スウィフトの影響については、現時点ではよく分からないというのが実態だろう。

(参考資料)
「バイデン氏、テイラー・スウィフトさん支持で有利なるか」、2024年2月10日、NIKKEI FT the World
「テイラー・スウィフトさん、保守派のリベラル攻撃の的に」、2024年2月5日、NIKKEI FT the World
「米大統領選:バイデン陣営、TikTok開設 若者浸透狙い「二重基準」批判も」、2024年2月14日、毎日新聞

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