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マイナス金利政策解除後の政策金利は何か?

2024/03/01

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日本銀行の政策金利の変遷

金融市場は、今年3月あるいは4月の金融政策決定会合で、日本銀行がマイナス金利政策の解除に踏み切る、との見方を強めている。さらに解除後に、現在の3層構造の日銀当座預金制度が見直されるのか、日本銀行は何を政策金利とするのか、といった点にも金融市場は大きな関心を寄せている。

かつて日本銀行は、銀行に資金を貸し出す際に適用される金利である「公定歩合」を政策金利としていた。その後日本銀行は、銀行間での資金融通を担うコール市場での「無担保コールレート(翌日物)」の金利を政策金利と位置づけ、銀行の資金需給の調整を通じて、その金利をコントロールした。公定歩合は無担保コールレート(翌日物)の上限を画す役割を担うようになり、現在、「基準貸付利率」と呼ばれている。

2008年10月には、補完当座預金制度が導入され、所要準備(法定準備預金額)を超える準備預金の保有に対して、日本銀行が利子を払うことになった。これが付利金利と呼ばれるものである。ただし、そのもとでも政策金利は無担保コールレート(翌日物)だった。

2016年2月に日本銀行がマイナス金利政策を導入する前には、この付利金利は+0.1%であり、そのもとで無担保コールレート(翌日物)の平均水準は+0.1%よりも低く0%に近いプラスの領域にあった。

マイナス金利解除後の短期金利水準

日本銀行の内田副総裁は2月8日の講演で、マイナス金利政策解除後の短期金利について思わせぶりな発言をし、金融市場に様々な憶測を生じさせている。それが以下のコメントである。

「まず、マイナス金利については、解除するとしてどのように短期の政策金利を設定するかという論点があります。マイナス金利の導入前には、日本銀行の当座預金取引先の超過準備に0.1%の金利を付利し、取引先でない金融機関との裁定取引が行われる結果、短期金融市場では、無担保コールレートが0~0.1%の範囲で推移していました。仮にこの状態に戻すとすれば、現在の無担保コールレートは-0.1~0%ですので、0.1%の利上げということになります。この点は、主として短期金融市場の機能をどう維持するかという論点です。」

政策金利(付利金利)0.2%ポイント引き上げ、コールレートは0.1%ポイント上昇

この発言から、マイナス金利政策解除後には、無担保コールレート(翌日物)を現状の-0.1%~0%から、マイナス金利政策導入前の0%~+0.1%へと0.1%ポイント引き上げることを日本銀行が意図している、と読むことができる。

ただし、現在-0.1%の政策金利(当座預金の政策金利残高に適用される付利金利)を0%まで引き上げた場合、無担保コールレート(翌日物)はほぼ0%に貼りつくことになり、日本銀行が意図するマイナス金利導入前の0%~+0.1%には戻らない。そこで、現在の政策金利(付利金利)を+0.1%まで引き上げることが必要となる。

無担保コールレート(翌日物)は、現在は政策金利(付利金利)を上回っているが、政策金利(付利金利)をプラスの領域に引き上げれば、両者の位置関係は逆転し、無担保コールレート(翌日物)は政策金利(付利金利)を下回ることになる。

こうした形で政策変更が実施される場合、日本銀行は、政策金利(付利金利)を0.2%ポイント引き上げるものの、銀行の資金調達コストに大きく影響する、いわば実効性の高い無担保コールレート(翌日物)は0.1%ポイント程度のより小幅な引き上げにとどまる、と説明するだろう。

無担保コール翌日物レートを政策金利とするのはかなり先

内田副総裁が講演で、無担保コールレート(翌日物)の水準を議論したことから、マイナス金利政策解除と同時に、政策金利を付利金利から無担保コールレート(翌日物)へと戻すのではないか、との見方が浮上している。

しかし、それは実際には難しいのではないか。巨額の超過準備の解消までにかなりの時間を要する中、仮に無担保コールレート(翌日物)の水準を政策金利と位置付けても、日本銀行が付利金利の変更を通じて無担保コールレート(翌日物)を特定水準に厳格に誘導することは難しいためだ。

巨額の超過準備が存在するもと、つまり量的緩和策が続く中では、無担保コールレート(翌日物)には強い下落圧力がかかり続ける。また、日本銀行の当座預金先ではない投資信託などのプレーヤーもコール市場に参加しているため、付利金利だけでは、無担保コールレート(翌日物)を思ったようにコントロールできないおそれがある。

そして、無担保コールレート(翌日物)を政策金利とし、その誘導目標を明示しても、実際にその水準に誘導できなければ、金融政策の有効性は損なわれ、日本銀行への信頼も低下してしまう。

国債保有残高の削減を進め、当座預金の水準が相当分低下してから、日本銀行は無担保コールレート(翌日物)の水準を政策金利と位置付けるものと見ておきたい。それにはまだ何年か時間を要するだろう。

マイナス金利政策解除時には現状の日銀当座預金の3層構造を維持するか

このように日本銀行は、マイナス金利政策解除時に、当座預金の付利金利を引き続き政策金利と位置づけ、それを現状の-0.1%から+0.1%へと0.2%ポイント引き上げることが予想される。

ただしその際に、現在の日銀当座預金の3層構造をそのまま維持するかどうかは、必ずしも明らかではない。現在の3層構造のもとでは、0%の付利金利が適用される「マクロ加算残高」の規模が大きいことから、無担保コールレート(翌日物)は0%近傍にとどまりやすい。日本銀行がマイナス金利政策解除後に、政策金利(付利金利)をさらに引き上げていく場合には、3層構造の当座預金制度を見直すことが、いずれは必要となる。

見直す際には、マイナス金利政策導入以前のように、所要準備と超過準備の2層構造とし、超過準備に適用される付利金利を現在の2種類から1種類に戻すことが考えられる。

ただし、政策金利(付利金利)を+0.1%に引き上げ、無担保コールレート(翌日物)を0~+0.1%のレンジに誘導するのであれば、現在の3層構造のままでも問題ないのではないか。政策金利残高部分を厚めに設定すれば、0%の付利金利が適用される「マクロ加算残高」の強い影響を受ける無担保コールレート(翌日物)を0%以上に引き上げることは十分に可能だろう。

ただし、政策金利(付利金利)を+0.1%からさらに引き上げていく際には、無担保コールレート(翌日物)がそれについていけない可能性が高まる。そこで、政策金利(付利金利)を+0.1%に引き上げた後、しばらく時間をおいてから、日本銀行は所要準備と超過準備の2層構造の当座預金制度に戻すのではないか。

政策金利(付利金利)を引き上げるのと同時に当座預金制度を見直す可能性も否定はできないものの、大きな政策変更を同時に実施することで不測の事態が生じるリスクなどを踏まえれば、当座預金制度の見直しは後に回す可能性の方が高いのではないか。

銀行の利子収入の追い風に

ただし、日本銀行がいつマイナス金利政策を解除するかとともに、日本銀行がいつ当座預金制度を見直すかは、銀行にとっては大きな注目点だ。巨額のマクロ加算残高部分の適用される付利金利が現状の0%から引き上げられれば、大きな利子収入が得られるからだ。

1月時点で、0%の付利金利が適用されるマクロ加算残高は200兆円(所要準備額を除く推計)、-0.1%の付利金利が適用される政策金利残高の合計は25.3兆円である。その双方に+0.1%の付利金利が新たに適用されることになれば、銀行など日本銀行の当座預金先の利子収入は、1年間で2,500億円程度増加する計算となる。

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