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政府の電気・ガス支援策は5月までで終了へ:ガソリン補助金は延長と対応が分かれる

2024/03/28

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補助金終了で世帯当たり電気代は月額1,475円、都市ガス代は455円増加

政府は、昨年1月に導入した電気・都市ガス料金への補助金制度「電気・ガス価格激変緩和対策事業」を、今年5月使用分までで終了させることを決めた。5月については、補助金の額を半減させる。

総務省によれば、この補助金制度による物価押し下げ効果は、電気代が-0.41%、都市ガス代が-0.08%、合計で-0.49%だ。補助金廃止により、5月使用分が反映される6月消費者物価は前月比0.25%、6月使用分が反映される7月消費者物価は前月比0.25%、合計で0.49%押し上げられる。

電気料金については家庭向けで1キロワット時あたり3.5円、都市ガスは1立方メートルあたり15円を補助している。電気・都市ガス料金への補助金が終了すれば、2人以上世帯では、電気料金の支払いは年間17,696円(月間1,475円)、都市ガスは年間5,461円(月間455円)増加する計算だ。

また、補助金終了による経済への影響を考えると、個人消費は1年間の累積効果で0.25%、GDPは0.09%それぞれ押し下げられると試算される(内閣府、短期日本経済計量モデル・2022年版に基づく)。

このように、電気代・ガス代の補助制度を終了すれば、家計には打撃となり、経済にも悪影響がある。春闘での賃金が予想以上に上振れたことによる消費活動への好影響を、一部相殺してしまう可能性もあるだろう。

ガソリン補助金は継続:対応の差の背景は何か?

しかし、補助金制度の長期化には、財政負担を拡大させてしまうことや、消費者の省エネ意欲を削いでしまうといったマイナス面もあり、この点から補助金廃止は概ね妥当な判断ではないかと思われる。ただし、電気代・ガス代の上昇によって生活への負担が大きくなる低所得世帯には、別途支援策を考えても良いだろう。

他方、電気代・ガス代の補助金制度以上に問題を抱えているのは、2022年1月から続いているガソリン補助金制度だ。同制度の予算総額は既に6兆円超に達し、国の財政を圧迫している。それに加えて、脱炭素政策に逆行する、市場メカニズムを歪めるなど多くの弊害がある。

ところが政府は、今年4月に期限を迎えるこのガソリン補助金制度については、再度延長する方向だ。経済、国民生活への影響を配慮したため、との説明がなされているが、それは電気代・ガス代についても同様か、それ以上であるはずだ。

補助金制度終了によって、世帯当たりの電気代は平均で12.0%上昇、都市ガス代は14.0%上昇する計算である。他方、ガソリン補助金については、足もとでの補助金額で計算すると、制度廃止でガソリン価格は12.4%上昇する計算だ。これは、電気代、ガス代の上昇幅と大きな違いはない。

他方、ガソリン補助金制度廃止による世帯当たりの月額負担増加(支出増加)は、購入量が変わらない場合には、663円程度となり、電気代補助終了による電気代増加額よりも小さい。

こうした点から、電気代・ガス代の補助金制度を終了させる一方で、脱炭素の妨げとなるガソリン補助金制度を延長するというのは、バランスを欠いた政策のように感じられる。どのような政治的理由によって、そのような結論が出されようとしているのかは不明だ。

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