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1ドル155円が視野に:当局はG20を控えて為替介入を見合わせているか

2024/04/16

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為替市場は政府の介入を試す動きを強める

4月15日の東京市場では、中東情勢の緊迫化を受けて株価が大きく下落した。また、中東情勢の緊迫化の影響で原油価格が上昇し、米国連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが遅れるとの観測を受けて、ドル高円安が一段と進んだ。先週、1ドル152円の節目の水準を超えてドル高円安が進んだが、15日の東京市場では、1ドル154円台目前の水準までドル高円安が進んだ。

さらに同日の米国市場では、米国3月の小売売上高が予想を上回ったことを受けて、1ドル154円台までドル高円安が進んだ。

日本政府は、1ドル152円程度を「第1防衛ライン」としてきたと考えられるが、「第2防衛ライン」と考えられる1ドル155円も視野に入ってきている。為替市場は、日本政府の為替介入を試す動きを強めている。

強まる「ドル独歩高」、「ドル1強」

ただし、足もとの為替の動きは、円安というよりもドル独歩高である。円のみならず主要通貨がいずれもドルに対して大きく下落している。

欧州中央銀行(ECB)は6月に利下げに踏み切る可能性が高まっている(コラム「ECBは6月利下げを示唆:世界的な本格的な利下げ局面の幕開け」、2024年4月12日)。英国中銀、カナダ中銀、スウェーデン中銀なども6月頃に利下げに踏み切るとの予想が浮上している。

一方、インフレ率の低下傾向が鈍る米国では、利下げの実施は後ずれする方向にある。これに、米国経済の堅調さや、中東情勢緊迫化を受けたリスク回避のドル買いなどの要因も重なり、2022年と同様に「ドル1強」の傾向が強まっているのが現状だ。

一般に、円安ではなく、ドル高傾向が強い場合には、円買いドル売りの為替介入の効果は削がれやすい可能性が考えられる。

G20前で為替介入を控えているか

神田財務官は15日に、「金融・為替市場に関しては、毎日のように米国を含む主要国の財務官、中央銀行幹部と頻繁に連絡している」と発言した。これは、「断固たる措置」、「あらゆる選択肢」など、為替介入の可能性を示唆しながら、強い口調で円安をけん制してきた今までの説明とは異なっている。

国際協調を重視したかのようなこの発言は、17・18日にワシントンで開かれる主要20か国(G20)財務相・中央銀行総裁会議、G7財務相会議、日米韓財務相会議を強く意識したのだろう。こうした一連の会議で、ドル独歩高の問題が提起され、またそれに対して、米国が何らかの対応を取るとの見方が浮上すれば、それはドル高円安に歯止めをかけることになる。

実際、鈴木財務相は、ドル独歩高がG20財務相・中央銀行総裁会議の議題となる可能性がある、と述べている。G20での国際協調路線のもとでドル高に歯止めをかけることができる可能性があることから、日本政府は現在、為替介入を控えている面があるのではないか。

また、G20あるいはG7の前に日本が為替介入に踏み切れば、会議の場で、「為替操作」として米国あるいは他の先進国から批判を浴びる可能性がある。日本としてはそうした事態は避けたいところだ。日本の為替介入が、新興国の為替介入を助長してしまう可能性もある。

こうした点を踏まえれば、ドル高円安が進んでも、G20が終わるまで、日本政府が為替介入を実施できず、その間にドル高円安が一段と進んでしまう可能性も出てきたのではないか。

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