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もしトラでFRBの独立性が大きく脅かされるリスクが浮上:中央銀行の独立は人類の英知の産物

2024/05/01

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トランプ前大統領の側近らがFRBの独立性を弱める改革案を策定中

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、トランプ前大統領の側近らが、同氏が再選する場合、いわゆる「もしトラ」に備えて、同氏が望んでいるFRBの独立性を弱め、金融政策決定において大統領の権限を強める改革案を策定している、と報じている。

現時点では、トランプ前大統領は、「バイデン大統領の再選を助けるために利下げを行おうとしている」と、FRBのパウエル議長を批判している。しかし、トランプ政権期には、同氏はパウエル議長に利下げを強く要求していた。それには、利下げによる景気浮揚効果を期待するとともに、ドル安を通じて国内産業を輸入品から守るという保護主義的な考えもあった。トランプ前大統領が再選されれば、再びFRBの金融政策への介入を通じてドル安誘導を行う可能性は高いだろう。

トランプ前大統領は、日ごろから低金利を支持しているとアドバイザーらに述べる一方、大統領がFRBの政策に影響を及ぼすことができないことに強い不満を表明していた、とされる。今回のFRB改革案は、そうしたトランプ前大統領の考えを強く反映したものだろう。

パウエル議長を2026年の任期終了前に更迭する考えも

改革のポイントは、大統領にFRB議長の解任権を付与すること、金融政策決定に大統領が影響力を行使できるような仕組みを作ることの2点であるようだ。

トランプ前大統領は任期中に、イエレン前FRB議長(現財務長官)を解任する考えを明らかにしたが、結局それは実現できなかった。法解釈は完全には固まっていないが、議長に大きな瑕疵がない限り、政策を巡る意見の違いだけでは大統領は議長を解任できない、との法解釈が一般的であるからだ。

トランプ前大統領は、自身が再選されれば、2026年に任期を迎えるパウエル議長を再任しない考えを明らかにしている。さらに、任期を迎える前にパウエル議長を更迭できるよう、制度改正を行う考えがあるのだろう。

大統領が直接金融政策決定に関与する案も

FRBの改革案の策定を進めるトランプ前大統領の側近らは、「金利に関する判断に関してFRBは大統領と協議が行われるべき」と主張している。これも、トランプ前大統領の考えを受けたもの、あるいは忖度したものだろう。

現時点での改革案の中では、FRB関連の規制をホワイトハウスによる評価の対象に加えること、また中銀のチェック機関として財務省をより積極的に活用すること、が提言されているという。

さらに、トランプ前大統領は、FRB議長は金利政策について大統領の見解を定期的に求めた上で、それを米連邦公開市場委員会(FOMC)の議論に反映させることや、大統領がFRBの臨時理事としてFOMCに加わることもあり得るとの議論もされているという。

中央銀行の独立は人類の英知の産物

このようにFRBの独立性を制約する改革を議論すること自体、適切ではないだろう。現在、中央銀行の政府からの独立性が確保されている国は多いが、それは、長い歴史の中で生み出された「人類の英知の産物」とも言えるものだ。

日本でも西南戦争で、政府が戦費の調達のために通貨を大量に発行し、それがハイパーインフレを招いたことの反省を一つのきっかけにして、政府から独立した中央銀行、日本銀行が設立されたという経緯がある。

政府が金融政策に強く関与すれば、緩和的な金融政策の傾向が強まり、それが通貨価値の過度の下落、つまりインフレを通じて、国民生活を損ねてしまう恐れがある。近年では、大統領がインフレ下で中央銀行に利下げを強いたため、通貨が暴落して経済、国民生活を混乱させた、という例がトルコにある。

トランプ前大統領の側近が議論しているFRB改革案は、こうした歴史的経緯を全く無視したものだ。実際にそうした改革が実現される可能性は低いと思われるが、そうしたことが議論されるだけでも、ドルの信認に悪影響を与えるだろう。

それは、日本を含めて多くの国に現在大きな問題を生じさせているドル高を是正する効果が短期的には期待できる可能性はあるだろう。しかしより中長期的には、米国の物価安定の回復を妨げ、経済、金融市場を不安定化させる。また、中央銀行の独立性を制限するとの議論が、米国以外にも広がれば、それがもたらす世界の経済的損失は非常に大きなものとなってしまうだろう。

(参考資料)
"Trump Allies Draw Up Plans to Blunt Fed's Independence(FRB独立性を弱める計画案、トランプ氏側近らが作成)", Wall Street Journal, April 26, 2024

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