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トランプ色が強いバンス氏が共和党副大統領候補に:外交政策ではトランプ以上に過激か

2024/07/17

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中西部の激戦州で労働者階級にアピール

米国共和党は、米国時間7月15日にウィスコンシン州ミルウォーキーで党大会を開催し、トランプ前米大統領が共和党大統領候補に正式に指名された。トランプ氏は右耳を白いばんそうこうで覆われた姿で突然会場に現れた。トランプ氏が公の場に姿を現したのは、13日の暗殺未遂事件で負傷した後初めてのことだ。

トランプ氏は同日に、自身のソーシャルメディアでJ・D・バンス上院議員(共和、オハイオ州)を副大統領候補に指名した。バンス氏は党大会の会場で、トランプ氏の隣に立った。

バンス氏は現在39歳と若く、78歳のトランプ氏と年齢のバランスをとった人選となった。また、高齢が問題視されるバイデン大統領に対しても、若さをアピールできる人選だ。

他方、政策面では、バンス氏は保守派かつポピュリスト的な政策でトランプ氏に近いとされる。バンス氏は米国第一主義を強く打ち出しており、トランプ氏が掲げるスローガンのMAGA(米国を再び偉大に)の最大の継承者となり得る人物だ。トランプ氏の課題は共和党穏健派や無党派層を取り込むことであるが、こうした観点からは、バンス氏の指名はそれに有効ではないかもしれない。

ただし、2016年の大統領選挙でトランプ氏を勝利に導いた、中西部の重要な激戦州では、労働者階級の有権者にアピールできる。バンス氏は、勝敗の鍵を握る「青い壁」と呼ばれる激戦州のウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアの3州で、白人労働者階級のトランプ氏支持を強化してくれる、との読みがトランプ氏にはあったのだろう。バンス氏は海兵隊での軍務を経験し、イエール大学ロースクールを卒業し、シリコンバレーの富裕な献金者らとのつながりも持っている。

外交政策においてバンス氏はトランプ氏以上に過激か

2016年、バンス氏はラストベルトに住む白人貧困層を描いた「ヒルビリー・エレジー」を出版した。それは、鉄鋼の町で貧しい子どもとして育った実体験に基づく回顧録だったが、ベストセラーとなった。一時はトランプ氏を痛烈に批判していたが、2022年の上院選ではトランプ氏の支援を受けて初当選を遂げ、それ以降トランプ氏の信奉者となった。

懸念されるのは、外交政策においてバンス氏はトランプ氏以上に過激であることだ。「ウクライナ支援についてはコストがかかりすぎる」、「「米国の最善の利益はウクライナがロシアへの領土割譲を受け入れることだ。戦争を終結させる必要がある」と同氏は語ったことがある。

またバンス氏は15日にFOXニュースのインタビューで、「(ウクライナ侵攻)を速やかに収束させ、本当の問題である中国に集中できるようにする。中国は米国にとって最大の脅威だ」と強調した。バンス氏は中国に対して、トランプ氏以上に強硬姿勢に出る可能性があるだろう。

バンス氏の「米国第一主義」的な姿勢は、「孤立主義」とも評される。今回の大統領選で仮にトランプ氏が勝利した場合には、大統領3選禁止によって2028年の大統領選にはトランプ氏は出馬できない。そのため、バンス氏が次の大統領候補者になる可能性も考えられるところだ。

バイデン大統領の挽回は一段と難しく

トランプ氏が襲撃されたことを受けて、バンス氏は「バイデン陣営の大前提は、ドナルド・トランプ大統領が権威主義的なファシストであり、是が非でも阻止されなければならないというものだ。そうした言葉遣いがトランプ大統領の暗殺未遂に直接つながった」とコメントした。この過激なコメントについては、共和党内からも批判が出された。

トランプ氏自身は、襲撃事件を受けて、18日に行う大統領候補指名の受諾演説の内容を修正した。結束により重点を置く一方、バイデン大統領への批判を減らしたことを明かしている。

またバイデン大統領も、トランプ批判をしばらく控えることになるが、それは支持率で先行するトランプ氏に追い付く戦略を封じられることにもなるだろう。

襲撃事件を受けて、トランプ氏には同情が集まる一方、強さもアピールすることになった結果、高齢が問題とされるバイデン大統領を支持率で一段と引き離した印象がある。まだ確定的とは言えないが、バイデン大統領が劣勢を挽回するのはさらに難しくなってきている可能性もあるだろう。

バイデン大統領が8月の民主党大会までに選挙戦を離脱するかどうかが、大統領選に向けた当面の大きな注目点となってきた。

(参考資料)
"Trump Picks J.D. Vance as 2024 Running Mate(トランプ氏の副大統領候補バンス氏、強みとリスク)", Wall Street Journal, July 16, 2024
「米共和、副大統領候補バンス氏 ラストベルト出身の39歳」、2024年7月16日、日本経済新聞電子版

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