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規制改革と自民党総裁選:ライドシェア全面解禁が試金石に:小泉政権以来の規制改革の大きな流れを作れるか

2024/09/03

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改革を前面に掲げる河野氏

9月27日に開票が行われる自民党総裁選に向け、経済政策面では「規制改革」が一つの注目点となっている。

総裁選にすでに名乗りを上げている人、あるいは今後出馬が予想される人の中で、「規制改革」のイメージが最も強いのが、河野デジタル行財政改革担当大臣だ。河野氏は、岸田政権ではマイナンバーカードと健康保険証の一体化を推進し、また「日本版ライドシェア」の導入など、規制改革に取り組んだ。

河野氏は総裁選の公約である「日本を前に進めるための5本柱」の中に、(3)「経済・地域活性化」:民間主導の経済成長、地域の再生、(4)「デジタル」:人に優しいデジタル化、デジタルを成長産業に の2つの経済政策方針を織り込んでいる。

また、総裁選への立候補表明時には、「民間主導で経済を発展させるための妨げになっているような規制は、大胆に改革をしていかなければならない」と述べ、デジタルの活用や規制改革を推進して経済発展につなげていく考えを強調した。ただし、同氏の規制改革の具体策についてはあまり明らかではない。

4日にも正式な立候補を表明するとみられる茂木幹事長は、日本でのライドシェア全面解禁を唱えており、日本政府に規制緩和を改めて促すなど、規制緩和重視派の側面をのぞかせている。

6日に立候補表明を予定している小泉元環境大臣は、タクシー運転手不足の解消に向けライドシェアアプリの導入を提言している。さらに、小泉氏は父親の小泉元首相から改革のイメージを受け継いでいる感がある。

政府はライドシェア全面解禁を目指す

3氏の規制改革で共通しているのは、2024年4月に導入されたライドシェアについて、全面解禁に向けて一段と規制緩和を進めることだろう。

ライドシェアとは、一般ドライバーが自家用車で乗客を有償で運ぶサービスのことを言う。タクシー不足を解消する観点から、2024年4月に東京などの一部地域では、タクシー会社が運営主体となって、一般のドライバーが自家用車を使って有料で人を運ぶ「日本版ライドシェア(自家用車活用事業)」のサービスが開始された。

日本では道路運送法78条により、原則として有償での運送に自家用車を使用してはならない、と規定されている。そのため、これまでは配車型のライドシェアは「白タク」として違法とされてきた。今回のライドシェア解禁の背景には、新型コロナウイルスの影響や高齢化などによるタクシー運転手不足がある。

ただし、日本でのライドシェア解禁はいくつかの条件付きであり、部分解禁にとどまっている。国土交通省から営業認可を受けたタクシー会社が運行管理を行うこと、運行する曜日・時間帯を限定すること、地域が大都市や観光地に限られていることなどだ。

アプリ事業者などの参入も認める全面解禁には、法改正や新法の制定といった法整備が必要になる。政府の規制改革推進会議は今年5月に、一般ドライバーが有償で乗客を送迎する「ライドシェア」の全面解禁を認める法整備について意見を示し、2025年の通常国会への関連法案の提出も視野に入れるべきだ、と提起した。6月には政府の経済財政運営の指針「骨太の方針」にも「ライドシェア」の全面解禁の方針が盛り込まれた。しかし、自民党内の一部や公明党が慎重姿勢を示していることから、全面解禁の時期は明示できなかったのである。

ライドシェアの全面解禁だけでは規制改革としては小粒

総裁選では、ライドシェアの全面解禁の賛否が、「規制改革」に前向きかどうかの試金石になっている印象がある。しかし、ライドシェアの全面解禁だけでは、規制改革としては小粒である。規制改革に前向きな総裁選候補者は、その他の分野でも具体的な規制改革案を示し、活発な議論を主導して欲しい。

岸田政権下で、規制改革の取り組みは概して盛り上がりを欠いたとの印象がある。規制改革(規制緩和)が最も注目されていたのは、2001年4月〜2006年9月の小泉政権時代だ。小泉政権は、郵政民営化を核として、構造改革を推進していった。

政権発足の直前にできた総合規制改革会議が、(健康保険診療と自由診療を同じ患者の同じ病気に適用する)混合診療の解禁、医療機関経営への株式会社参入、医師免許への更新制導入などの意欲的な規制改革を提唱した。そのうち混合診療の解禁は、不完全ながらも一部実現した。

次の安倍元首相は、「いかなる既得権益も私のドリルから無傷ではいられない」と、岩盤規制に挑む覚悟を強調した。2020年春には、医療界が抵抗していたオンライン診療の全面解禁を実現させた。

また、加計学園による獣医学部の新設では、族議員ら政官業の強い抵抗を押し切って既得権益に風穴を開けたが、首相のスキャンダルによって志半ばに終わった。

次の菅政権は、既得権益の打破を掲げるとともに、「規制改革を政権のど真ん中に置く」と宣言した。しかし同政権が推進した通信費の引き下げは、規制改革ではなく競争政策だ。

規制改革を実施しようとすると、族議員、官庁、業界などから強い反発にあう。それを打ち破って改革を前に進めるためには、首相の強いリーダーシップが欠かせないだろう。

ライドシェアの全面解禁だけで規制改革の「やったふり」をするのではなく、反対勢力との全面対決を覚悟し、小泉政権以来となる規制改革を強く進め、それを経済の再生につなげていくような新政権の誕生を期待したい。

(参考資料)
「規制改革に再び光を 返り血を覚悟で岩盤崩せ」、2024年3月27日、日本経済新聞電子版

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