立憲民主党代表選で4候補が論戦
9月7日に立憲民主党の代表選が告示された。立候補したのは、野田元首相、枝野前代表、泉代表、吉田衆院議員の4名だ。泉、吉田の両氏は告示直前まで推薦人集めに苦戦しており、出馬に必要な国会議員の推薦人20人の確保、というハードルの高さも注目を集めた。
9月27日の自民党総裁選後には、新総裁・新首相の下で早期に解散総選挙が実施されることを想定し、選挙の顔となる代表がここで選出される。4候補は告示日に、日本記者クラブの討論会に出席した。
総選挙でも大きな争点となる政治資金問題については、先般の政治資金規正法改正では十分でなく、さらなる法改正や対応を自民党に求めていくという点で、4氏の考えは一致している。
そうした中、最も注目されているのは、選挙での、あるいは選挙後の野党連合についての考え方だ。この点で、4氏の意見は大きく分かれている。
泉氏は、共産党との連立政権を明確に否定した上で、日本維新の会との連携についても、「選挙前から何かを一緒にやるのは難しい」と慎重な見解を示した。枝野氏も、政策面での違いを理由に、日本維新の会との連携は困難、との姿勢だ。
他方で野田氏は、「今回は政権をとる千載一遇のチャンス」と語り、日本維新の会と国民民主党との連携に前向きな姿勢を見せた。吉田氏も、小選挙区で与野党が「一対一」の構図を作るために、「(他の野党との)選挙協力は進めるべきだ」と述べている。
政権奪取を意識し、また他の野党との連携を睨んで、従来の立憲民主党の主張をより現実路線に修正する議論も聞かれた。党綱領には「原発ゼロ社会を一日も早く実現する」とされているが、泉氏は、安全性の確保などを前提に、原発再稼働に理解を示した。野田氏も現実路線を強調した。枝野氏も「ゼロを目指すと明日にでも全部なくなるとの誤解を与える」とした。3氏が原発で現実路線を示す背景には、AIなどで電力需要の増大が高まることがある。
経済政策では、消費税率引き下げも議論の対象となった。立憲民主党は、前回2021年の衆院選挙で、新型コロナウイルス問題への対応として、時限的な消費税率の5%への引き下げを掲げた。しかし、吉田氏を除けば、3氏は消費税率引き下げに慎重である。
野田氏は「(消費税率を)一度下げたら戻すのが大変」とする。枝野氏は「消費税率を引き下げても焼け石に水だ」と語り、「給付付き税額控除」を主張する。これは、税金から一定額を控除した後、課税額より控除額が大きい場合にはその分を現金で給付するという、低所得者支援制度である。泉氏も「給付付き税額控除」に賛同するが、加えて食品にかかる消費税を非課税にするのも選択肢、としている。他方で吉田氏は、時限的に消費税を減税すべきと主張する。
このように候補者4名の意見は割れる部分も少なくない。自民党の総裁選と比較すると、候補者の数はかなり少ないが、その中でも活発な意見が戦わされ、立憲民主党の多様性をアピールできるのではないか。
他方で、政権交代に向けた熱量があまり感じられないうえ、自民党に代わって政権をとる場合に実現を目指す大きな国家観のようなものが十分に打ち出されていない、との印象がある。
(参考資料)
「立憲代表戦4氏 物価高対策。原発で論戦」、2024年9月8日、日本経済新聞
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