米国8月コアCPIは予想を上回る:FRBは9月FOMCで0.25%の利下げの観測強まる
米労働省が9月11日に発表した米国8月総合CPIは鈍化傾向が続いたが、変動の激しい食料・エネルギーを除いたコア指数は事前予想を上回った。これを受けて、来週9月17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅な利下げをするとの期待が後退した。
8月総合CPIは前月比+0.2%と事前予想に一致した。7月は+0.2%上昇だった。前年同月比でも+2.5%と事前予想と一致した。7月の+2.9%上昇から大きく低下し、2021年2月以来の水準となった。ガソリン価格の下落が影響した。
しかし変動の激しい食料・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.3%と事前予想の+0.2%を上回った。過去3か月の年率上昇率は+2.1%と7月時点での+1.6%から加速した。
財コア指数(除く食料・エネルギー)は、0.2%低下となった。財価格はデフレ傾向が続いている。他方、サービスコア指数(除くエネルギー)は前月比+0.4%と6月の同+0.1%、7月の同+0.3%から加速した。サービス分野で最大部分を占める住居費が前月比+0.5%上昇と1月以来の大幅な上昇となったことが、サービス価格全体を押し上げている。住居費以外では航空運賃や衣料品、未就学児保育サービスなどが全体の伸びをけん引した。自動車保険とホテル宿泊費も引き続き上昇した。
11日の東京市場ではドル円レートは、8か月ぶりとなる一時1ドル140円台まで円高が進んでいた。米国8月CPIが発表される前は1ドル141円台で推移し、統計発表後はFRBの大幅利下げ観測が後退して1ドル142円台まで円安に振れた。利下げ観測の後退でNYダウ平均は大幅に下落し、一時4万ドルを下回ったが、その後は持ち直して前日比上昇で引けた。
以前は、米国のCPI統計でFRBの金融政策の見方が大きく変化し、金融市場が動揺する「CPIショック」がしばしば生じていたが、今回はそのようなことは起きなかった。物価上昇率の低下傾向を受けたFRBの利下げ観測は、既に金融市場に定着している。他方で金融市場の関心は、米国経済が顕著に減速し、それを受けてFRBが予想以上に利下げを進めるかどうかに移っている。そのため、金融市場は物価統計ではなく雇用関連を中心に経済指標への関心を強めているのである。金融市場は来週のFOMCで0.25%の利下げを100%織り込んでいる一方、CPI統計を受けて、0.5%の利下げの確率は20%台まで低下している。
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