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金融市場の「石破ショック」は一時的:石破新総裁は経済政策で岸田路線継承を表明

2024/09/30

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金融市場の「高市トレード」と「石破ショック」は一時的

9月27日の自民党総裁選挙の決選投票で、石破氏が高市氏を破り新総裁に決まると、金融市場は大きく反応した。直前には1ドル146円台で推移していたドル円レートは、一気に1ドル143円台まで円高が進んだ。急速な円高を受けて株価も下落した。日経平均先物株価指数は、2,000円近くの大幅下落となった。

海外市場に入ってからも円高・株安の流れは緩やかに続き、米国市場ではドル円レートは142円程度まで円高が進んだ。それを受けて、日経平均先物株価指数の下落幅は2,500円程度にまで拡大した。

金融市場では27日の市場の動きを「石破ショック」と呼ぶ向きもあるが、大きな動揺は一時的なものだろう。27日の投開票日までに、高市氏が総裁に選出される可能性を金融市場は徐々に織り込んでいた。さらに同日の第1回投票で高市氏が1位になると、金融市場は高市氏の勝利を高い確率で織り込んでいったのである。日本銀行の利上げに反対の姿勢を鮮明にしていた高市氏の勝利は、円安要因と市場は考えた。また、高市氏の積極財政政策は、短期的な経済に追い風との見方もあり、円安の追い風と相まって、株高も進んだ。こうした流れは「高市トレード」とも呼ばれていた。

「石破ショック」の実態は、この「高市トレード」の巻き戻しである。週明け後の30日(月)の東京市場では、現物の株価指数は大幅安で始まるだろうが、金融市場の混乱は一時的なものであり、早晩、落ち着きを取り戻すことが予想される。

日銀の利上げは支持するが独立性を尊重する姿勢か

海外市場では、金融政策を巡って石破氏が「タカ派」との認識も広まっている。確かに石破氏は、日本銀行の利上げを支持してきた。しかしそれは、高市氏を除く他の総裁選候補者も同じであり、特に「タカ派」色が強いというわけではないだろう。日本銀行が追加利上げを実施する中、円安修正が進み、それが物価高傾向を緩和させるという効果を期待しているとみられる。

海外では、石破氏の勝利で日本銀行の追加利上げの時期が前倒しになる、との見方も浮上しているが、それは正しくないだろう。

石破氏は、日本銀行の独立性を尊重する姿勢と考えられ、日本銀行に追加利上げを強いるようなことはないだろう。それは日本銀行にとっては歓迎すべきものだ。石破政権の下で、日本銀行は金融政策の自由度を維持し、自らの判断で正常化を進めていくことになると考えられる。

この先、日本銀行の金融政策に大きな影響を与えるのは、政治的な要因ではなく、為替動向、米国経済の動向、国内景気・物価動向だ。円高進行による物価見通しの上振れリスクの後退、あるいは下振れリスクの上昇、米国経済の下振れ、などが追加利上げの制約要因となる。

「高市トレード」と「石破ショック」は一時的な現象と考えられるが、それらが解消された後には、日米金融政策の方向性の違いを映して、為替市場では緩やかな円高のトレンドが続き、それが株価の頭を抑えることが考えられる。しかしそれは、金融市場の混乱とは異なるものだ。

岸田政権の経済政策を継承

石破氏は27日の総裁選後の記者会見で、「岸田総裁が一生懸命努力してきたデフレからの脱却を確実なものにしなければならない」「『新しい資本主義』にさらに加速度をつけていきたい」と、経済政策では岸田路線を継承する考えを強調した。

賃上げや物価高対策などが主に念頭にあるのだろうが、岸田政権の経済政策も多様だ。賃上げ、電気・ガス・ガソリン補助金、給付金などのリベラル色が強い政策もあれば、「資産運用立国実現プラン(貯蓄から投資へ)」といった保守的な政策とも言える成長戦略もある。

石破氏は弱者救済、格差縮小といったリベラル志向が強く、それは岸田氏とも共通している。石破氏が掲げる一部の増税策は、余裕のある企業、個人に負担を求めることで、財政や社会保障制度の持続性を高め、弱者をより支援することができるという、リベラルな発想に根差しているように見受けられる。

ただし、石破氏は財政の健全化を重視していることから、給付金や補助金の一律支給のような「バラマキ的」な政策は避けるのではないか。

アベノミクスの功罪の検証にも期待

岸田政権のリベラルな経済政策に加えて、成長戦略もしっかりと引き継ぐことを期待したい。岸田氏が種をまいた成長戦略には、「資産運用立国実現プラン(貯蓄から投資へ)」以外にも、「三位一体の労働市場改革」、「外国人材活用」、「インバウンド戦略」などもある。

石破氏はアベノミクスの功罪を検証することを主張してきた。政治的な制約はあるかもしれないが、是非ともそれを実現して欲しい。アベノミクスの第1の矢である金融政策、第2の矢である財政政策については、様々な弊害を生んでいると考えられる。それらをしっかりと検証した上で、第3の成長戦略については、一層の推進を期待したい(コラム「自民党新総裁に石破氏が選出:地方創生を中核に据えた成長戦略の推進に期待:財政・金融政策の正常化も後押しか」、2024年9月27日)。

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