赤沢・新経済再生担当相が日銀の利上げに慎重姿勢
石破新政権の下、10月1日付で新たに経済再生担当大臣に就任した赤沢氏は、官邸内で記者団に対して、「完全に日本がデフレから抜けたということを実現するまでは、(日本銀行の利上げは)慎重に判断していただきたい」、「経済を冷やすようなことは絶対にここしばらくはやってはならない」、「デフレ脱却最優先で取り組むというのが私の考え」と語ったと報じられている(ブルームバーグ)。こうした発言には、石破氏が総裁選で勝利した直後に、早期の追加利上げ観測から円高・株安が大きく進んだことへの対応、月末に迫る総選挙への配慮があったのかもしれない。
いずれにせよ、日本銀行の追加利上げに慎重と受け止められる発言だ。石破首相は、金融政策で日本銀行の独立性を尊重する姿勢を今まで再三強調してきたことを踏まえると、石破政権が日本銀行の金融政策に直接介入することは考えにくい。
日本銀行は、物価上昇率のトレンドがさらに上昇していき、2%の物価目標に達する確度が高まるのに従って、政策を調整していく、つまり政策金利を徐々に引き上げていくとしている。日本銀行がこの方針を修正する可能性は低いだろう。
ただし、日本銀行法第4条では、金融政策が「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」とされている。これに従い、日本銀行は政府の政策と整合的なものとなるように金融政策を決定、実施することに努めている。
ただし、デフレ脱却が日本銀行の利上げの条件とされるのは、日本銀行にとってはやや困ったことではないか。そもそもデフレとは明確に定義された言葉ではない。狭義では、2~3年など継続的に物価が低下する状態をデフレと言うが、政府が用いてきたデフレの概念はもっと広く、雇用・所得環境が改善し、国民全体が経済環境の好転を実感できるような状態だろう。そのような必ずしも明確でない目標に従って金融政策を運営することはできない、と日本銀行は考えるのではないか。
そして、デフレ脱却の判定は客観的データに基づくものではなく、政治情勢も含めて様々な要因を配慮した上で政府が決定することになる。デフレ脱却かどうかを政府が決め、日本銀行の金融政策がそれに強く規定されるのであれば、日本銀行の金融政策決定の自主性、独立性は失われることになってしまう。
日本銀行は、このような懸念を抱いているかもしれない。選挙後には、日本銀行は新政権と十分な意思疎通を図り、連携の在り方を改めてしっかりと議論する必要があるだろう。
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