縮小に向かうトランプ関税
英フィナンシャル・タイムズ紙は、トランプ米政権が鉄鋼・アルミに関わる関税の縮小を検討している、と報じた。関税による飲料缶、白物家電などの価格上昇が国民の不満を高め、11月の中間選挙への悪影響が懸念される情勢となっているためだ。
トランプ政権は2025年3月に、安全保障上の脅威を理由に、米通商法232条に基づいて鉄鋼・アルミ製品に25%の追加関税を発動した。さらに6月には関税率を50%にまで引き上げた。
国民の物価高懸念へ配慮し、トランプ政権が関税の縮小を検討するのは今回が初めてではない。2025年11月にトランプ大統領は、牛肉やバナナといった農産物を相互関税の対象から除外する大統領令に署名した。
トランプ関税策を軌道修正することへの圧力は、議会からも高まっている。米下院は2月11日に、トランプ政権がカナダに課した関税の撤廃を求める決議案を、賛成多数で可決した。
トランプ政権は2025年3月に、安全保障上の脅威を理由に、米通商法232条に基づいて鉄鋼・アルミ製品に25%の追加関税を発動した。さらに6月には関税率を50%にまで引き上げた。
国民の物価高懸念へ配慮し、トランプ政権が関税の縮小を検討するのは今回が初めてではない。2025年11月にトランプ大統領は、牛肉やバナナといった農産物を相互関税の対象から除外する大統領令に署名した。
トランプ関税策を軌道修正することへの圧力は、議会からも高まっている。米下院は2月11日に、トランプ政権がカナダに課した関税の撤廃を求める決議案を、賛成多数で可決した。
関税の逆風は議会と司法からも
下院は与党・共和党が僅差で過半数の議席を持つが、この決議案では共和党からも賛成者が出たことが、トランプ政権に衝撃を与えている。国民が批判を強めるトランプ関税については、11月の中間選挙に逆風になることを警戒する機運が共和党内から強まっている。
決議案は共和党が過半数の議席を占める上院でも可決される見通しだ。トランプ大統領が拒否権を発動することで決議案は可決されない可能性が高い。しかし、それはトランプ関税の行き詰まりを示すことになり、実際にトランプ政権が関税のさらなる縮小に動くきっかけになる可能性があるだろう。
トランプ関税への逆風は、司法からももたらされている。国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠にする相互関税などに対して、違法判決が既に2回下された。間もなく最高裁の判断が示されるが、再び違法の判断が下される可能性があり、その際には相互関税などは失効する。
そうした場合でも、トランプ政権は通商法など他の法律を根拠に、相互関税などを継続させる考えを示しているが、少なくとも関税の範囲は大きく縮小を迫られるだろう。
決議案は共和党が過半数の議席を占める上院でも可決される見通しだ。トランプ大統領が拒否権を発動することで決議案は可決されない可能性が高い。しかし、それはトランプ関税の行き詰まりを示すことになり、実際にトランプ政権が関税のさらなる縮小に動くきっかけになる可能性があるだろう。
トランプ関税への逆風は、司法からももたらされている。国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠にする相互関税などに対して、違法判決が既に2回下された。間もなく最高裁の判断が示されるが、再び違法の判断が下される可能性があり、その際には相互関税などは失効する。
そうした場合でも、トランプ政権は通商法など他の法律を根拠に、相互関税などを継続させる考えを示しているが、少なくとも関税の範囲は大きく縮小を迫られるだろう。
関税縮小は物価上昇率の低下を促し、FRBの利下げ余地を広げる
米労働省が13日に発表した1月消費者物価指数(CPI)は、前年比+2.4%と前月の+2.7%から低下した。事前予想の平均+2.5%も下回った。食品・エネルギーを除くコアCPIも前年比+2.5%上昇と前月の+2.6%を下回り、2021年3月以来の低水準となった。
関税の影響が薄れていくことで、この先、物価上昇率はさらに低下していくことが予想される。トランプ政権が関税策を縮小すれば、それは物価上昇率の低下を一層後押しする。
物価上昇率の低下は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ余地を広げる。トランプ大統領が指名するウォーシュ氏がFRB次期議長に就任する今年5月以降、利下げが進む可能性があるだろう。また、それは為替市場でドル安をもたらす。利下げとドル安を雇用と景気の浮揚につなげるというのが、11月の中間選挙に向けたトランプ政権の戦略となるだろう。
また、ドル安は貿易赤字の縮小にも寄与することから、関税策に代わって貿易赤字を削減する手段ともなる。
このように、関税政策の行き詰まりと11月の中間選挙を視野に入れ、トランプ政権の経済政策の中心は、関税からFRBの利下げとドル安容認へと大きく転換しつつあるとみられる。
(参考資料)
「米、鉄アルミ製品の関税縮小か」、2026年2月14日、日本経済新聞
「鉄・アルミ関税一部縮小へ」、2026年2月14日、読売新聞
関税の影響が薄れていくことで、この先、物価上昇率はさらに低下していくことが予想される。トランプ政権が関税策を縮小すれば、それは物価上昇率の低下を一層後押しする。
物価上昇率の低下は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ余地を広げる。トランプ大統領が指名するウォーシュ氏がFRB次期議長に就任する今年5月以降、利下げが進む可能性があるだろう。また、それは為替市場でドル安をもたらす。利下げとドル安を雇用と景気の浮揚につなげるというのが、11月の中間選挙に向けたトランプ政権の戦略となるだろう。
また、ドル安は貿易赤字の縮小にも寄与することから、関税策に代わって貿易赤字を削減する手段ともなる。
このように、関税政策の行き詰まりと11月の中間選挙を視野に入れ、トランプ政権の経済政策の中心は、関税からFRBの利下げとドル安容認へと大きく転換しつつあるとみられる。
(参考資料)
「米、鉄アルミ製品の関税縮小か」、2026年2月14日、日本経済新聞
「鉄・アルミ関税一部縮小へ」、2026年2月14日、読売新聞
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。