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SDGsの次、2031年以降の国際目標についての議論はすでに始まっている

「2030年、いまから4年後の自分はどうなっていたい?」と問われたら、どう答えるだろう。毎日が精一杯で明日のことすら考えられない、という人もいれば、人生設計から逆算して「こうなりたい」とはっきり言える人もいる。形は違っても、たいてい何かしら返事はできるだろう。

もう少し視野を広げよう。「2030年に“世界が”どうなっていてほしい?」と聞かれたらどうだろう。急に言われても困る。多くの人が言葉に詰まるか、「わからない」と答えるかもしれない。

実は、この問いに対する国際社会の1つの答えがある。それがSDGsである。SDGsとは2015年に国連が採択した「人類がこの地球で暮らし続けていくために、2030年までに達成すべき目標(※1)」のこと。おなじみのカラフルな輪のロゴは、17のゴールと169のターゲットから成る壮大な羅針盤を示す。SDGsの期限は2030年。今は2026年、残りはあと4年である。

4年は長いようで短い。もちろん今のゴール達成に全力を尽くしているが、世界はその先も見据えている。すでにSDGsの次、つまり2031年以降の目標づくりの議論が始まっている。現行のSDGsも2015年に突然生まれたわけではない。SDGsが採択される約3年前から議論しながら、経済状況も価値観も異なる193の国が合意できる共通目標を練り上げるまでには相応の時間を要した。そして、2031年以降の新たな目標・行動計画の策定に向けて、既に水面下で動き始めている。

SDGsは、AIや環境課題などの時代の変化を織り込み、進化する

SDGsの次の目標はどう変わるのか。現行のSDGsをそのまま延長するのか、時代の流れにあわせて拡大・強化するのか。2025年時点でのSDGsの進捗は「2030年までに達成できそうな目標はない(※2)」状況である。現行のSDGsの延長すら十分に挑戦的だという見方もある。もっとも、その指摘は正しいにせよ、SDGsが策定された2015年と、現在・将来の社会の前提そのものも変わっているなかで、むしろ、拡大・強化の方向性を探る意見が目立ち始めている。

そもそも、2015年には、いま話題の生成AIはほとんどの人が使っておらず、新型コロナウイルスによるパンデミックも経験していなかった。オンライン会議やテレワークは一般的ではなく、社会の前提が今とは大きく異なっていた。
一方で2026年(現在)は、このようなAIなどの新興技術の活用だけでなく、循環経済への移行、環境に関する国境を越えたガバナンスの強化など、新たに考慮・重視すべきものが増えている。こうした変化を踏まえて、現行のSDGsに手を加える形で再設計してはどうか、という提案も現れている。

例えば2024年に英科学誌「Nature」では、SDGsの期間を2050年までに延長し、目標の再設定を求める記事が掲載された(※3)。この記事では、SDGsの目標やターゲットを減らすことなく、引き続き世界の政策アジェンダの中心に据えるべきだと主張されている。ただ、目標達成に向けて、教育、医療、エネルギー、土地利用、都市インフラ、デジタルプラットフォームなどの分野における抜本的な変革が必要であること、幅広い関係者との対話の重要性について指摘している。さらに、AIを含めた先端技術をSDGsに組み込むことや、あらゆる資源の採取・利用パターンを循環型モデルへ変更させることが重要であると強調している。この論文の他にも、ゴールまでの期間をこれまでのように15年とするのではなく、20年に延長すべきである、といった主張や、17個という“多すぎる”目標を集約し、7つの課題に集約する主張(※4)など、2031年以降の目標の構造や前提についてさまざまな方向性が提唱されている。

「文化」が新たな目標になる?!

また、目標の数や期間といった枠組みの観点だけでなく、SDGsに新たに加えるテーマについても議論が進んでいる。その1つが「文化」である。日本では「和」とか「歌舞伎、茶道」「寿司・天ぷら」「漫画、アニメ」などがパッと思い浮かぶだろうが、2031年以降の新しい目標として提案されている「文化」はもっと広く文化の力や役割そのものに焦点を当てている。例えば、気候変動への対策として先住民や地域の価値観・行動を取り入れ、自然と調和した暮らしや都市・地域の再生を進めること、さらには紛争の予防・緩和に文化を組み込むことなどの重要性が示されている。

文化をSDGsに組み込むことは、「あるといいな」という程度ではなく、実践的に不可欠な要素だという認識が広がっている。UNESCOなども文化の重要性を示す報告を公表し、「文化」を第18の目標として位置づけようという動きが活発化している(※5)。

こうして見ると、現行のSDGs自体は中長期の国際的な指針として重要だと認識されつつも、時代の変化に応じて手段や重要テーマがアップデートされ続け、そのプロセスそのものがSDGsだ、とも捉えられる。SDGsの内容は2030年で「完了」ではない。現時点での「達成すべきこと」を合意しつつ、最終目標は持続可能な世界をつくること。その大きな方向に向けて動き続けている。

新しい目標の追加やAIの重視など焦点の変化は私たちに何をもたらすか。例えば、企業にとっては、自社の関連する産業・テーマが世界で特に重視される位置づけになれば、取り組みが国際的に評価され、可視化されやすくなる。資金や制度の後押しが生まれる可能性もある。だからこそ、今後どのテーマが自分たちの強みと重なるのかを見極め、早めに挑戦を始めることが重要である。

  1. ※1:ユニセフ協会「SDGsって何だろう?」https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/about/(2026年4月27日時点)
  2. ※2:Sustainable Development Solutions Network「Sustainable Development Report 2025」(2025年6月24日)
  3. ※3:Francesco Fuso Nerini et al. , “Extending the Sustainable Development Goals to 2050 — a road map”, nature, 17 June 2024
  4. ※4:Tom Cernev, Richard Fenner, “Beyond 2030: structures for achieving sustainable development”, frontiers, Volume 6, 2024
  5. ※5:unesco” Outcome Document MONDIACULT 2025 Culture Minister’s Commitment MONDIACULT 2025”

プロフィール

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    中田 舞

    経営コンサルティング部

    京都大学大学院農学研究科修了、2017年野村総合研究所入社。主に企業のサステナビリティ経営推進を専門として、ビジョン策定・経営計画の立案・実行、統合報告書や非財務情報の開示、経営戦略やビジネスモデルに基づく人的資本・自然資本の課題特定と施策強化などのプロジェクトに従事。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。