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AIハイパースケーラーは100兆円以上の投資を予定

AIハイパースケーラーと呼ばれるアマゾン、アルファベット、マイクロソフト、メタの今年の投資額は昨年から倍増となり過去最大規模の約113.6兆円となる見通しだ1。これは一国のGDPにも相当する金額規模であり、台湾、ベルギー、アイルランド、スウェーデンといった国々のGDP規模に近い水準となっている。投資の大部分はAI向けのチップやデータセンターに充てられる予定である。

主要なテック企業のバランスシートを確認するとデータセンターへの投資の影響が見て取れる。最近10年で有形固定資産比率が大幅に上昇しているのだ(図表1)。あまり上昇していないアップルが目立つが、その背景にはハイブリッド戦略がある。アップルは自社データセンターと他社データセンター(パブリッククラウド)の双方を活用する方針をとっており、例えば自社のAIであるApple Intelligenceの学習をグーグルのチップであるTPUで進めたことを明らかにしている。ただし今後はテキサス州ヒューストンへのAIサーバー製造施設開設を含む、米国内での投資が5000億ドル(約75兆円)以上となることを発表している2ため有形固定資産比率が上昇する可能性もある。

出所)Speedaのデータを元にNRI作成

AI技術の競争力強化は米国政府にとっても重要テーマとなっている。AI分野では米国が技術覇権を巡る競争に直面しており、過去のマンハッタン計画に比肩する国家事業が必要だとして2025年11月にはホワイトハウスが「ジェネシス・ミッション」を発表した3。ジェネシス・ミッションが発表された同日、アマゾンは米国政府機関向けに最大500億ドル(約8兆円)を投じてAIおよびスーパーコンピューティング基盤を拡張する計画を発表している4。この発表ではジェネシス・ミッションとの直接の関係は明らかにされていないもののハイパースケーラーによる投資が米国政府のAI競争力強化に寄与することは確かであろう。なおジェネシス・ミッションに関連して米国のエネルギー省はマイクロソフト、グーグル、アマゾンなど24の組織と協力に向けた覚書を締結している。

米国ではバージニア州、テキサス州でデータセンターを建設

テック企業各社の直近数年のデータセンターへの投資状況を概観してみる(図表2)。まず象徴的なのはメタのCEOザッカーバーグ氏がホワイトハウスにおける会談での発言だろう。米国に数年間で「少なくとも6,000億ドル(約90兆円)」ものAI技術・インフラ投資を行うというものだ5。発表されている計画としてルイジアナ州リッチランド郡のAIデータセンター「ハイペリオン」に2000億ドル(約32.1兆円)を投じる見込みである他、テキサス州エルパソで100億ドル(約1.6兆円)の投資を予定している6。またアルファベットの2026年の設備投資は最大1900億ドル(約31兆円)に達する見通しとなるとグーグルCEOのピチャイ氏が示した7。これまでにテキサス州で3つのデータセンターを建設するために400億ドル(約6.4兆円)の投資8を予定していることやバージニア州のデータセンターに90億ドル(約1.4兆円)の追加投資を発表している9。加えて電力供給を確実にするため、米クリーンエネルギー開発大手インターセクト・パワーを47.5億ドル(約7630億円)で買収するなど発電事業を垂直統合する動きも見せている10。そしてマイクロソフトとOpenAIはパートナーシップを結び「スターゲートプロジェクト」を推進しており、2028年以降にAIスーパーコンピューターの稼働を目指しているが、その投資額は最大1,000億ドル(約16兆円)に上る。スターゲートプロジェクトでは既存の大規模データセンターの100倍以上の規模にあたる数百万個の最先端チップと最大5GWもの電力を必要としている11。アマゾンも世界最大クラスのAI計算クラスターを目指して2024年から全米複数のデータセンターにまたがる「プロジェクト・レイニア」を進めている。そこでは自社開発のAIチップ「Trainium2」を約50万個導入してAnthropicのClaudeなどのLLMを訓練している12。他にもインディアナ州北部のデータセンターに150億ドル(約2.4兆円)13を投じる予定である。

米国におけるデータセンターの集積について紹介したい。建設計画地として名前が挙がっているバージニア州は光ファイバー網が充実していることからデータセンターの首都としてかつてから存在感を発揮してきた。ただし近年ではバージニア州の電力供給と送電網の容量制約が課題となりつつあるため独自の電力網を持つテキサス州や電力との直結を狙って発電所周辺エリアが注目されている。特にテキサス州は歴史的経緯から他州と交流送電網で物理的に繋がっておらず独自の送電網を有している点で米国内でも特殊な環境である。州の9割の電力需給を管理するのは連邦政府ではなくERCOT(テキサス州電気信頼性評議会:Electric Reliability Council of Texas)と呼ばれる組織であり、需給に応じて市場価格が地域ごとかつ5分ごとに変化する仕組みとなっている。その結果、電力小売価格は全米平均よりも低水準(平時には安価だがピーク時には価格が上昇する)となっており、データセンターを惹きつける一因となっている。

出所)各種公開情報よりNRI作成 ※1ドル=160.6円、1豪ドル=113.1円で円換算

AIハイパースケーラーの投資の一部は豪州や日本にも

テック企業による投資は米国以外に豪州や日本にも向かっている。豪州はAUKUSの同盟国であり安全保障の観点で選ばれやすいのと、広大な土地を活かした太陽光や風力といった再生可能エネルギーが確保しやすい。データセンター事業者が発電事業者と再生可能エネルギーの供給契約を直接結ぶ電力直接購入契約の仕組みも発達しており投資を呼び込む一助となっている。マイクロソフトはオーストラリアで2029年までに250億豪ドル(約2.8兆円)の投資14、アマゾンも2029年までに200億豪ドル(約2.3兆円)を投じる15と発表している。

日本でもマイクロソフトが2026年から2029年までに100億ドル(約1.6兆円)を投資する計画16を発表している他、アマゾンが東京と大阪のAWSのクラウドインフラに対して2011年から2027年までの累計で3.8兆円を投資する見通しである17。オラクルも2024年から10年間で80億ドル(約1.3兆円)超を投じて日本のデータセンターの増設を発表している18

日本に対する投資の背景の1つにデータ主権の観点が挙げられ、重要データや個人情報を海外に持ち出さず国内で保管したいという要望に対してビッグテックも応えている。もう1つの背景としてアジア太平洋地域全体でデータセンター投資が活発化しており、日本や東南アジアが注目されている点がある。アジアの中で先行してデータセンター投資が進んでいた国の1つであるシンガポールでは過去にデータセンターが国内総電力の7%以上を消費する事態となり2019年に新規建設の一時停止措置が敷かれた。2022年に制限付きで解除されたものの電力効率や受電容量に対する規制に加え国土面積の制約もある。そのため近年では日本やマレーシア(電力が安く土地も比較的確保しやすい)などでビッグテックによるデータセンター投資が行われているようだ。

  1. 1Forbes JAPAN 「AI投資118兆円へ 巨大テック5社が昨年比2倍の巨額資金を投じる背景」(2026/5/1)
  2. 2日経クロステック「Appleの「桁違いに少ない」データセンター投資、その理由と大きな懸念」(2025/5/16)
  3. 3JETRO「トランプ米大統領、政府主導のAIプラットフォーム構築計画「ジェネシス・ミッション」を発表」(2025/11/26)
  4. 4Amazon News「Amazon to invest up to $50 billion to expand AI and supercomputing infrastructure for US government agencies」(2025/11/24)
  5. 5Bloomberg「トランプ氏、デジタル課税巡る関税警告の数日前にメタCEOと会談」(2025/8/29)
  6. 6Bloomberg「メタが建設する「AIの要塞」、30兆円超の大勝負に問われる成算」(2026/5/19)
  7. 7日系XTECH「GoogleピチャイCEO「需要が多様化」 巨額投資に自信、26年に最大30兆円」(2026/5/21)
  8. 8Forbes「グーグル、約6.2兆円を投じAIデータセンター3拠点を米テキサスに新設へ アルファベット、クリーンエネ企業買収 AI推進で電力確保」(2025/11/17)
  9. 9Bloomberg「グーグル、米バージニア州のデータセンターに90億ドル追加投資へ」(2025/8/28)
  10. 10Reuters「アルファベット、クリーンエネ企業買収 AI推進で電力確保」(2025/12/23)
  11. 11Reuters「マイクロソフトとオープンAI、1000億ドル規模のデータセンター計画」(2024/3/30)
  12. 12Amazon News「AWS activates Project Rainier: One of the world’s largest AI compute clusters comes online」(2025/10/29)
  13. 13Reuters 「アマゾン、インディアナ州のデータセンターに150億ドル投資」(2025/11/25)
  14. 14日本経済新聞 「Microsoft、オーストラリアで3兆円投資 データセンター建設」(2026/4/23)
  15. 15Amazon News「Amazon investing AU$20 billion to expand data center infrastructure in Australia and strengthen the nation’s AI future」(2025/6/14)
  16. 16Microsoft 「マイクロソフト、日本の AI 主導型成長に 1 兆 6000 億円を投資。AI インフラ、国家安全保障、人材育成を通じたさらなる国力強化を支援」(2026/4/3)
  17. 17Amazon News「AWS、日本への 2 兆 2,600 億円の投資計画を発表 2027 年までに国内クラウドインフラに継続投資」(2024/1/19)
  18. 18日本経済新聞「オラクル、10年で対日1.2兆円投資 データセンター増設」(2024/4/18)

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    土橋 和成

    未来社会・経済研究室

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