はじめに
FRBは今回(6月)のFOMCで政策金利の現状維持を決定した。新たな見通し(SEP)は、経済を下方修正、物価を上方修正した上で、政策金利の予想パスを引き上げたほか、声明文は見通しの不確実性は依然として高いが減退したとの見方を示した。
経済情勢の評価
パウエル議長は、第1四半期も国内最終民需(PDFP)は年率2.5%成長したほか、個人消費が軟化した一方で設備投資は回復した点を確認した。もっとも、家計と企業のマインドが悪化した点も認め、支出行動への影響はこれから生じうるとした。
また、貿易、移民、財政、規制に関する政策変更は継続しており、経済への影響は依然として不透明とした。このうち、関税引上げの影響は最終的な税率に依存するとし、これらの見方は4月にピークに達した後に低下したとの理解を示した。
今回( 6 月 ) の SEP は 2025 ~ 27 年 の 実質 GDP 成 長 率 を1.4%→1.6%→1.8%と予想し、前回(3月)対比で2025年と26年を各々0.3ppおよび0.2pp下方修正し、2026年にかけて潜在成長率をやや下回って推移するとの見方を示した。
労働市場についてパウエル議長は、雇用者数の増加や低位な失業率に言及しつつ引続き強いとしたほか、賃金上昇率は減速したがインフレ率を上回り、最大雇用の状況にあるとの評価を維持した。なお、今回( 6月) のSEPは2025 ~27 年の失業率を4.5%→4.5%→4.4%と予想し、前回(3月)対比で各々0.1pp、 0.2pp、0.1pp上方修正した。
質疑応答では、複数の記者が関税引上げの影響を踏まえた見通しの妥当性を質した。パウエル議長は、今回(6月)のFOMCでは多くのシナリオを議論したが、高い不透明性の下で全員が合意しうるものはなかったと説明した一方、企業のマインドは(一時の悪化から)変化の兆しもあるとした。一方で、関税引上げの不透明性は4月がピークだったとの理解も確認した。
別の複数の記者は、移民政策の影響や企業による雇用の慎重化を挙げて、労働市場の軟化のリスクを指摘した。パウエル議長は、失業率はNAIRUの推計値の下限を推移しており、slackの増加は限界的と評価した。一方で、離職者の再就職が難しくなっているとも指摘し、需要と供給の双方が減速していることで均衡が維持されているとの理解も示した。
また、貿易、移民、財政、規制に関する政策変更は継続しており、経済への影響は依然として不透明とした。このうち、関税引上げの影響は最終的な税率に依存するとし、これらの見方は4月にピークに達した後に低下したとの理解を示した。
今回( 6 月 ) の SEP は 2025 ~ 27 年 の 実質 GDP 成 長 率 を1.4%→1.6%→1.8%と予想し、前回(3月)対比で2025年と26年を各々0.3ppおよび0.2pp下方修正し、2026年にかけて潜在成長率をやや下回って推移するとの見方を示した。
労働市場についてパウエル議長は、雇用者数の増加や低位な失業率に言及しつつ引続き強いとしたほか、賃金上昇率は減速したがインフレ率を上回り、最大雇用の状況にあるとの評価を維持した。なお、今回( 6月) のSEPは2025 ~27 年の失業率を4.5%→4.5%→4.4%と予想し、前回(3月)対比で各々0.1pp、 0.2pp、0.1pp上方修正した。
質疑応答では、複数の記者が関税引上げの影響を踏まえた見通しの妥当性を質した。パウエル議長は、今回(6月)のFOMCでは多くのシナリオを議論したが、高い不透明性の下で全員が合意しうるものはなかったと説明した一方、企業のマインドは(一時の悪化から)変化の兆しもあるとした。一方で、関税引上げの不透明性は4月がピークだったとの理解も確認した。
別の複数の記者は、移民政策の影響や企業による雇用の慎重化を挙げて、労働市場の軟化のリスクを指摘した。パウエル議長は、失業率はNAIRUの推計値の下限を推移しており、slackの増加は限界的と評価した。一方で、離職者の再就職が難しくなっているとも指摘し、需要と供給の双方が減速していることで均衡が維持されているとの理解も示した。
物価情勢の評価
パウエル議長は、インフレ率が過去2年で顕著に減速したが、足元では2%目標に対してやや高いとの評価を維持した。また、短期のインフレ期待が上昇し、家計や企業、エコノミストが関税引上げを要因と指摘している一方、長期のインフレ期待は安定を維持しているとの見方も維持した。
その上で、関税引上げの影響は、物価水準の1回限りの上昇によって短期に止まる可能性と、持続的になる可能性の双方があるとの見方も維持し、後者の可能性は、関税引上げの影響の大きさや波及の時間的ラグ、長期のインフレ期待に依存するとした。
今回(6月)のSEPは2025~27年のPCEインフレ率を3.0%→2.4%→2.1%と予想し、前回(3月)対比で各々0.3pp、0.2pp、0.1pp上方修正した。同じくコアPCEインフレ率は3.1%→2.4%→2.1%とし、前回(3月)対比で上記と全く同じ幅で上方修正した。
質疑応答では、関税引上げによる物価への波及が取上げられた。パウエル議長は、電子機器等は既に価格が上昇しているが、夏にかけて消費財に広く波及するとの見方を示したほか、サーベイ調査に対して多くの企業が価格転嫁を示唆している点を指摘した。
もっとも、FOMCも民間の専門家も幾分のインフレ率上昇を予想しているが、その程度は企業や家計がコストをどう分担するかに依存するとも指摘した。
一方、別の記者が中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格上昇の影響を質したが、パウエル議長は一時的に止まるとの見方を示したほか、米国のエネルギー供給は1970年代とは大きく異なり、中東への依存が顕著に低下したことを確認した。
その上で、関税引上げの影響は、物価水準の1回限りの上昇によって短期に止まる可能性と、持続的になる可能性の双方があるとの見方も維持し、後者の可能性は、関税引上げの影響の大きさや波及の時間的ラグ、長期のインフレ期待に依存するとした。
今回(6月)のSEPは2025~27年のPCEインフレ率を3.0%→2.4%→2.1%と予想し、前回(3月)対比で各々0.3pp、0.2pp、0.1pp上方修正した。同じくコアPCEインフレ率は3.1%→2.4%→2.1%とし、前回(3月)対比で上記と全く同じ幅で上方修正した。
質疑応答では、関税引上げによる物価への波及が取上げられた。パウエル議長は、電子機器等は既に価格が上昇しているが、夏にかけて消費財に広く波及するとの見方を示したほか、サーベイ調査に対して多くの企業が価格転嫁を示唆している点を指摘した。
もっとも、FOMCも民間の専門家も幾分のインフレ率上昇を予想しているが、その程度は企業や家計がコストをどう分担するかに依存するとも指摘した。
一方、別の記者が中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格上昇の影響を質したが、パウエル議長は一時的に止まるとの見方を示したほか、米国のエネルギー供給は1970年代とは大きく異なり、中東への依存が顕著に低下したことを確認した。
金融政策の運営
パウエル議長は、今後の経済情勢にタイムリーに対応する上で金融政策が良い位置(well positioned)にあるとの考えを確認した。その一方で、デュアルマンデートに緊張が生じる可能性も確認し、各々の目標からの距離とそれらのギャップが埋まる時間的視野の違いを考慮して対応する方針を再度説明した。
今回(6月)のdot chartは2025~27年の各年末の政策金利を3.9%→3.6%→3.4%と予想し、前回(3月)対比で2026年と27年を各々0.2ppおよび0.3pp上方修正した。つまり、2027年にかけて中立金利を上回って推移し続ける見方となったが、FOMCメンバーによる見通しのばらつきは依然として大きい。
質疑応答では、複数の記者が、足元にかけてのインフレの減速と今後の経済の減速見通しを挙げて、利下げの必要性を指摘した。
パウエル議長は、GDP成長率や失業率の面で足元の経済が底堅いとの評価を確認した。また、金融政策をフォワードルッキングに運営する方針を指摘し、これから生ずる関税引上げの経済と物価への影響を見極めるべきとしたほか、物価上昇を1回限りの動きにすることが重要と指摘した。
また、家計が借入れコストの抑制のために利下げを望んでいるとの指摘に対しては、パウエル議長は物価の安定と最大雇用の維持が家計にとって重要であるとし、現在のやや(modestly)引締め的な金融政策が適切と説明した。
他の複数の記者は、今回(6月)のdot chartの前回(3月)からの変化やばらつきの意味あいを取り上げた。
パウエル議長は、中立金利は議論しなかったとした上で、前々回(12月)から前回(3月)と比較しても、経済や物価に関するSEPの修正は同程度であると指摘し、dot chartの変化が政策反応関数、ないしリスク評価の違いを反映したものであることを示唆した。
さらに、dot chartのばらつきのうち後者に基づく影響はデータの入手とともに解消していく点を指摘したほか、利上げは基本シナリオでなく、2025年の政策金利の据え置きを予想するFOMCメンバーも、2026年は数回の利下げを見込んでいると説明した。
今回(6月)のdot chartは2025~27年の各年末の政策金利を3.9%→3.6%→3.4%と予想し、前回(3月)対比で2026年と27年を各々0.2ppおよび0.3pp上方修正した。つまり、2027年にかけて中立金利を上回って推移し続ける見方となったが、FOMCメンバーによる見通しのばらつきは依然として大きい。
質疑応答では、複数の記者が、足元にかけてのインフレの減速と今後の経済の減速見通しを挙げて、利下げの必要性を指摘した。
パウエル議長は、GDP成長率や失業率の面で足元の経済が底堅いとの評価を確認した。また、金融政策をフォワードルッキングに運営する方針を指摘し、これから生ずる関税引上げの経済と物価への影響を見極めるべきとしたほか、物価上昇を1回限りの動きにすることが重要と指摘した。
また、家計が借入れコストの抑制のために利下げを望んでいるとの指摘に対しては、パウエル議長は物価の安定と最大雇用の維持が家計にとって重要であるとし、現在のやや(modestly)引締め的な金融政策が適切と説明した。
他の複数の記者は、今回(6月)のdot chartの前回(3月)からの変化やばらつきの意味あいを取り上げた。
パウエル議長は、中立金利は議論しなかったとした上で、前々回(12月)から前回(3月)と比較しても、経済や物価に関するSEPの修正は同程度であると指摘し、dot chartの変化が政策反応関数、ないしリスク評価の違いを反映したものであることを示唆した。
さらに、dot chartのばらつきのうち後者に基づく影響はデータの入手とともに解消していく点を指摘したほか、利上げは基本シナリオでなく、2025年の政策金利の据え置きを予想するFOMCメンバーも、2026年は数回の利下げを見込んでいると説明した。
プロフィール
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井上 哲也のポートレート 井上 哲也
金融イノベーション研究部
内外金融市場の調査やこれに関わる政策の企画、邦銀国際部門のモニタリングなどを中心とする20年超に亘る中央銀行での執務経験と、国内外の当局や金融機関、研究機関、金融メディアに構築した人脈を活かして、中央銀行の政策対応(”central banking”)に関する議論に貢献。そのための場として「金融市場パネル」を運営し、議論の成果を内外の有識者と幅広く共有するほか、各種のメディアを通じた情報と意見の発信を行っている。2012年には、姉妹パネルとして「バンキングパネル」と「日中金融円卓会合」も立ち上げ、日本の経験を踏まえた商業銀行機能のあり方や中国への教訓といった領域へとカバレッジを広げている。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。