はじめに
政策金利の据え置きを決定したECBの7月理事会では、先行きの不透明性を確認した一方で、経済や物価が前回(6月)の見通しに沿って推移していると判断し、政策金利の現状維持を通じて、今後のより多くの情報を待つことの意義を共有した。
世界経済と為替レートの評価
理事会メンバーは、世界経済が想定以上に底堅い点を確認しつつ、不透明性は高く、ユーロ圏への関税率は前回(6月)の中心シナリオより高まるとの見方を示した。
金融市場の反応が小さい理由については、「ノイズ」でなく実際の決定に注目するようになった点や経済が底堅い点を挙げた一方、無頓着(complacent)になった可能性も指摘したほか、投資や消費が先送りされる点にも懸念を示した。この間、中国のEU向け輸出の増加や輸出価格の低下にも懸念を示したが、中間財が中心である点で域内企業の競争力を高めるとの指摘もあった。
為替市場ではユーロの対ドルでの増価は顕著だが、NEERもアジア通貨の弱さを主因に導入以来で最高水準にあることを確認した。また、本来は高関税国の通貨は増価するはずだが、現在は通貨の相対的需要や金融・財政政策の違い、リスク評価等の要因が強いとの見方を示した。
金融市場の反応が小さい理由については、「ノイズ」でなく実際の決定に注目するようになった点や経済が底堅い点を挙げた一方、無頓着(complacent)になった可能性も指摘したほか、投資や消費が先送りされる点にも懸念を示した。この間、中国のEU向け輸出の増加や輸出価格の低下にも懸念を示したが、中間財が中心である点で域内企業の競争力を高めるとの指摘もあった。
為替市場ではユーロの対ドルでの増価は顕著だが、NEERもアジア通貨の弱さを主因に導入以来で最高水準にあることを確認した。また、本来は高関税国の通貨は増価するはずだが、現在は通貨の相対的需要や金融・財政政策の違い、リスク評価等の要因が強いとの見方を示した。
ユーロ圏の経済活動の評価
理事会メンバーは、第1四半期の経済活動が想定以上であった点を確認しつつ、本年後半には前回(6月)の見通しに沿って減速するとの見方を維持した。ただし、第1四半期に消費や投資の寄与が大きかった点で、駆け込み輸出の影響だけではなかったとの見方も示された。
このうち、企業は製造業を中心に生産見通しが改善したほか、工業生産も顕著に回復した点を確認した。家計の消費も経済成長に寄与しているが、センチメントの弱さや雇用者所得の伸びの低下などによって加速は望みがたいとした。この間、住宅投資と設備投資は第1四半期は驚くほど強かったほか、設備投資には景気回復によるacceleratorの効果も期待できるが、企業には不透明性による「様子見」の姿勢もみられるとした。
輸出も同様に第1四半期には堅調だったが、その後に急減速しており、しかも3月のユーロ圏の対米輸出の増加は、アイルランドによる薬品輸出が主因であった点を確認した。
理事会メンバーは、労働市場が引続き底堅い点を確認し、失業率の歴史的な低さや家計の失業予想の低さに言及した。同時に、未充足求人の減少やPMI雇用指数の低下などの点で、軟化の兆しも指摘した。
最後に、理事会メンバーは先行きのリスクが下方に傾いている点を確認し、通商摩擦の深刻化と不透明性、金融市場のマインドの悪化、地政学的リスク等を要因として挙げた。また、第1四半期の経済成長の強さが駆け込み輸出による点では、反動によって2026年の経済成長率の下方リスクが強まるとの指摘もあった。
このうち、企業は製造業を中心に生産見通しが改善したほか、工業生産も顕著に回復した点を確認した。家計の消費も経済成長に寄与しているが、センチメントの弱さや雇用者所得の伸びの低下などによって加速は望みがたいとした。この間、住宅投資と設備投資は第1四半期は驚くほど強かったほか、設備投資には景気回復によるacceleratorの効果も期待できるが、企業には不透明性による「様子見」の姿勢もみられるとした。
輸出も同様に第1四半期には堅調だったが、その後に急減速しており、しかも3月のユーロ圏の対米輸出の増加は、アイルランドによる薬品輸出が主因であった点を確認した。
理事会メンバーは、労働市場が引続き底堅い点を確認し、失業率の歴史的な低さや家計の失業予想の低さに言及した。同時に、未充足求人の減少やPMI雇用指数の低下などの点で、軟化の兆しも指摘した。
最後に、理事会メンバーは先行きのリスクが下方に傾いている点を確認し、通商摩擦の深刻化と不透明性、金融市場のマインドの悪化、地政学的リスク等を要因として挙げた。また、第1四半期の経済成長の強さが駆け込み輸出による点では、反動によって2026年の経済成長率の下方リスクが強まるとの指摘もあった。
物価情勢の評価
理事会メンバーは、物価が概ね想定通りに推移している点を確認し、基調的インフレ率が2%に接近する一方、エネルギー価格の反発が2026年中のインフレ率の下振れ幅を抑制するとの見方を示した。また、サービス価格の上昇率は高いが、賃金上昇率の更なる減速によって今後に顕著に減速するとの見方を維持した。
これに対し、エネルギーを除く工業製品のインフレ率は安定しており、今後もユーロ相場の増価と中国からの輸入圧力によって安定を維持するとした。もっとも、レアアースに代表されるサプライチェーンの混乱による影響を注視すべきとの意見があったほか、国際商品価格は以前に比べて低下したが、異常気象を背景とする上方リスクがあるとの指摘もあった。
この間、賃金については、契約の交渉状況やサーベイ結果からみて、上昇率が減速傾向にある点を確認し、2025年後半の上昇率は前年に比べて顕著に低いとの見方を示した。もっとも、ULCの低下見通しは、生産性の上昇と供給制約の解消という想定にも依存している点を指摘した。また、理事会メンバーは長期のインフレ期待が概ね2%に収斂している点を確認した。
これに対し、エネルギーを除く工業製品のインフレ率は安定しており、今後もユーロ相場の増価と中国からの輸入圧力によって安定を維持するとした。もっとも、レアアースに代表されるサプライチェーンの混乱による影響を注視すべきとの意見があったほか、国際商品価格は以前に比べて低下したが、異常気象を背景とする上方リスクがあるとの指摘もあった。
この間、賃金については、契約の交渉状況やサーベイ結果からみて、上昇率が減速傾向にある点を確認し、2025年後半の上昇率は前年に比べて顕著に低いとの見方を示した。もっとも、ULCの低下見通しは、生産性の上昇と供給制約の解消という想定にも依存している点を指摘した。また、理事会メンバーは長期のインフレ期待が概ね2%に収斂している点を確認した。
金融政策の運営
理事会メンバーは、政策反応関数の3つの要素を順次検討した。
インフレ見通しに関しては、総合インフレ率の2%目標への収斂が中期的に維持されるとの見方を示した。また、殆ど(most)のメンバーがリスクも概ね上下にバランスしていると評価した。
もっとも、数名(several)のメンバーは、今後の2年間は下方リスクが大きいとし、関税引上げによる世界経済の影響や中国からの輸入圧力、ユーロの増価を要因として挙げ、追加利下げを前提としても2026年にはインフレの下振れが見込まれるとした。
これに対し、数名(a few)のメンバーは上方リスクを取り上げ、エネルギー価格やユーロ相場の反転の可能性、サービスのインフレ率の高止まり、経済活動の底堅さ、異常気象による食品価格の押し上げ、サプライチェーン混乱のリスク、財政支出の拡大を要因として挙げ、市場参加者も見通し期間の後半での上方リスクを意識していると指摘した。
基調的インフレに関しては、多くの指標が2%目標と概ね整合的である点に合意したほか、賃金上昇率の減速と生産性の上昇によるULCの減速見通しを維持した。
最後に、政策効果の波及は引続き円滑と評価したほか、既往の利下げと緩和的な金融環境が経済の底堅さを維持していると評価した。また、利下げ効果がまだ完全に波及していないとの意見があったほか、域内国の財政支出の拡大が中立金利を押し上げ、現在の政策スタンスをより緩和的にする可能性に合意した。
これらを踏まえ、理事会メンバーの全員が政策金利の据え置きに同意し、政策金利が概ね中立的である一方、インフレ環境は良好であり、経済の不透明性が高い下では、政策金利の据え置きが合理的との判断を示した。この点については、通商交渉の進展や既往の利下げの波及を見極める意義を指摘した。
一部に景気や物価の下方リスクを念頭に更なる利下げの必要性を指摘する意見もあったが、多様なシナリオの下でのショックと上下双方のリスクに対応する上で、政策金利の現状維持は頑健なアプローチであり、高いオプション価値を有すると評価した。
インフレ見通しに関しては、総合インフレ率の2%目標への収斂が中期的に維持されるとの見方を示した。また、殆ど(most)のメンバーがリスクも概ね上下にバランスしていると評価した。
もっとも、数名(several)のメンバーは、今後の2年間は下方リスクが大きいとし、関税引上げによる世界経済の影響や中国からの輸入圧力、ユーロの増価を要因として挙げ、追加利下げを前提としても2026年にはインフレの下振れが見込まれるとした。
これに対し、数名(a few)のメンバーは上方リスクを取り上げ、エネルギー価格やユーロ相場の反転の可能性、サービスのインフレ率の高止まり、経済活動の底堅さ、異常気象による食品価格の押し上げ、サプライチェーン混乱のリスク、財政支出の拡大を要因として挙げ、市場参加者も見通し期間の後半での上方リスクを意識していると指摘した。
基調的インフレに関しては、多くの指標が2%目標と概ね整合的である点に合意したほか、賃金上昇率の減速と生産性の上昇によるULCの減速見通しを維持した。
最後に、政策効果の波及は引続き円滑と評価したほか、既往の利下げと緩和的な金融環境が経済の底堅さを維持していると評価した。また、利下げ効果がまだ完全に波及していないとの意見があったほか、域内国の財政支出の拡大が中立金利を押し上げ、現在の政策スタンスをより緩和的にする可能性に合意した。
これらを踏まえ、理事会メンバーの全員が政策金利の据え置きに同意し、政策金利が概ね中立的である一方、インフレ環境は良好であり、経済の不透明性が高い下では、政策金利の据え置きが合理的との判断を示した。この点については、通商交渉の進展や既往の利下げの波及を見極める意義を指摘した。
一部に景気や物価の下方リスクを念頭に更なる利下げの必要性を指摘する意見もあったが、多様なシナリオの下でのショックと上下双方のリスクに対応する上で、政策金利の現状維持は頑健なアプローチであり、高いオプション価値を有すると評価した。
プロフィール
-
井上 哲也のポートレート 井上 哲也
金融イノベーション研究部
内外金融市場の調査やこれに関わる政策の企画、邦銀国際部門のモニタリングなどを中心とする20年超に亘る中央銀行での執務経験と、国内外の当局や金融機関、研究機関、金融メディアに構築した人脈を活かして、中央銀行の政策対応(”central banking”)に関する議論に貢献。そのための場として「金融市場パネル」を運営し、議論の成果を内外の有識者と幅広く共有するほか、各種のメディアを通じた情報と意見の発信を行っている。2012年には、姉妹パネルとして「バンキングパネル」と「日中金融円卓会合」も立ち上げ、日本の経験を踏まえた商業銀行機能のあり方や中国への教訓といった領域へとカバレッジを広げている。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。