はじめに
FRBは今回(9月)のFOMCで政策金利の25bp引下げを決定した。声明文は、雇用の下方リスクの高まりによりリスクバランスが変化した点を利下げの理由として説明した。なお、dot chartは、年内2回、来年1回の利下げが多数派である点を示したが、いずれも大きなばらつきがみられる。
経済情勢の評価
パウエル議長は、年前半の実質GDP成長率が1.5%と昨年後半の2.5%から減速した点を指摘し、消費の減速を主因に挙げたが、設備投資の回復も同時に指摘した。
一方、労働市場での雇用者数の顕著な減速を確認した。その上で、移民の減少や労働参加率の低下といった供給要因の影響が大きいと指摘しつつも、雇用者増がbreakevenの水準(失業率を一定に保つのに必要な水準)を下回り、雇用の下方リスクが増加したとの見方を示した。
今回(9月)のSEPによれば、2025から27年の実質GDP成長率見通し(median)は1.6%→1.8%→1.9%となり、前回(6月)に比べて各々0.2pp、0.2pp、0.1pp上昇修正された。この間、「長期」成長率は1.8%に据え置かれたので、来年には潜在成長率に回帰するとの意味合いを持つ。
質疑応答では複数の記者が経済の底堅さを取り上げた。パウエル議長は、設備投資がAI関連に支えられて回復している点を強調したほか、先行きの経済は大きな懸念でないとの考えを示した。
別の複数の記者は、AI利用の拡大が若年層を中心に雇用に影響している可能性に懸念を示した。パウエル議長はマクロ的な影響は不透明としつつも、若年層や移民の雇用が低調であることを認めた。もっとも、現時点では大規模なレイオフは生じておらず、労働需要の減退の状況にあると評価した。なお、パウエル議長は上記のbreakevenについて、0~5万人の範囲にあるとの見方も示した。
一方、労働市場での雇用者数の顕著な減速を確認した。その上で、移民の減少や労働参加率の低下といった供給要因の影響が大きいと指摘しつつも、雇用者増がbreakevenの水準(失業率を一定に保つのに必要な水準)を下回り、雇用の下方リスクが増加したとの見方を示した。
今回(9月)のSEPによれば、2025から27年の実質GDP成長率見通し(median)は1.6%→1.8%→1.9%となり、前回(6月)に比べて各々0.2pp、0.2pp、0.1pp上昇修正された。この間、「長期」成長率は1.8%に据え置かれたので、来年には潜在成長率に回帰するとの意味合いを持つ。
質疑応答では複数の記者が経済の底堅さを取り上げた。パウエル議長は、設備投資がAI関連に支えられて回復している点を強調したほか、先行きの経済は大きな懸念でないとの考えを示した。
別の複数の記者は、AI利用の拡大が若年層を中心に雇用に影響している可能性に懸念を示した。パウエル議長はマクロ的な影響は不透明としつつも、若年層や移民の雇用が低調であることを認めた。もっとも、現時点では大規模なレイオフは生じておらず、労働需要の減退の状況にあると評価した。なお、パウエル議長は上記のbreakevenについて、0~5万人の範囲にあるとの見方も示した。
物価情勢の評価
パウエル議長は、インフレ率が過去2年で顕著に減速したが、2%目標に対べてやや高いとの評価を維持した。また、財価格の上昇率が加速した一方、サービスのディスインフレは継続しているとした。この間、短期のインフレ期待は上昇したが、2年先以降のインフレ期待は2%目標と整合的との評価を維持した。
また、関税引上げが一部の財価格を押し上げているが、全体の影響は未定とし、影響が短期に止まるのが基本シナリオだが、高インフレが持続化するリスクに対応すべきとした。
今回(9月)のSEPによれば、2025から27年のPCEインフレ率見通し(median)は3.0%→2.6%→2.1%となり、前回(6月)に比べて2026年が0.2pp上昇修正された。この特徴はコアでも共通し2026年のみが前回(6月)の2.4%から2.6%へ上方修正された。
質疑応答では複数の記者が関税引上げの影響を取り上げた。
パウエル議長は、(相手国の)輸出企業でなく、(米国の)輸入企業から家計へのプロセスが負担しているとの理解を示した。また、関税引上げの影響は一部の財に現れ、PCEインフレ率を0.3pp程度押し上げているとの見方も示した。また、価格転嫁を示唆する企業が全てではないとの理解も付言した。
さらに、関税引上げが家計の生活費を押し上げているとの批判に対しては、パウエル議長は、想定したより影響が小さくかつ遅延しているとの見方を確認した上で、今後も、労働市場の減速などを踏まえると、総需要面からインフレを押し上げるリスクは低いとの見方を示唆した。
また、関税引上げが一部の財価格を押し上げているが、全体の影響は未定とし、影響が短期に止まるのが基本シナリオだが、高インフレが持続化するリスクに対応すべきとした。
今回(9月)のSEPによれば、2025から27年のPCEインフレ率見通し(median)は3.0%→2.6%→2.1%となり、前回(6月)に比べて2026年が0.2pp上昇修正された。この特徴はコアでも共通し2026年のみが前回(6月)の2.4%から2.6%へ上方修正された。
質疑応答では複数の記者が関税引上げの影響を取り上げた。
パウエル議長は、(相手国の)輸出企業でなく、(米国の)輸入企業から家計へのプロセスが負担しているとの理解を示した。また、関税引上げの影響は一部の財に現れ、PCEインフレ率を0.3pp程度押し上げているとの見方も示した。また、価格転嫁を示唆する企業が全てではないとの理解も付言した。
さらに、関税引上げが家計の生活費を押し上げているとの批判に対しては、パウエル議長は、想定したより影響が小さくかつ遅延しているとの見方を確認した上で、今後も、労働市場の減速などを踏まえると、総需要面からインフレを押し上げるリスクは低いとの見方を示唆した。
金融政策の運営
パウエル議長は、リスクバランスの変化を踏まえ、より中立的な政策スタンスに一歩踏み出すことが適当と判断し、25bpの利上げを決定したと説明した。また、今後の経済情勢にタイムリーに対応する上で良い位置(well positioned)にあるとした。
今回(9月)のdot chartでは、2025から27年の各年末の政策金利の予想値(median)は3.6%→3.4%→3.1%となり、前回(6月)に比べて各年が各々0.3pp、0.2pp、0.3ppの下方修正となった。
実際、2025年中に25bp×2回の追加利下げ、来年入り後に25bp利下げを見込む向きが多数だが、2025年は追加利下げ不要および利下げ1回との意見が利下げ2回の意見と拮抗し、2026年は利下げの最低到達点の見方が2.5~2.75%を下限に大きくばらついている。
質疑応答では、複数の記者が、FOMCとして経済を底堅いと評価している中での利下げの合理性を質した。
パウエル議長は、経済見通しは前回(6月)と大きく変わっていないが、リスクバランスが変化したことを確認した。また、利下げには決まった道筋がないとした一方、1回の25bpの利下げ自体ではなく政策金利のパスが重要と指摘した。さらに、金融市場が継続的な利下げを予想している点とは距離を置きつつも、dot chartはそうした予想を示している点も確認した。
別の複数の記者はdot chartのばらつきの大きさを取り上げた。パウエル議長は、ミラン理事が50bp利下げを主張して反対票を投じた点を念頭に、過去に50bp利下げしたのは経済が見通しから大きく乖離した局面であると説明し、現在はそうではないとの判断を示唆した。その上で、極めて高い不透明性の下で、意見が分かれるのは自然との立場も維持した。
今回の記者会見では、FRBの独立性を巡る論点も多く提示された。まず、FOMCの議論を誰が主導しているかわからないとの懸念に対し、パウエル議長は、FOMCはあくまでデータに即して判断するとの原則を確認した。
また、ミラン理事がCEA委員長に在職したままFRB理事に就任したことへの懸念には、FOMCは12名の投票で政策を決定するので、個々の票が影響する訳でなく、個々のメンバーは自らの見通しに沿って判断すると説明した。さらに、FRBへの信認の低下がインフレ期待を不安定化するとの懸念には、現時点で金融市場にそうした影響は生じていないとの見方を示した。
なお、ベッセント財務長官がFRBの独立性に対する評価の必要性を示唆していることに対しては、パウエル議長は、建設的な批判には耳を傾けるとした上で、地区連銀を含むFederal Reserve System全体としての政策の枠組みに関する自発的な改革や総人員の10%削減を進めていると説明した。
今回(9月)のdot chartでは、2025から27年の各年末の政策金利の予想値(median)は3.6%→3.4%→3.1%となり、前回(6月)に比べて各年が各々0.3pp、0.2pp、0.3ppの下方修正となった。
実際、2025年中に25bp×2回の追加利下げ、来年入り後に25bp利下げを見込む向きが多数だが、2025年は追加利下げ不要および利下げ1回との意見が利下げ2回の意見と拮抗し、2026年は利下げの最低到達点の見方が2.5~2.75%を下限に大きくばらついている。
質疑応答では、複数の記者が、FOMCとして経済を底堅いと評価している中での利下げの合理性を質した。
パウエル議長は、経済見通しは前回(6月)と大きく変わっていないが、リスクバランスが変化したことを確認した。また、利下げには決まった道筋がないとした一方、1回の25bpの利下げ自体ではなく政策金利のパスが重要と指摘した。さらに、金融市場が継続的な利下げを予想している点とは距離を置きつつも、dot chartはそうした予想を示している点も確認した。
別の複数の記者はdot chartのばらつきの大きさを取り上げた。パウエル議長は、ミラン理事が50bp利下げを主張して反対票を投じた点を念頭に、過去に50bp利下げしたのは経済が見通しから大きく乖離した局面であると説明し、現在はそうではないとの判断を示唆した。その上で、極めて高い不透明性の下で、意見が分かれるのは自然との立場も維持した。
今回の記者会見では、FRBの独立性を巡る論点も多く提示された。まず、FOMCの議論を誰が主導しているかわからないとの懸念に対し、パウエル議長は、FOMCはあくまでデータに即して判断するとの原則を確認した。
また、ミラン理事がCEA委員長に在職したままFRB理事に就任したことへの懸念には、FOMCは12名の投票で政策を決定するので、個々の票が影響する訳でなく、個々のメンバーは自らの見通しに沿って判断すると説明した。さらに、FRBへの信認の低下がインフレ期待を不安定化するとの懸念には、現時点で金融市場にそうした影響は生じていないとの見方を示した。
なお、ベッセント財務長官がFRBの独立性に対する評価の必要性を示唆していることに対しては、パウエル議長は、建設的な批判には耳を傾けるとした上で、地区連銀を含むFederal Reserve System全体としての政策の枠組みに関する自発的な改革や総人員の10%削減を進めていると説明した。
プロフィール
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井上 哲也のポートレート 井上 哲也
金融イノベーション研究部
内外金融市場の調査やこれに関わる政策の企画、邦銀国際部門のモニタリングなどを中心とする20年超に亘る中央銀行での執務経験と、国内外の当局や金融機関、研究機関、金融メディアに構築した人脈を活かして、中央銀行の政策対応(”central banking”)に関する議論に貢献。そのための場として「金融市場パネル」を運営し、議論の成果を内外の有識者と幅広く共有するほか、各種のメディアを通じた情報と意見の発信を行っている。2012年には、姉妹パネルとして「バンキングパネル」と「日中金融円卓会合」も立ち上げ、日本の経験を踏まえた商業銀行機能のあり方や中国への教訓といった領域へとカバレッジを広げている。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。