はじめに
FRBは今回(12月)のFOMCでも政策金利の25bp引下げを決定した。声明文は、今後の政策変更の程度と時期が焦点であることを明記したほか、パウエル議長は政策金利が中立金利の推計レンジの妥当な範囲に入ったとの見方を示した。
経済情勢の評価
パウエル議長は、入手可能なデータは経済活動の緩やかな拡大を示唆しているとの見方を示し、消費は底堅く、設備投資は拡大している点を確認した。また、政府機関の閉鎖の影響は第4四半期に生ずるが、来期の回復によって相殺されるとした。
今回改訂された実質GDP成長率の見通しは、2025~28年にかけて1.7%→2.3%→2.0%→1.9%となり、前回(9月)に比べて、各々0.1pp、0.5pp、0.1pp、0.1pp上方修正された。来年の修正幅が大きいほか、来年以降は潜在成長率を上回り続けることを示唆する。
質疑応答では、複数の記者がAIの効果を取り上げた。パウエル議長は、5~6年に亘って生産性が2%を超える伸びを示すことは想定外だったとした。その上で、コロナ禍後の生産の自動化等も寄与している一方、AIを利用する人々の生産性が向上したと指摘した。
別の記者が消費のばらつき(K-shape)を取り上げたのに対し、パウエル議長は、資産価格の上昇が高所得層を支えている一方、低所得層が生活費の上昇に直面している点を認めた。その上で、金融政策にできることは持続的な景気拡大の維持であり、足元では実質賃金の増加が生じていると指摘した。
労働市場についてパウエル議長は、lay offと雇用の双方が低位であり、家計の雇用判断と企業の人手不足感もともに低下したと説明した。また、雇用の軟化は、移民の減少と労働参加率の低下を映じた労働力増加の減速と、労働需要の軟化の双方によるとした。ただし、今回改訂された失業率の見通しは、2025~28年にかけて4.5%→4.4%→4.2%→4.2%となり、前回(9月)に比べて、2027年のみが0.1pp引き下げられ、全体として不変に維持された。
質疑応答では雇用者の減速に懸念が示されたのに対し、パウエル議長は、十分なデータが入手できない点に加えて、雇用統計の過大評価バイアス(年次改訂での下方修正を繰り返す点)を認識していると指摘し、ある程度は想定内であったとの見方を示唆した。別の記者がAI導入による雇用への影響を質したのに対しては、パウエル議長は、現時点で影響はあるが、大規模なlay offにつながっている訳ではないと評価した。
今回改訂された実質GDP成長率の見通しは、2025~28年にかけて1.7%→2.3%→2.0%→1.9%となり、前回(9月)に比べて、各々0.1pp、0.5pp、0.1pp、0.1pp上方修正された。来年の修正幅が大きいほか、来年以降は潜在成長率を上回り続けることを示唆する。
質疑応答では、複数の記者がAIの効果を取り上げた。パウエル議長は、5~6年に亘って生産性が2%を超える伸びを示すことは想定外だったとした。その上で、コロナ禍後の生産の自動化等も寄与している一方、AIを利用する人々の生産性が向上したと指摘した。
別の記者が消費のばらつき(K-shape)を取り上げたのに対し、パウエル議長は、資産価格の上昇が高所得層を支えている一方、低所得層が生活費の上昇に直面している点を認めた。その上で、金融政策にできることは持続的な景気拡大の維持であり、足元では実質賃金の増加が生じていると指摘した。
労働市場についてパウエル議長は、lay offと雇用の双方が低位であり、家計の雇用判断と企業の人手不足感もともに低下したと説明した。また、雇用の軟化は、移民の減少と労働参加率の低下を映じた労働力増加の減速と、労働需要の軟化の双方によるとした。ただし、今回改訂された失業率の見通しは、2025~28年にかけて4.5%→4.4%→4.2%→4.2%となり、前回(9月)に比べて、2027年のみが0.1pp引き下げられ、全体として不変に維持された。
質疑応答では雇用者の減速に懸念が示されたのに対し、パウエル議長は、十分なデータが入手できない点に加えて、雇用統計の過大評価バイアス(年次改訂での下方修正を繰り返す点)を認識していると指摘し、ある程度は想定内であったとの見方を示唆した。別の記者がAI導入による雇用への影響を質したのに対しては、パウエル議長は、現時点で影響はあるが、大規模なlay offにつながっている訳ではないと評価した。
物価情勢の評価
パウエル議長は、インフレ率が過去2年で顕著に減速したが、2%目標よりやや高いとの評価を維持した。また、9月までのPCEに基き、財価格の上昇率が関税引上げの影響等により年初より高いが、サービス価格のディスインフレは継続しているとの見方を示した。
この間、長期の予想インフレ率は2%目標と整合的としたほか、関税引上げの影響は比較的短期、かつ一過的な価格上昇との見方が基本シナリオである点も確認した。
今回改訂されたPCEインフレ率の見通しは、2025~28年にかけて2.9%→2.4%→2.1%→2.0%となり、前回(9月)に比べて、2027~28年が各々0.1pp、0.5pp下方修正された。同コアインフレ率の見通しは、2025~28年にかけて3.0%→2.5%→2.1%→2.0%となり、前回(9月)に比べて、2027~28年が各々0.1pp引下げられた。
質疑応答では、複数の記者がインフレ見通しの下方修正を取り上げた。パウエル議長は、生産性の上昇を考慮したと説明したほか、既往の関税引上げの影響は来年第1四半期がピークになるとの見方も示し、影響が想定より抑制的であることを示唆した。別の記者はインフレの下方リスクを取り上げたが、パウエル議長は、関税引上げの影響が持続化するリスクや労働市場のタイト化の可能性に関し、FOMCメンバーの見方が様々に異なると指摘した。
この間、長期の予想インフレ率は2%目標と整合的としたほか、関税引上げの影響は比較的短期、かつ一過的な価格上昇との見方が基本シナリオである点も確認した。
今回改訂されたPCEインフレ率の見通しは、2025~28年にかけて2.9%→2.4%→2.1%→2.0%となり、前回(9月)に比べて、2027~28年が各々0.1pp、0.5pp下方修正された。同コアインフレ率の見通しは、2025~28年にかけて3.0%→2.5%→2.1%→2.0%となり、前回(9月)に比べて、2027~28年が各々0.1pp引下げられた。
質疑応答では、複数の記者がインフレ見通しの下方修正を取り上げた。パウエル議長は、生産性の上昇を考慮したと説明したほか、既往の関税引上げの影響は来年第1四半期がピークになるとの見方も示し、影響が想定より抑制的であることを示唆した。別の記者はインフレの下方リスクを取り上げたが、パウエル議長は、関税引上げの影響が持続化するリスクや労働市場のタイト化の可能性に関し、FOMCメンバーの見方が様々に異なると指摘した。
政策金利の運営
パウエル議長は、物価の上方リスクと雇用の下方リスクが併存する困難な局面にある点を確認しつつ、足元での後者の強まりによるリスクバランスの変化を踏まえて25bpの利上げを決定したと説明した。なお、シュミッド総裁(カンザス連銀)とグールズビー総裁(シカゴ連銀)が現状維持を、ミラン理事が50bp利下げを各々主張して反対票を投じた。
パウエル議長は、9月以降の75bp利下げによって、政策金利が中立 金 利 の 推 計 レ ン ジ の 妥当 な 範 囲 ( range of plausible estimates)に入ったとの見方を示し、今後の政策金利の調整の程度と時期(extent and timing)を見極める上で良い位置(well positioned)にあるとの見方を示した。
また、今回改訂された政策金利の予想パスも、2026~28年末にかけて3.4%→3.1%→3.1%と前回(9月)と不変に維持されたが、 dot chartのばらつきは下方に大きい。なお、FOMCメンバーによる「長期」の政策金利(事実上の中立金利)は、medianは3.0%、中心レンジは2.8%~3.5%で、いずれも前回(9月)と同じだった。
質疑応答では、中立金利や政策変更の「程度と時期」といった新たな言及を捉えて、利下げサイクルの停止如何を質す向きが多かったほか、インフレの上方リスクへの保険は十分なのかとの指摘があった。パウエル議長は、新たな言及の重要性を確認した上で、政策金利にリスクフリーの経路はないと指摘し、1月までに多くのデータが入手可能であるほか、物価と雇用の双方で家計ベースの統計に歪みが大きいとして、今後の政策運営の柔軟性を維持した。
また、FOMC内で意見の違いが大きい点については、パウエル議長は非常によい議論ができていると評価し、インフレの上方リスクと雇用の下方リスクの双方に全員が合意しているが、意見の相違は各々に対するウエイト付けであると説明した。さらに、こうした意見の相違がコミュニケーション上の問題との見方も否定した。
別の記者は、10月FOMCの直後には政策金利の本年中の現状維持を示唆したのに、今回は利下げに至った理由を質した。パウエル議長は、労働市場の軟化とディスインフレの継続を理由として挙げたほか、ECI等のデータはフィリップスカーブに沿ったインフレ(需要要因によるインフレ)を示唆していないと指摘した。
このほか、複数の記者が1990年代のFRBによる政策金利の運営パターンを取り上げ、今回も中立金利に到達した後、利上げに転じる可能性を指摘したが、パウエル議長は経済状況が異なるとして直接的なモデルにならないと説明した。
パウエル議長は、9月以降の75bp利下げによって、政策金利が中立 金 利 の 推 計 レ ン ジ の 妥当 な 範 囲 ( range of plausible estimates)に入ったとの見方を示し、今後の政策金利の調整の程度と時期(extent and timing)を見極める上で良い位置(well positioned)にあるとの見方を示した。
また、今回改訂された政策金利の予想パスも、2026~28年末にかけて3.4%→3.1%→3.1%と前回(9月)と不変に維持されたが、 dot chartのばらつきは下方に大きい。なお、FOMCメンバーによる「長期」の政策金利(事実上の中立金利)は、medianは3.0%、中心レンジは2.8%~3.5%で、いずれも前回(9月)と同じだった。
質疑応答では、中立金利や政策変更の「程度と時期」といった新たな言及を捉えて、利下げサイクルの停止如何を質す向きが多かったほか、インフレの上方リスクへの保険は十分なのかとの指摘があった。パウエル議長は、新たな言及の重要性を確認した上で、政策金利にリスクフリーの経路はないと指摘し、1月までに多くのデータが入手可能であるほか、物価と雇用の双方で家計ベースの統計に歪みが大きいとして、今後の政策運営の柔軟性を維持した。
また、FOMC内で意見の違いが大きい点については、パウエル議長は非常によい議論ができていると評価し、インフレの上方リスクと雇用の下方リスクの双方に全員が合意しているが、意見の相違は各々に対するウエイト付けであると説明した。さらに、こうした意見の相違がコミュニケーション上の問題との見方も否定した。
別の記者は、10月FOMCの直後には政策金利の本年中の現状維持を示唆したのに、今回は利下げに至った理由を質した。パウエル議長は、労働市場の軟化とディスインフレの継続を理由として挙げたほか、ECI等のデータはフィリップスカーブに沿ったインフレ(需要要因によるインフレ)を示唆していないと指摘した。
このほか、複数の記者が1990年代のFRBによる政策金利の運営パターンを取り上げ、今回も中立金利に到達した後、利上げに転じる可能性を指摘したが、パウエル議長は経済状況が異なるとして直接的なモデルにならないと説明した。
プロフィール
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井上 哲也のポートレート 井上 哲也
金融イノベーション研究部
内外金融市場の調査やこれに関わる政策の企画、邦銀国際部門のモニタリングなどを中心とする20年超に亘る中央銀行での執務経験と、国内外の当局や金融機関、研究機関、金融メディアに構築した人脈を活かして、中央銀行の政策対応(”central banking”)に関する議論に貢献。そのための場として「金融市場パネル」を運営し、議論の成果を内外の有識者と幅広く共有するほか、各種のメディアを通じた情報と意見の発信を行っている。2012年には、姉妹パネルとして「バンキングパネル」と「日中金融円卓会合」も立ち上げ、日本の経験を踏まえた商業銀行機能のあり方や中国への教訓といった領域へとカバレッジを広げている。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。