はじめに
ECBは今回(12月)の理事会でも政策金利(預金ファシリティー金利)を2%に維持することを全会一致で決定した。新たな執行部見通しは経済成長率とインフレ率をともに上方修正したほか、ラガルド総裁は(経済や物価が)引続きgood placeにある点に理事会メンバーが合意したと説明した。
経済情勢の評価
ラガルド総裁は、足元の経済が消費と設備投資の双方によって底堅く推移し、輸出も化学製品を中心に想定以上に増加したと評価した。この間、情報通信等のサービス生産が拡大した一方、財の生産は横ばいであったと説明したほか、労働市場も引続き強いが労働需要には軟化もみられるとした。
また、今後も内需が牽引力になるとの見方を示し、消費が実質購買力の増加と貯蓄率の緩やかな低下に支えられるほか、民間と政府の双方による設備投資が増加を続けるとした。これに対し、国際貿易の厳しい環境は下押し要因になるとした。
実質GDP成長率に関する新たな執行部見通しは、2025~27年にかけて1.4%→1.2%→1.4%となり、前回(9月)に比べて、各々0.2pp、0.2pp、0.1pp上方修正された。
ラガルド総裁は、先行きのリスクに関して、通商摩擦は緩和したが、サプライチェーンの混乱、金融市場のセンチメントの悪化、地政学的対立といった不透明要因を挙げた。同時に、国防費やインフラ投資による想定以上の生産性の上昇と、企業や家計のセンチメントの改善を上方要因として挙げた。
質疑応答では経済見通しの上方修正が取り上げられた。ラガルド総裁は、理事会が経済構造の変化を検討していると説明し、大企業に限らず中小企業も含む設備投資の増加が想定以上に強い点を確認した。さらに、その多くがAIの発展に関連しており、コンピューターや通信、無形資産の領域に関わるとした。
その上でラガルド総裁は、次回( 2月) 会合では、域内国のsurveillance reportや財政政策と供給側の分析等をもとに、これらの内容や効果についてより詳細なレビューを行う考えを示した。
また、ラガルド総裁は、足元での輸出の回復も想定外であったと付言し、特にアイルランドからの(米国の関税引上げに対する)化学製品の駆け込み輸出の反動を予想していたが、実際にはこれまで持ちこたえており、今後の動向を注視するとした。
また、今後も内需が牽引力になるとの見方を示し、消費が実質購買力の増加と貯蓄率の緩やかな低下に支えられるほか、民間と政府の双方による設備投資が増加を続けるとした。これに対し、国際貿易の厳しい環境は下押し要因になるとした。
実質GDP成長率に関する新たな執行部見通しは、2025~27年にかけて1.4%→1.2%→1.4%となり、前回(9月)に比べて、各々0.2pp、0.2pp、0.1pp上方修正された。
ラガルド総裁は、先行きのリスクに関して、通商摩擦は緩和したが、サプライチェーンの混乱、金融市場のセンチメントの悪化、地政学的対立といった不透明要因を挙げた。同時に、国防費やインフラ投資による想定以上の生産性の上昇と、企業や家計のセンチメントの改善を上方要因として挙げた。
質疑応答では経済見通しの上方修正が取り上げられた。ラガルド総裁は、理事会が経済構造の変化を検討していると説明し、大企業に限らず中小企業も含む設備投資の増加が想定以上に強い点を確認した。さらに、その多くがAIの発展に関連しており、コンピューターや通信、無形資産の領域に関わるとした。
その上でラガルド総裁は、次回( 2月) 会合では、域内国のsurveillance reportや財政政策と供給側の分析等をもとに、これらの内容や効果についてより詳細なレビューを行う考えを示した。
また、ラガルド総裁は、足元での輸出の回復も想定外であったと付言し、特にアイルランドからの(米国の関税引上げに対する)化学製品の駆け込み輸出の反動を予想していたが、実際にはこれまで持ちこたえており、今後の動向を注視するとした。
物価情勢の評価
ラガルド総裁は、本年春以降にインフレ率が狭いレンジ内で安定し、11月のHICP総合インフレ率が2.1%になった点を確認した。また、同コアも2.4%となり、サービス価格の上昇率が3.4%と高止まった一方、財価格の上昇率は0.5%に減速したと説明した。
この間、インフレ基調の指標は引続き2%目標に概ね整合的である点を確認した。この間、ULCがやや上昇したほか、一人当たり報酬も4%と一時的要因のため想定以上に上昇したが、ECBのサーベイ等によれば2026年末には賃金上昇率は3%に向けて低下するとの見通しを維持した。
HICPインフレ率に関する新たな執行部見通しは、2025~27年にかけて2.1%→1.9%→1.8%となり、前回(9月)に比べて、2026年が0.2ppの上方修正、2027年が0.1ppの下方修正となった。また、同コアは、2025~27年にかけて2.4%→2.2%→1.9%となり、 2026~27年が各々0.3pp、0.1ppの上方修正となった。
ラガルド総裁は、先行きのリスクが国際的な通商情勢を主因に不透明との評価を維持し、下方要因として高関税による輸出の減少、過剰生産能力を有する国からの輸入圧力、ユーロ高、金融市場でのリスク回避を、上方要因としてサプライチェーンの分断、レアアースの供給制約、賃金上昇率の減速の遅延、国防費やインフラ投資の増加、異常気象を挙げた。
質疑応答ではサービス価格の上昇が取り上げられた。ラガルド総裁は、賃金の想定以上の上昇がサービス価格に波及しているとの見方を示した。また、ECBによる想定は、主要8か国をカバーするサーベイ等による契約賃金の調査に基づくが、足元で一過性の賃金支払が幅広く生じているとの理解を示した。その上で、サービス業は幅広い業種を含むため、より詳細な分析が有用との考えを示した。
この間、インフレ基調の指標は引続き2%目標に概ね整合的である点を確認した。この間、ULCがやや上昇したほか、一人当たり報酬も4%と一時的要因のため想定以上に上昇したが、ECBのサーベイ等によれば2026年末には賃金上昇率は3%に向けて低下するとの見通しを維持した。
HICPインフレ率に関する新たな執行部見通しは、2025~27年にかけて2.1%→1.9%→1.8%となり、前回(9月)に比べて、2026年が0.2ppの上方修正、2027年が0.1ppの下方修正となった。また、同コアは、2025~27年にかけて2.4%→2.2%→1.9%となり、 2026~27年が各々0.3pp、0.1ppの上方修正となった。
ラガルド総裁は、先行きのリスクが国際的な通商情勢を主因に不透明との評価を維持し、下方要因として高関税による輸出の減少、過剰生産能力を有する国からの輸入圧力、ユーロ高、金融市場でのリスク回避を、上方要因としてサプライチェーンの分断、レアアースの供給制約、賃金上昇率の減速の遅延、国防費やインフラ投資の増加、異常気象を挙げた。
質疑応答ではサービス価格の上昇が取り上げられた。ラガルド総裁は、賃金の想定以上の上昇がサービス価格に波及しているとの見方を示した。また、ECBによる想定は、主要8か国をカバーするサーベイ等による契約賃金の調査に基づくが、足元で一過性の賃金支払が幅広く生じているとの理解を示した。その上で、サービス業は幅広い業種を含むため、より詳細な分析が有用との考えを示した。
金融政策の運営
今回(12月)の声明文は、インフレ率が中期目標である2%で安定するとの見方を示し、政策金利の現状維持を決定したと説明した。ラガルド総裁は、質疑応答の中で全会一致での決定であったほか、利下げや利上げの議論はなかったと説明した。
また、今後の政策金利に関しても、①データに即して毎回の会合で判断、②(政策反応関数を構成する)3つの要素(物価見通し、インフレ基調の動向、金融政策の波及度合い)の評価に照らして判断、という方針を確認した。
質疑応答では「(物価や経済は)good place」との表現が依然として妥当するかどうかが取り上げられた。ラガルド総裁は、理事会メンバーがこの点で合意した一方、だからと言って政策運営が静態的である訳でないとも付言した。
別な記者は、シュナーベル理事がメディアに対し次の政策変更は利上げと発言した点を取り上げた。ラガルド総裁は、物価見通しを上方修正した点を確認しつつ、先行きの不透明性の高さには変わりがない点を指摘した。また、理事会メンバーは政策変更の全ての選択肢にも合意しており、このような不透明性の下ではフォワードガイダンスは不可能との考えを示した。
さらに別の記者は、ユーロのNEERが歴史的高水準になっている点を取り上げた。ラガルド総裁は、為替レートは政策目標ではないが、リスク要因として声明文に言及している点を確認したほか、特に人民元相場の動向を注視していると説明した。
また、今後の政策金利に関しても、①データに即して毎回の会合で判断、②(政策反応関数を構成する)3つの要素(物価見通し、インフレ基調の動向、金融政策の波及度合い)の評価に照らして判断、という方針を確認した。
質疑応答では「(物価や経済は)good place」との表現が依然として妥当するかどうかが取り上げられた。ラガルド総裁は、理事会メンバーがこの点で合意した一方、だからと言って政策運営が静態的である訳でないとも付言した。
別な記者は、シュナーベル理事がメディアに対し次の政策変更は利上げと発言した点を取り上げた。ラガルド総裁は、物価見通しを上方修正した点を確認しつつ、先行きの不透明性の高さには変わりがない点を指摘した。また、理事会メンバーは政策変更の全ての選択肢にも合意しており、このような不透明性の下ではフォワードガイダンスは不可能との考えを示した。
さらに別の記者は、ユーロのNEERが歴史的高水準になっている点を取り上げた。ラガルド総裁は、為替レートは政策目標ではないが、リスク要因として声明文に言及している点を確認したほか、特に人民元相場の動向を注視していると説明した。
総裁人事
質疑応答では、ロシアの凍結資産を用いたウクライナ支援に対するECBの関与のあり方(財政ファイナンス問題)に加えて、 2027年10月末に任期満了となる総裁人事も提起された。主たる論点は、ECBの設立以来初めてドイツ出身者が総裁になるか、現職理事は総裁になれるかである。ラガルド総裁は、特定の人物を支持する訳ではない点を強調しつつ、後者の可能性はこれまで否定されてきたが、再検討の必要があるとの考えを示した。
プロフィール
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井上 哲也のポートレート 井上 哲也
金融イノベーション研究部
内外金融市場の調査やこれに関わる政策の企画、邦銀国際部門のモニタリングなどを中心とする20年超に亘る中央銀行での執務経験と、国内外の当局や金融機関、研究機関、金融メディアに構築した人脈を活かして、中央銀行の政策対応(”central banking”)に関する議論に貢献。そのための場として「金融市場パネル」を運営し、議論の成果を内外の有識者と幅広く共有するほか、各種のメディアを通じた情報と意見の発信を行っている。2012年には、姉妹パネルとして「バンキングパネル」と「日中金融円卓会合」も立ち上げ、日本の経験を踏まえた商業銀行機能のあり方や中国への教訓といった領域へとカバレッジを広げている。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。