はじめに
FRBは今回(1月)のFOMCで政策金利の現状維持を決定した(2名が25bp利下げを主張して反対)。声明文は経済活動の力強さと失業率の安定の兆しを明記し、パウエル議長もリスクバランスの好転を認めるなど、総じてみれば当面の様子見姿勢を示唆した。
経済情勢の評価
パウエル議長は、経済活動が力強く拡大しているとの見方を示し、住宅部門は弱いが、消費は底堅く、設備投資の拡大が続いていると評価した。また、政府機関の(前回の)閉鎖の影響は第4四半期の経済を下押ししたが、今期の回復によって相殺されるとした。
労働市場については、関連指標が安定の兆しを示していると評価し、例として、失業率に加えて、lay off、雇用、名目賃金を挙げた。また、この間の雇用増の減速は移民の減少と労働参加の低下による面が大きいが、労働需要も軟化しているとの見方を示した。
質疑応答では、複数の記者が関連指標の不十分さの下での労働市場の判断の妥当性を質した。パウエル議長は、判断の難しさを認めた上で、労働の需給双方が下押しされる状況にある点を確認した。また、家計サーベイで雇用機会に関する評価が低下した点に言及した一方、経済活動の力強さによる労働需要の下支えにも期待を示した。
別の複数の記者は、経済活動と労働市場とのモメンタムの乖離をAIに関連付けて質問した。パウエル議長は、AIは雇用に対して硬軟双方向に作用しうるとの見方を示した。その上で、長い目でみれば生産性の向上を通じて実質賃金を押し上げ、労働市場に良い影響をもたらすが、足元では企業経営者がAI導入をlay offの理由にしている面もあるとして、総合的な評価の重要性を示唆した。
この間、消費に関してパウエル議長は、高所得層では資産効果がプラスに働いている一方、低所得層では価格感応度の上昇や消費性向の慎重さが見られる点で、二極化が続いていることを認めた。
労働市場については、関連指標が安定の兆しを示していると評価し、例として、失業率に加えて、lay off、雇用、名目賃金を挙げた。また、この間の雇用増の減速は移民の減少と労働参加の低下による面が大きいが、労働需要も軟化しているとの見方を示した。
質疑応答では、複数の記者が関連指標の不十分さの下での労働市場の判断の妥当性を質した。パウエル議長は、判断の難しさを認めた上で、労働の需給双方が下押しされる状況にある点を確認した。また、家計サーベイで雇用機会に関する評価が低下した点に言及した一方、経済活動の力強さによる労働需要の下支えにも期待を示した。
別の複数の記者は、経済活動と労働市場とのモメンタムの乖離をAIに関連付けて質問した。パウエル議長は、AIは雇用に対して硬軟双方向に作用しうるとの見方を示した。その上で、長い目でみれば生産性の向上を通じて実質賃金を押し上げ、労働市場に良い影響をもたらすが、足元では企業経営者がAI導入をlay offの理由にしている面もあるとして、総合的な評価の重要性を示唆した。
この間、消費に関してパウエル議長は、高所得層では資産効果がプラスに働いている一方、低所得層では価格感応度の上昇や消費性向の慎重さが見られる点で、二極化が続いていることを認めた。
物価情勢の評価
パウエル議長は、インフレ率が2022年央以降に顕著に減速したが、 2%目標よりやや高いとの評価を維持した。また、インフレの高止まりの主因は関税引上げによる財価格の上昇であり、サービス価格の減速は継続していると評価した。この間、短期のインフレ期待は昨年のピークから下落している一方、長期のインフレ期待は2%目標と整合的とした。
質疑応答では、複数の記者が関税引上げによる影響を質した。パウエル議長は、関税引上げの影響を除くと、インフレ率は2%目標の近傍にあるとの見方を示した。その上で、影響の大半は既に顕在化しており、関税政策に大きな変化がなければ、本年前半からは寄与が徐々に減衰するとして、影響が一過性に止まるとの見方を確認した。
また、関税引上げの影響が当初の懸念より小さかった点については、①実際の関税率が抑制的になったこと、②主要な相手国が報復関税を発動しなかったこと、③米国企業がコスト上昇の一部を吸収し、価格転嫁を抑制したことを要因として指摘した。
なお、一部の記者はドル安の進行に懸念を示したが、パウエル議長は為替相場には動きの理由を含めてコメントしないとの立場を維持したほか、財務省が適切に対応すると説明した。このほか、BISが海外でドルの下落リスクをヘッジする動きが強まっていると指摘している点についても、明確な証拠はないとして否定的な理解を示した。
質疑応答では、複数の記者が関税引上げによる影響を質した。パウエル議長は、関税引上げの影響を除くと、インフレ率は2%目標の近傍にあるとの見方を示した。その上で、影響の大半は既に顕在化しており、関税政策に大きな変化がなければ、本年前半からは寄与が徐々に減衰するとして、影響が一過性に止まるとの見方を確認した。
また、関税引上げの影響が当初の懸念より小さかった点については、①実際の関税率が抑制的になったこと、②主要な相手国が報復関税を発動しなかったこと、③米国企業がコスト上昇の一部を吸収し、価格転嫁を抑制したことを要因として指摘した。
なお、一部の記者はドル安の進行に懸念を示したが、パウエル議長は為替相場には動きの理由を含めてコメントしないとの立場を維持したほか、財務省が適切に対応すると説明した。このほか、BISが海外でドルの下落リスクをヘッジする動きが強まっていると指摘している点についても、明確な証拠はないとして否定的な理解を示した。
政策金利の運営
今回(1月)のFOMCは政策金利(FFレートの誘導目標)を3.5~3.75%に維持することを決定した。ただし、ミラン理事とウォラー理事はともに25bpの利下げを主張して反対票を投じた。
パウエル議長は、9月以降の75bp利下げによって、政策金利が中立金利の推計レンジの妥当な範 囲(range of plausible estimates)に入ったとの見方と、今後の政策金利の調整の程度と時期(extent and timing)を見極める上で良い位置(well positioned)にあるとの見方の双方を、前回(12月)のFOMCに続いて再確認した。
質疑応答では、この間のトランプ政権との様々な対立を映じて、多くの記者がFRBの独立性を取り上げ、パウエル議長自身に対する訴追やクック理事の訴追に関するパウエル議長の最高裁への出席、パウエル氏の議長退任後の対応などが焦点となった。しかし、パウエル議長は、本日は経済や物価と金融政策を議論する場であるとして、これらの質問の殆どに対してコメントを拒否した。
ただし、クック理事の件では、FRBの歴史において最も重要な法的案件であるとの理解を示し、(ベッセント財務長官等による批判に対しても)法的に出席しない理由を説明する方が難しいと主張した。また、次期議長へのアドバイスを問われたのに対し、パウエル議長は、①政治と距離を置くべき、②議会への説明責任を果たすべき、③FRBのスタッフを信頼すべきと指摘した。
政策運営に関しては今後の利下げが焦点となり、多くの記者が経済活動の強さを踏まえて利下げの先送りの如何を質した。
パウエル議長は、前回(12月)のdot chartではFOMCメンバーの多数が更なる利下げを予想している点を確認した。その一方で、経済活動は年初から良いスタートを切ったと評価したほか、インフレの上方リスクと雇用の下方リスクは双方ともに残存しているが、そのバランスは好転したとの見方を示した。その上で、今後の政策金利の調整は、今後のデータ、見通しの推移、リスクのバランスに基づいて判断するとの基本方針を確認した。
別の複数の記者は、拡張的な財政政策が想定される下での利下げの必要性を質した。パウエル議長は、財政政策や金融環境も経済活動の拡大に寄与しているが、消費の底堅さや設備投資の強さといった自律的な要素が大きく寄与しているとの見方を示した。一方で、米国の財政に足元で問題がある訳ではないが、長期的なパス(持続可能性)には問題があるとして、健全性の重要性を示唆したほか、一般論として長期金利は財政を含むリスク要因に影響されると指摘した。
このほか、パウエル議長が中立金利に言及したことを踏まえて、利下げの最終到達点に関する質問もあった。パウエル議長は、 FOMCメンバーの見方や市場サーベイによれば、現在の政策金利が中立金利の推計の上限付近にあることを確認しつつ、これをやや引締め的とみるか緩和的でない(中立的である)とみるかはFOMC内でも意見が分かれると説明した。
パウエル議長は、9月以降の75bp利下げによって、政策金利が中立金利の推計レンジの妥当な範 囲(range of plausible estimates)に入ったとの見方と、今後の政策金利の調整の程度と時期(extent and timing)を見極める上で良い位置(well positioned)にあるとの見方の双方を、前回(12月)のFOMCに続いて再確認した。
質疑応答では、この間のトランプ政権との様々な対立を映じて、多くの記者がFRBの独立性を取り上げ、パウエル議長自身に対する訴追やクック理事の訴追に関するパウエル議長の最高裁への出席、パウエル氏の議長退任後の対応などが焦点となった。しかし、パウエル議長は、本日は経済や物価と金融政策を議論する場であるとして、これらの質問の殆どに対してコメントを拒否した。
ただし、クック理事の件では、FRBの歴史において最も重要な法的案件であるとの理解を示し、(ベッセント財務長官等による批判に対しても)法的に出席しない理由を説明する方が難しいと主張した。また、次期議長へのアドバイスを問われたのに対し、パウエル議長は、①政治と距離を置くべき、②議会への説明責任を果たすべき、③FRBのスタッフを信頼すべきと指摘した。
政策運営に関しては今後の利下げが焦点となり、多くの記者が経済活動の強さを踏まえて利下げの先送りの如何を質した。
パウエル議長は、前回(12月)のdot chartではFOMCメンバーの多数が更なる利下げを予想している点を確認した。その一方で、経済活動は年初から良いスタートを切ったと評価したほか、インフレの上方リスクと雇用の下方リスクは双方ともに残存しているが、そのバランスは好転したとの見方を示した。その上で、今後の政策金利の調整は、今後のデータ、見通しの推移、リスクのバランスに基づいて判断するとの基本方針を確認した。
別の複数の記者は、拡張的な財政政策が想定される下での利下げの必要性を質した。パウエル議長は、財政政策や金融環境も経済活動の拡大に寄与しているが、消費の底堅さや設備投資の強さといった自律的な要素が大きく寄与しているとの見方を示した。一方で、米国の財政に足元で問題がある訳ではないが、長期的なパス(持続可能性)には問題があるとして、健全性の重要性を示唆したほか、一般論として長期金利は財政を含むリスク要因に影響されると指摘した。
このほか、パウエル議長が中立金利に言及したことを踏まえて、利下げの最終到達点に関する質問もあった。パウエル議長は、 FOMCメンバーの見方や市場サーベイによれば、現在の政策金利が中立金利の推計の上限付近にあることを確認しつつ、これをやや引締め的とみるか緩和的でない(中立的である)とみるかはFOMC内でも意見が分かれると説明した。
プロフィール
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井上 哲也のポートレート 井上 哲也
金融イノベーション研究部
内外金融市場の調査やこれに関わる政策の企画、邦銀国際部門のモニタリングなどを中心とする20年超に亘る中央銀行での執務経験と、国内外の当局や金融機関、研究機関、金融メディアに構築した人脈を活かして、中央銀行の政策対応(”central banking”)に関する議論に貢献。そのための場として「金融市場パネル」を運営し、議論の成果を内外の有識者と幅広く共有するほか、各種のメディアを通じた情報と意見の発信を行っている。2012年には、姉妹パネルとして「バンキングパネル」と「日中金融円卓会合」も立ち上げ、日本の経験を踏まえた商業銀行機能のあり方や中国への教訓といった領域へとカバレッジを広げている。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。