はじめに
政策金利の据え置きを決定したECBの2月理事会では、インフレ目標の達成と経済活動の底堅さを確認した一方、中国からの輸入圧力やユーロ高など、海外要因の影響が焦点となった。
海外要因の評価
理事会メンバーは、足元でのユーロ/米ドルの上昇は投資家のリスク回避を反映し、物価見通しへの影響は少ないと評価した。もっとも、中期的にユーロの増価は顕著であり、経済や物価への影響が今後数年に顕在化するとした。また、ドイツの財政政策の転換や米国の相互関税がユーロ高を加速させたとして、ユーロが「安全通貨」や「国際通貨」の地位を高めているとの見方を示した。
また、ガス価格が寒冷な気候を反映して上昇した点を確認し、春季に向けて需要は減少するが、ドイツの備蓄は能力対比3割に過ぎず、欧州のLNG輸入が米国とカタールに依存する点も確認した。
さらに、中国からの先進技術や製品による輸入圧力を「Second China Shock」と称し、中国が域内に輸送網を構築したことで影響は大きいと評価した。また、安価な財の輸入はユーロ圏の実質購買力を高めるが、①域内産業に打撃をもたらす、②ユーロ圏を「流動性のわな」に押し戻す、③第三国での競争力を低下させるといった可能性を指摘した。
また、ガス価格が寒冷な気候を反映して上昇した点を確認し、春季に向けて需要は減少するが、ドイツの備蓄は能力対比3割に過ぎず、欧州のLNG輸入が米国とカタールに依存する点も確認した。
さらに、中国からの先進技術や製品による輸入圧力を「Second China Shock」と称し、中国が域内に輸送網を構築したことで影響は大きいと評価した。また、安価な財の輸入はユーロ圏の実質購買力を高めるが、①域内産業に打撃をもたらす、②ユーロ圏を「流動性のわな」に押し戻す、③第三国での競争力を低下させるといった可能性を指摘した。
経済活動の評価
理事会メンバーは、経済活動がITを中心とするサービス業の好調に加え、製造業の底堅さに支えられている点を確認した。足元の指標はモメンタムの強まりを示唆しており、経済は"Goldilocks"の状態にあるとした。
内需のうち消費は、所得の増加と貯蓄率の低下による増加が見込まれるが実現せず、後者について、将来の不確実性や税負担増加の見通し、一部国での企業倒産の増加、物価と金利の上昇による実質資産の減少といった要因を指摘した。
設備投資は、無形資産やデジタル関連を中心に力強いが、データセンターの建設は米国より弱く、エネルギー制約を示唆する見方があった。また、住宅建設も総じてモメンタムを強めているが、住宅価格の動向の違いを映じて域内で区々であるとした。
労働市場では、失業率は低位だが労働需要が一段と軟化したとし、企業による労働保蔵が徐々に解消するとの見方を示した。また、足元の失業率がNAIRUを下回っているため、賃金上昇圧力が続くとの見方や、域内国の政治環境を考慮すると高水準の移民の継続は困難との見方を示した。
先行きについては、設備投資の上振れやドイツでの財政拡大の効果、アジアや南米との通商協定の効果、企業や家計のマインドの好転等を理由に上方リスクを指摘した。これに対し、サーベイによる先行き見通しが慎重化している点や通商摩擦の残存、ユーロ圏企業の競争力低下等を理由に下方リスクも指摘した。
内需のうち消費は、所得の増加と貯蓄率の低下による増加が見込まれるが実現せず、後者について、将来の不確実性や税負担増加の見通し、一部国での企業倒産の増加、物価と金利の上昇による実質資産の減少といった要因を指摘した。
設備投資は、無形資産やデジタル関連を中心に力強いが、データセンターの建設は米国より弱く、エネルギー制約を示唆する見方があった。また、住宅建設も総じてモメンタムを強めているが、住宅価格の動向の違いを映じて域内で区々であるとした。
労働市場では、失業率は低位だが労働需要が一段と軟化したとし、企業による労働保蔵が徐々に解消するとの見方を示した。また、足元の失業率がNAIRUを下回っているため、賃金上昇圧力が続くとの見方や、域内国の政治環境を考慮すると高水準の移民の継続は困難との見方を示した。
先行きについては、設備投資の上振れやドイツでの財政拡大の効果、アジアや南米との通商協定の効果、企業や家計のマインドの好転等を理由に上方リスクを指摘した。これに対し、サーベイによる先行き見通しが慎重化している点や通商摩擦の残存、ユーロ圏企業の競争力低下等を理由に下方リスクも指摘した。
物価情勢の評価
理事会メンバーはインフレ率が2%近傍にある点を歓迎した。また、年初のサービス価格改定が抑制的であった点やエネルギー価格の下落のため1月のインフレ率が下振れした点を確認しつつ、過度に重視すべきでないと評価した。
中国からの輸入によるHICPへの現時点での影響については見方が分かれたほか、ユーロ高の影響と識別すべきとの見方や、特定産業への影響がマクロ的に拡大するとの見方を示した。
さらに、輸入圧力は中国の内需の弱さの反映であり、持続的になりうるとの懸念も示した。
理事会メンバーは、サービス価格と賃金上昇の減速が整合的と評価したほか、ECBの指標が賃金上昇の更なる減速を示唆している点を確認した。もっとも実際の賃金上昇は、契約賃金以外の部分で上昇し、娯楽等の価格上昇に繋がっているとした。
中長期のインフレ期待は、ほとんどの指標が2%近傍で安定している点を確認したが、市場ベースではインフレ率が2%を下回る期間がより長いとの見方が示唆される一方、家計の短期インフレ期待は顕著に上昇した点も確認した。
今後については、平時より不透明な局面が続くとし、関税や過剰生産能力国による外需の減少、ユーロ高、金融市場でのリスク回避等の下方要因と、エネルギー価格の持続的上昇、供給制約、賃金減速の遅延、防衛やインフラ投資等の情報要因を確認した。
中国からの輸入によるHICPへの現時点での影響については見方が分かれたほか、ユーロ高の影響と識別すべきとの見方や、特定産業への影響がマクロ的に拡大するとの見方を示した。
さらに、輸入圧力は中国の内需の弱さの反映であり、持続的になりうるとの懸念も示した。
理事会メンバーは、サービス価格と賃金上昇の減速が整合的と評価したほか、ECBの指標が賃金上昇の更なる減速を示唆している点を確認した。もっとも実際の賃金上昇は、契約賃金以外の部分で上昇し、娯楽等の価格上昇に繋がっているとした。
中長期のインフレ期待は、ほとんどの指標が2%近傍で安定している点を確認したが、市場ベースではインフレ率が2%を下回る期間がより長いとの見方が示唆される一方、家計の短期インフレ期待は顕著に上昇した点も確認した。
今後については、平時より不透明な局面が続くとし、関税や過剰生産能力国による外需の減少、ユーロ高、金融市場でのリスク回避等の下方要因と、エネルギー価格の持続的上昇、供給制約、賃金減速の遅延、防衛やインフラ投資等の情報要因を確認した。
金融政策の運営
理事会メンバーは、政策反応関数の3つの要素を順次検討した。まず、インフレ見通しに関しては、インフレ率が2%近傍にある点を歓迎したほか、12月見通しを変化させるほどのリスクは顕在化していないと評価した。また、インフレ率が当面は2%を下回る点も過大評価すべきでないとした。
ほとんど(most)のメンバーは、リスクが上下双方にあり、その分布も12月と変わらないとした。しかし、数名(some)は下方リスクが大きいとし、1月のインフレ率の下振れや中国の影響の持続性、米国向け輸出(除く薬品)の減少、ユーロ高、設備投資による生産性上昇を理由として挙げた。
これに対し、数名(a few)は上方リスクが大きいとし、経済活動のモメンタム上昇、労働需給のタイトさ、エネルギー価格の持続的上昇、地政学リスク、供給制約、中国からの輸入価格の下落圧力の減少(人民元高と国内要因による)、帰属家賃の上昇を理由として挙げた。
基調的インフレに関しては、関連指標が2%目標と整合的である点に合意した。もっとも、1月のインフレ率の下振れを踏まえ、賃金上昇の減速によるサービス価格の抑制を見込む意見と、賃金上昇の高止まりを示唆する意見の双方が示された。
最後に、政策効果の波及は既往の利下げ効果が経済を下支えしていると評価したが、そうした効果は概ね出尽くし、銀行が与信に慎重化するなど逆の動きがみられる点も指摘した。
これらを踏まえ、理事会メンバーの全員が政策金利の据え置きに同意し、不透明性の下での現状維持はリスクの顕在化を見極める上で合理的とした。また、ECBはpatientだが、政策変更に関して躊躇するとか一方向に動くことを意味しないとした。
今後については、リスクの状況を慎重に見極める方針を確認したが、当面の間は現状維持が適切との意見と、インフレの下振れリスクを強調し利下げの可能性を示唆する意見が示された。
ほとんど(most)のメンバーは、リスクが上下双方にあり、その分布も12月と変わらないとした。しかし、数名(some)は下方リスクが大きいとし、1月のインフレ率の下振れや中国の影響の持続性、米国向け輸出(除く薬品)の減少、ユーロ高、設備投資による生産性上昇を理由として挙げた。
これに対し、数名(a few)は上方リスクが大きいとし、経済活動のモメンタム上昇、労働需給のタイトさ、エネルギー価格の持続的上昇、地政学リスク、供給制約、中国からの輸入価格の下落圧力の減少(人民元高と国内要因による)、帰属家賃の上昇を理由として挙げた。
基調的インフレに関しては、関連指標が2%目標と整合的である点に合意した。もっとも、1月のインフレ率の下振れを踏まえ、賃金上昇の減速によるサービス価格の抑制を見込む意見と、賃金上昇の高止まりを示唆する意見の双方が示された。
最後に、政策効果の波及は既往の利下げ効果が経済を下支えしていると評価したが、そうした効果は概ね出尽くし、銀行が与信に慎重化するなど逆の動きがみられる点も指摘した。
これらを踏まえ、理事会メンバーの全員が政策金利の据え置きに同意し、不透明性の下での現状維持はリスクの顕在化を見極める上で合理的とした。また、ECBはpatientだが、政策変更に関して躊躇するとか一方向に動くことを意味しないとした。
今後については、リスクの状況を慎重に見極める方針を確認したが、当面の間は現状維持が適切との意見と、インフレの下振れリスクを強調し利下げの可能性を示唆する意見が示された。
プロフィール
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井上 哲也のポートレート 井上 哲也
金融イノベーション研究部
内外金融市場の調査やこれに関わる政策の企画、邦銀国際部門のモニタリングなどを中心とする20年超に亘る中央銀行での執務経験と、国内外の当局や金融機関、研究機関、金融メディアに構築した人脈を活かして、中央銀行の政策対応(”central banking”)に関する議論に貢献。そのための場として「金融市場パネル」を運営し、議論の成果を内外の有識者と幅広く共有するほか、各種のメディアを通じた情報と意見の発信を行っている。2012年には、姉妹パネルとして「バンキングパネル」と「日中金融円卓会合」も立ち上げ、日本の経験を踏まえた商業銀行機能のあり方や中国への教訓といった領域へとカバレッジを広げている。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。