はじめに
ECBは今回(3月)の理事会でも政策金利(預金ファシリティー金利)を2%に維持することを全会一致で決定した。ラガルド総裁は、中東情勢が経済に下押し、物価に上向きの影響を持つことを確認した上で、物価に関する中期的な二次的効果に警戒を示した。
経済情勢の評価
ラガルド総裁は、実質購買力の増加や低位な失業率が消費を支えているほか、建設や住宅に加えて設備投資がさらに強まったと評価した。また、純輸出によるマイナス寄与の消滅を歓迎し、今後も消費と設備投資が経済を牽引するとした。その上で、中東情勢が商品市場の混乱や実質所得とマインドの下押しを通じて、経済にマイナスの影響も持つことも確認した。
今回改訂された執行部見通しは、分析のcut-offを3/11日まで急遽延期した上で、石油とガスの価格上昇の持続性について、①見通し期間を通じて元に戻る(adverse)、②見通し期間を通じて高止まる(severe)の二つのシナリオ分析を行っている。
このうちベースラインの実質GDP成長率見通しは、2026から28年にかけて0.9%→1.3%→1.4%と、前回(12月)に比べて2026~27年が各々0.4pp、0.1ppの下方修正となった。ラガルド総裁は2026年の下方修正が現時点で予想される世界経済への下押しを反映したものと説明した。
これに対し、adverseシナリオでは0.6%→1.2%→1.6%、severeシナリオでは0.4%→0.9%→1.9%と2026~27年の下押し幅が拡大し、潜在成長率を明確に下回るものとなっている。Lagarde総裁は、特に短期的な下方リスクを指摘し、中東情勢による実質購買力やマインドの悪化、国際金融市場の不安定化、サプライチェーンの混乱などが、既往の地政学的要因等に加わると指摘した。
今回改訂された執行部見通しは、分析のcut-offを3/11日まで急遽延期した上で、石油とガスの価格上昇の持続性について、①見通し期間を通じて元に戻る(adverse)、②見通し期間を通じて高止まる(severe)の二つのシナリオ分析を行っている。
このうちベースラインの実質GDP成長率見通しは、2026から28年にかけて0.9%→1.3%→1.4%と、前回(12月)に比べて2026~27年が各々0.4pp、0.1ppの下方修正となった。ラガルド総裁は2026年の下方修正が現時点で予想される世界経済への下押しを反映したものと説明した。
これに対し、adverseシナリオでは0.6%→1.2%→1.6%、severeシナリオでは0.4%→0.9%→1.9%と2026~27年の下押し幅が拡大し、潜在成長率を明確に下回るものとなっている。Lagarde総裁は、特に短期的な下方リスクを指摘し、中東情勢による実質購買力やマインドの悪化、国際金融市場の不安定化、サプライチェーンの混乱などが、既往の地政学的要因等に加わると指摘した。
物価情勢の評価
ラガルド総裁は、2月のHICP総合インフレ率が1.9%へやや加速したほか、同コアも2.4%とやや加速し、サービス価格の上昇率が3.4%、財価格の上昇率も0.7%とともに強含んだ点を確認した。この間、インフレ基調の指標は2%目標に引続き整合的である点も確認した。また、一人当たり報酬の伸び率が第4四半期に3.7%へ減速したほか、契約賃金やECBのサーベイ等が2026年中の賃金上昇の減速を示唆しているとの見方も維持した。
その上で、足元でのエネルギー価格の上昇は、短期的にインフレ率を2%以上に維持するほか、間接的効果ないし二次的効果を通じて中期的にも幅広い物価上昇に繋がりうるとの懸念を示した。
今回改訂された執行部見通しのうち、ベースラインのHICP総合インフレ率見通しは、2026から28年にかけて2.6%→2.0%→2.1%と、前回(12月)に比べて各々0.7pp、0.2pp、0.1ppの大幅な上方修正となり、インフレ率の一時的下振れという既往のシナリオは消滅した。
これに対し、adverseシナリオでは3.5%→2.1%→1.6%、severeシナリオでは4.4%→4.8%→2.8%と一段と大幅な上振れを示唆している。ちなみにコアHICPインフレ率も、adverseシナリオでは2.4%→2.7%→2.1%、severeシナリオでは2.8%→3.9%→2.9%と大幅な上振れを示唆していほか、二次的効果等によって2027年以降に持続的な影響が生じることを示唆している。
ラガルド総裁は、特に短期的な上方リスクを指摘し、大幅かつ持続的なエネルギー価格の上昇が、インフレ期待の上昇等を通じて波及効果を強めたり、サプライチェーンの混乱を招く可能性を要因として指摘した。
質疑応答では、コロナ禍後の2022年とのインフレ環境の違いが取り上げられた。ラガルド総裁は、既にインフレ率が6%に達し、労働需給もひっ迫していたほか、コロナ期のpent-up需要も旺盛であった点で、現在よりも厳しかったとの見方を示した。ただし、インフレ期待は最近の経験に左右されるため、高インフレの記憶が新しい今回の方が上方リスクがあるとの見方も示唆した。
その上で、足元でのエネルギー価格の上昇は、短期的にインフレ率を2%以上に維持するほか、間接的効果ないし二次的効果を通じて中期的にも幅広い物価上昇に繋がりうるとの懸念を示した。
今回改訂された執行部見通しのうち、ベースラインのHICP総合インフレ率見通しは、2026から28年にかけて2.6%→2.0%→2.1%と、前回(12月)に比べて各々0.7pp、0.2pp、0.1ppの大幅な上方修正となり、インフレ率の一時的下振れという既往のシナリオは消滅した。
これに対し、adverseシナリオでは3.5%→2.1%→1.6%、severeシナリオでは4.4%→4.8%→2.8%と一段と大幅な上振れを示唆している。ちなみにコアHICPインフレ率も、adverseシナリオでは2.4%→2.7%→2.1%、severeシナリオでは2.8%→3.9%→2.9%と大幅な上振れを示唆していほか、二次的効果等によって2027年以降に持続的な影響が生じることを示唆している。
ラガルド総裁は、特に短期的な上方リスクを指摘し、大幅かつ持続的なエネルギー価格の上昇が、インフレ期待の上昇等を通じて波及効果を強めたり、サプライチェーンの混乱を招く可能性を要因として指摘した。
質疑応答では、コロナ禍後の2022年とのインフレ環境の違いが取り上げられた。ラガルド総裁は、既にインフレ率が6%に達し、労働需給もひっ迫していたほか、コロナ期のpent-up需要も旺盛であった点で、現在よりも厳しかったとの見方を示した。ただし、インフレ期待は最近の経験に左右されるため、高インフレの記憶が新しい今回の方が上方リスクがあるとの見方も示唆した。
金融政策の運営
ラガルド総裁は、政策金利の現状維持を決定したと説明した上で、中東情勢によって見通しは顕著に不透明になり、経済に下押し、物価に上向きの影響を持つ点を確認した。また、中期的な動向は、武力衝突の程度や持続性とエネルギー価格の物価や経済への影響に依存するとした。
その上で、インフレ率が目標近傍にあり、インフレ期待も安定している点で、ECBは不透明性を乗り切る上で良い位置にある(well positioned)と説明した。
質疑応答では、複数の記者がリスク評価に関する理事会メンバーの議論を質した。ラガルド総裁は、理事会メンバーが軍事専門家を含むブリーフィングを受けるなど、幅広い情報を収集した点を説明したほか、シナリオ分析を基に詳細な議論を行ったが、意見の相違はなかったと説明した。
その上で、注目する要素として商品価格、供給制約、PMIや消費者マインド、賃金上昇などを挙げ、これらの動向は今回のショックの持続性、強さ、波及効果(特に二次的効果)に依存するとした。
別の複数の記者は今後の政策変更の契機を取り上げた。ラガルド総裁は、今後も3つの要素(インフレ見通しとそのリスク、基調的インフレの動向、政策効果の波及)に照らして、会合ごとにデータに即して判断する方針を維持すると説明した。
また、ECBは状況を見極めるのにpatientであるともコメントし、金融政策はもはや「good place」ではないが、今後の対応において良い位置にあるとの見方を強調した。この点に関してラガルド総裁は、「3つの2(three times two)」という表現を使って、①インフレ率が2%目標の近傍にある、②中期のインフレ期待も2%近傍にある、③政策金利も2%であることを確認した。
なお、別な記者はプライベート・クレジットの不安定化に懸念を示した。これに対して、金融安定担当のデドンギス副総裁は、直近のFSRでも焦点を当てるなど状況を注視しているが、米国に比べて欧州内では市場規模が小さいとして、システミックな問題ではないとの理解を示唆した。ただし、問題は不透明性、レバレッジ、保有資産の流動性の低さにあり、銀行与信を通じたリスクの波及に注視すべきと付言した。
その上で、インフレ率が目標近傍にあり、インフレ期待も安定している点で、ECBは不透明性を乗り切る上で良い位置にある(well positioned)と説明した。
質疑応答では、複数の記者がリスク評価に関する理事会メンバーの議論を質した。ラガルド総裁は、理事会メンバーが軍事専門家を含むブリーフィングを受けるなど、幅広い情報を収集した点を説明したほか、シナリオ分析を基に詳細な議論を行ったが、意見の相違はなかったと説明した。
その上で、注目する要素として商品価格、供給制約、PMIや消費者マインド、賃金上昇などを挙げ、これらの動向は今回のショックの持続性、強さ、波及効果(特に二次的効果)に依存するとした。
別の複数の記者は今後の政策変更の契機を取り上げた。ラガルド総裁は、今後も3つの要素(インフレ見通しとそのリスク、基調的インフレの動向、政策効果の波及)に照らして、会合ごとにデータに即して判断する方針を維持すると説明した。
また、ECBは状況を見極めるのにpatientであるともコメントし、金融政策はもはや「good place」ではないが、今後の対応において良い位置にあるとの見方を強調した。この点に関してラガルド総裁は、「3つの2(three times two)」という表現を使って、①インフレ率が2%目標の近傍にある、②中期のインフレ期待も2%近傍にある、③政策金利も2%であることを確認した。
なお、別な記者はプライベート・クレジットの不安定化に懸念を示した。これに対して、金融安定担当のデドンギス副総裁は、直近のFSRでも焦点を当てるなど状況を注視しているが、米国に比べて欧州内では市場規模が小さいとして、システミックな問題ではないとの理解を示唆した。ただし、問題は不透明性、レバレッジ、保有資産の流動性の低さにあり、銀行与信を通じたリスクの波及に注視すべきと付言した。
プロフィール
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井上 哲也のポートレート 井上 哲也
金融イノベーション研究部
内外金融市場の調査やこれに関わる政策の企画、邦銀国際部門のモニタリングなどを中心とする20年超に亘る中央銀行での執務経験と、国内外の当局や金融機関、研究機関、金融メディアに構築した人脈を活かして、中央銀行の政策対応(”central banking”)に関する議論に貢献。そのための場として「金融市場パネル」を運営し、議論の成果を内外の有識者と幅広く共有するほか、各種のメディアを通じた情報と意見の発信を行っている。2012年には、姉妹パネルとして「バンキングパネル」と「日中金融円卓会合」も立ち上げ、日本の経験を踏まえた商業銀行機能のあり方や中国への教訓といった領域へとカバレッジを広げている。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。