キャッシュレス化に対応するATMの共有化
三菱UFJ銀行と三井住友銀行が、来年前半にもATM(現金自動預払機)を相互に開放する見通しだ(日本経済新聞、11月9日付)。両行の利用者は、どちらのATMでも平日の日中に現金を引き出す時の手数料が無料となる。当初は銀行店舗以外にある2,300台のATMを対象とするが、将来的には両行で1万4千台強あるATMすべてが対象となる見通しだ。
今年6月から1年ほどかけて口座管理などを担う勘定系システムを次期システムに移行するみずほFGは、当初はこれに加わらないが、作業終了後はATMの共通化プロジェクトに参加すると見られている。
メガバンク3行のATM設置台数は、三菱UFJ銀行が約8,300台、三井住友銀行が約6,000台、みずほ銀行が約5,600台、合計で約2万台にも上る。この先キャッシュレス化が進んでいけば、ATMの利用は減っていくが、そのなかで各行が自前のATMを維持していくことは、大きな負担となってしまう。ATMの運営コストは、警備員や現金の輸送費などで、1台当たり月額数10万円とされる。
今までの自前主義を捨てて、相手行のATMを自行のATMのように顧客が無料で使えるようにする一方、ATMの設置台数を減らしていけば、顧客の利便性を損なわずにコストを削減することが可能となる。
ATMの共通化も視野に
一方で、ATMの運営費用をまかなうために、無料サービスをやめ、新たに顧客に手数料の支払いを求める銀行も出てきている。新生銀行はこれまで無料だったATM手数料の一部を今年10月から有料化した。またあおぞら銀行も今年8月から独自のATMを順次廃止して、ゆうちょ銀行のATMに置き換えている。
三菱UFJ銀行と三井住友銀行は、ATMを他行の顧客に無料開放することにとどまらず、将来的にはATM自体を共通化することも視野に入れている。これが実現すれば、ATMの開発や維持にかかるコストをさらに大幅に圧縮できる。
ただしこれには、未だ障害もある。メガ3行で異なる通帳の仕様をどのように共通化させるか、またメガ3行のATMの調達先メーカーはそれぞれ異なっているため、これをどのように調整していくかは大きな課題として残されている。
このような課題を抱えつつも、マイナス金利下での収益悪化やキャッシュレス化など、経営を取り巻く大きな環境変化を踏まえて、ATMの無料や自前主義から脱却しようとする動きは、銀行業界での大きな潮流になりつつある。
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