7月の失業率は予想よりも小幅な上昇に
9月1日に総務省が発表した7月労働力調査で、失業率(季節調整値)は2.9%と前月の2.8%を上回った。ただし、事前予想の平均値である3.0%は下回っている。
労働力調査にみる雇用情勢は、ひと頃と比べてやや落ち着いてきた感もある。4月に前月比-107万人(季節調整値)と大幅に減少した就業者数は、その後は下げ止まっている。4月に一気に前年同月比で420万人増加した休業者数は、7月には急増前の2月の水準近傍まで戻った。
政策面での支援の奏功もあり、コロナショックが労働市場にもたらす第1波の影響は、やや薄れてきた感もある。しかし、労働市場は第2波、第3派に見舞われ、今後、長きにわたる本格調整期に入っていくことになろう。
職探しの増加で失業率上昇へ
7月の就業者数の動きを見ると、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託といった非正規社員の就業者数は再び削減ペースが高まってきている。正規社員の雇用増加がそれを打ち消しているが、そうしたトレンドも長続きはしないだろう。
就業者数(季節調整値)は4月に-107万人(季節調整値)と大幅に減少した後、再び小幅に増加しているが、それは5月から7月までの3か月間の合計で、4月の減少分の2割程度にとどまっている。
4月に職を失った人の多くが、失業者に計上されない非労働力人口に分類されている。失職後、子どもの世話をするために再就職を断念した人、感染リスクを恐れてしばらくは職探しをせずに家に留まる人、などが多かったのではないか。
しかし、学校の再開や感染リスクの低下などを受けて、今後こうした人たちが職探しを始めると、その時点で彼らは失業者に計上され、失業率は上昇を続けることになるだろう。
また、政策効果が薄れることで、今後企業が雇用削減を本格化し、また倒産、廃業が増えていく中で、正規社員も含めた雇用調整圧力は強まっていくのではないか。
既に8都道府県で有効求人倍率は1倍割れ
他方、厚生労働省が同日に発表した7月一般職業紹介状況によると、7月の有効求人倍率は前月から0.03ポイント低下して1.08(季節調整値)となった。7か月連続の低下であり、労働需給の悪化が続いていることを裏付けている。
まもなく終焉を迎える安倍政権は、労働市場の改善を経済政策の成果としてアピールし、全都道府県で有効求人倍率が1倍を超えたことをしばしば強調していた。
しかし、5月には沖縄県の有効求人倍率(就業地別、季節調整値)が1を割り、6月には神奈川県、福岡県、青森県がこれに続き、7月には新たに東京都、高知県、静岡県、滋賀県、大阪府も加わって、8都道府県で有効求人倍率が1を割っている。
有効求人倍率は向こう数か月で1倍を割り、来年には安倍政権発足時の0.83に近付くのではないか。その過程で、全ての都道府県で有効求人倍率が1を割る可能性が高いと考えられる。
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